第六章:デビル事件簿:連続殺人事件

悪魔、殺人現場に遭遇

今日は監視者さんからのDeviLine《デビライン》依頼で事故物件の調査だぜ。

報酬はなんと300万円。心霊スポットで幽霊さんとのお話に

・・・しては値が高すぎるなとガタイで分析する。

これには何か背後に裏を感じると言うデビルの勘が働く。


人は物事に無理矢理紐づけして見えもしないモノを恐れる。

そういうのに限って結局徒労に終わるんだ。

パチモンの霊感商法をやってる連中ってのは

それに付け込んでかなり私腹を肥やしてるのだな。

そういうヤツは地獄でも低級扱いになるから

人間どもよ。絶対にそういう事はするな!



悪魔はこっちの都市伝説もかなり大好きだが

冗談と言われている系統の中にも真実があるんだぜ?


時間停止系アダルトビデオの2割はサタンの趣味で行われていて本物だ。

お前ら、時間停止には気を付けろ!サタン様のお通りだぜ!


とか言うデビル小噺を挟みつつ、そのテナントへ向かう。

監視者さんのスキルで思い込ませる術を仕込んでセッティングまでして貰って

所有者の不動産屋から見て俺達は住人の知り合いだと言う設定を刷り込まれている。

やっぱり、この仕事は普通じゃぁないっぽい。


潜入スキルを使うまでも無いんで、とりあえず、鍵を開けてもらう。

すると、実家よりも嗅いだ懐かしい匂い。血と肉の腐った匂いだぜ。


「あのー。ヤバいんで、警察の方、ちょっと呼んでもらっていいすか?」


俺はこういう事情には詳しい不動産屋を促し、外で連絡させる。


「事件ですね。悪魔さん。この匂いは、自殺にしては血を引きずった跡が・・・」


「300万でリアルの仏さん拝むだけってのは不自然だ。まだ何かある。」



部屋に踏み込んで下足痕ゲソコンを残すと警察に見つかって面倒だから

結ちゃんに支給しておいたデビルスマホで部屋の奥の惨劇を

壁や家具を透過する様に念写してもらう。俺達はこの場から立ち去る。


事務所に戻ってから撮った画像や動画の解析に映る。

「ホラー映画のそれみたいですね・・・」


「なんじゃこりゃ・・・」


壁に十字に磔にされ、おそらく生きたまま胸から腹にかけて切り裂かれた

非業の死を遂げたご遺体。聖書や十字架も置いてあるが

密入国で人間界に来た悪魔は見つけ次第狩られるんで

こんな目立つ、皮肉の効いた殺しでアピールなんぞやらん。

デビル流刑とか死刑で転生してこの世に受肉してる悪魔は監視者の対象とされており

俺でも把握しきれてないがある種の規約違反が見つかり次第、名指しで狙われる。

現職のサタン様が神側との争いを避けるべく奔走した結果

今では世界の均衡を守る秩序側の悪魔が多いのだ。


まだ確信は持てないが悪魔の仕業ではない。

凶悪な人間が起こしたのなら、なんでわざわざ監視者が

こんな高額の仕事を出してきたのか?


グロテスクなモノに慣れてる結ちゃんでもこれは応えたらしいな。

いつになく顔が青ざめているぜ。


俺はすぐに強力な半神デミゴッドの仕業だと認識する。

そうすればこの高額の依頼の辻褄が合うからだ。


すると、監視者から電話。


「この半神デミゴッドはゲーム感覚で連続殺人を行っています。

 被害者はいずれも『黄泉還り』の経験者の人間。

 受けますか?受けませんか?」


知ってるかな?神話にも書かれているが

神の方が悪魔よりもさんざ人を殺しまくっているんだ。

自分が正しいから、と言って正気じゃない正義を振るう。


生きてる人間と等しく恐ろしい存在の半神デミゴッド

時に有り余る能力をこの世の為と語り、こうやって殺人をするのだ。

どちらがデビってるか分かったモノでは無いな。




「結ちゃん。今回は危険だぜ。下手するとあんたも狙われる。」


「伊達に黄泉の国は見てません!やりましょう!」


ついに事件らしい事件が幕を上げる。

謎を解き、悪を以って悪を制する。

見た目は大人、頭脳は子供の俺だが

正気じゃない正義を相手に俺は戦いを挑むこととなる。

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