悪魔と彼女の事情
さて。この世界で連続殺人が起こるとテレビのニュース。
そして週刊誌。インターネット。動画配信者の独特な切り込みでのインフルエンス。
さんざ材料を下品に引っ搔き回す陰謀論。
生きてる人間にとって死んだ人間にしてやる事と言えば
「覚えておいてあげる事」しか出来ない。手を合わせて祈ったり拝んだり。
おっと。罵ったり「ザマぁみろ」って言うんじゃねえぞ?
それはお前が生きてる間に同じ目に遭う様に出来てるんだ。
言葉と行いは運命を変える。思うのは自由だけどね。
SNSで発信して永久にインターネットに残るのと
心に思い留めるぐらいの違いだ。かなり違うだろ?
しかし陰謀論のレベルまで行くと死者への冒涜になりかねない事がある。
ただ単に偶然の数字の一致はまぁ悪魔的には浅いから許す。
しかし時系列の出来事の頭文字をアナグラムとかで無理矢理並べ替えると・・・
そう。みんなが大好きな都市伝説が出てしまう。
死者をネタにした都市伝説を作ると
ちょっと天国に行けなくなっちゃうぞ。
人間どもよ、陰謀論には気を付けろ!
「監視者さんから、あの後、連絡来ませんね」
「それなりに縛りがあるんだろ?あっちは規定側の存在だ。神関連に干渉はしない。」
結局は事件現場の動画や画像を何度も見返す内に慣れちゃった結ちゃん。
否、捜査への情熱もあるのだろう。自分と同じく『黄泉還り』した人間が
惨たらしく殺されているのだ。根を詰めるのはわかるがもう60時間近く寝ていない。悪魔は寝なくても生贄のカニカマ食べてれば平気だが
人間は72時間起き続けてると脳がバグって幻覚を見始めると言うぜ。
彼女もまた情報を仕入れ続けてパンク寸前だ。
「俺がやっとくから、少しは休んだ方がいいよ。」
「でも、これは私たちにしかできない・・・」
もはや意識も朧気になってる。これはマズいって答え。
仕方ないのでデビルスキル「四(死)重ね」の応用で
時間間隔を狂わせる。一時的に現実と突き放すことで
結ちゃんを眠らせる事にする。
「あっ・・・あのこれは・・・」
立ち眩みを開始した結ちゃんの身体を支えながら
仰向けになる様に抱え込む。
「悪い夢だ。」
デビルウィスパーで暗示をかけてから
額に指を当てて彼女の交感神経のスイッチを切る。
ストレスや強迫観念に駆られた人間は
エンジンを止められない。眠れないのだ。
例えエンジンオイルが焦げ付いても
壊れるまで動き続ける。
現実の中で人は認知の歪みが発生する。その中でも強迫観念が一番厄介だ。
時に人を鍛える事もあるが、それは起承転結のある勇者の物語みたいなモノ。
成功者は裏で陰口を言われ、失敗した人間は成功者を憎み
若者全てを平凡と断じる現代社会において
体力に任せて燃え尽きるまで戦う様に生きると
それは精神まで破壊する呪いになっちまう。
なにせ魔王を倒して巨万の富を得て安泰に暮らせる未来などなく
産まれてから死ぬまで自分自身との闘いだから。
悪魔は涙を流せないが何が悲しいのかって概念だけは知っているんだぜ。
俺は事務所のソファーに彼女を寝かせて毛布を掛けてやる。
自分とも違う宿命を背負った彼女にはここで倒れて欲しくない。
シャツの襟元を緩めてやると首筋から汗が滲んでいる。
それだけ疲れていたのだろう。
俺は安心しながらも、これから起こる事件に備える事となる。
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