悪魔が捧げる愛の勝利

「あーっと!橋藤、チョコボーイに容赦ないエルボー!」


完全に面食らったぜ!逞しい前腕が叩きつけられると頭ごと揺らされてマジたまんねー。


一気に畳みかけるつもりだ。 素早いロープワークで移動して

ダッシュで飛び込みながらミドルキックを撃ちこんで来る。マジ痛ぇよ。



「オーっと!倒れない!チョコボーイ芥子河原、両手を上げ、微動だにしない!余裕なのか!?」


真正面から向き合って撃って来いよアピールをする俺。


「おー!これは橋藤を怒らせた!袈裟切りチョップ!叩きつけられる!」


「あー、うぉーっす・・・」あっという間に追い込まれる。


「これは効いた様だ!膝立ちになると、橋藤の破壊王ミドルキックの餌食に・・・」


俺は飛んできた左脚に絡みつき、膝十字固めの様にテコの原理で引き込んで

グルングルンとリングの上で寝技合戦。


「この男、チョコボーイの技は読み切れない!橋藤も最近膝にダメージが溜まってる!それを知ってか容赦ないチョコボーイの締め!

 かなり絡みついているがロープに届いた!ブレイクだ!」


「山田さーん!」


「オウよ!」俺はブレイクで離れた拍子にタッグパートナーの山田さんにタッチ。


するとあちらも交代。山田さんvs武丸啓司の唸るような攻防戦だ。


手四つの取り合いからリストの絡め合う攻防、そして流れる様にレスリングしてヘッドシザースからの

お互いキックアウト。スっと立ち上がる素早さに拍手が起こる。


しかし、熱いエルボーの攻防から張り手の撃ちあい、そこから取っ組み合いになると

巧妙な騙し合いのレスリングから関節技の連続、バックドロップと続き、大技の応酬になると見せかけて


山田さんが不意打ちの丸め込み技を仕掛けカウント2。消耗した武丸に変わって橋藤が入ってくる所を


俺はエプロンサイドから橋藤を引きずり下ろす。そして毒霧を浴びせる。


「出たぁー!これは!猛毒の!芥子毒霧モルヒネ・ミストだぁーっ!」


「ぐぁぁぁっ!」と言いながら怯む橋藤を背後から腕を絡めて

何度もコーナーの硬いところへ叩きつける。

(モノホンのモルヒネ・ミストは人体を腐らせるので今回は青汁を使いました。

 橋藤さん、ゴメンね。)

ここまででかなりの時間を稼いだが・・・


「あーっと!!リング上では、武丸の足4の字固めが決まっている!これは山田、削られている!」


「ギバーップ!?ギバーップ!?」のレフェリーの問いに山田さんはひたすらノーのサインを出して

どうにかロープエスケープ。俺が救援に行くためにリングに乱入。


しかし、この武丸と言う男もなかなかの関節技の使い手で、俺はいつの間にか

純粋に技術だけで腕を締め上げられたので・・・悪魔腕力で引きはがす。

あんまり悪魔パワー使うとプロレス的な意味ではアンフェアだけど

山田さんと加藤さんの為に負けるわけにはいかないのだ。


すると、山田さんがどうにか助けに来てくれて、

俺を立たせないレスリングの妙技を仕掛ける武丸に

ランニング掌打を叩きつけてダウンを奪う。


顔面の青汁が色濃く残る橋藤が上がって来て

蹴りを受けまくったが俺はもうキックの軌道をガタイで覚えたんで

またしつこく脚関節を仕掛ける為に泥臭くしがみつく。

悪魔の寝技は人間プレス機の様に重たくなるから、橋藤はみるみる内に

体力が削られて行ってるぜ!

俺は丸め込みのフェイントから腕十字固めだ!蹴られた分さんざキメてやるぜ!


暴れる様にロープエスケープを試みるが、悪魔の地力で削れるところまで削る事に。

そこから山田さんがダイビングエルボーで畳みかけ、俺がコーナーに立って

飛んでから身体を450度の角度で回転させるファイヤーバードスプラッシュで飛び込むと一気に形勢は逆転。

山田さんがカバーに入ってる間、俺は武丸の侵入をデビルウィスパーで制御し、カウント3。

なんとか勝ち星を得る事が出来た。


試合後のマイク。

「いや、俺馬鹿だからさ、彼女に真とタッグ組んだ時の話をしたら、変な風に勘違いさせちゃってさ。

心配かけちゃったけど、俺にはお前しかいないから!ちょっとリングへ上がって来てくれ!」


すると優子さんが入って来て・・・「ごめんね、仕事ばっかりですれ違ってて不安だったから・・・」


山田さんは黒い箱を取り出し、中にはダイヤの指輪。

「これからも苦労掛けるけど最強のパートナーはあなたしかいません。結婚して下さい」


「はい・・・!」


「あっ、そうだ。後は最高の相棒、チョコボーイ・・・お前のおかげで・・・」


「あれ?いない?」


「それが見当たらないんです・・・ 

 ただリングサイドに居る時にこっち来て『おめでとう』っ              て言っとけって・・・」


悪魔と結は既に会場から立ち去っていた。


「愛のキューピッドでしたよぉー?ヴェっさん!」


「それは天使の仕事だろ。そんなつもりは無いし、アフロ治らねえし・・・」


手付け金と言って貰った200万円は祝儀袋に包んで返しておいた。

事務所への帰路に付きながらも、人の温かさをなんとなく理解した悪魔であった。


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