第21話 騎士団へ
「うわ~~~」
思わずぽかんと口を開けて見上げてしまう。
王都の郊外に位置する軍総司令部は、雲に届くほど高く強固な壁と魔法結界に囲まれていた。すごい、王城より警備が厳重なくらいだ。敷地内の建物も無機質に角ばっていて飾り気が一切なく、真っ黒な煉瓦で均一に組み上げられれいる。この煉瓦の材質、なんだろう? 粘土を魔法処理してるのかな?
肩に羽の生えた白虎、手には巨大なトランクを携えて要塞前に立っていると、建物から一人の男性が出てきた。
詰め襟の軍服をかっちり着込んだ、青色の髪に茶色の瞳の青年。年は私より少し上くらいかな?
彼は私の前で立ち止まると、頭の天辺からつま先までを値踏みするように睨めつけてから、不機嫌そうに口を開いた。
「貴女が本日から配属されたエレノア・カプリースですか?」
「はい」
敬礼とか分からないから、そのまま返事する。
「私はゴードン・コンセルト。王国騎士団魔物討伐隊第七隊副隊長です。隊長室に案内します」
「ありがとうございます」
隊長って、フィルアートのことだよね?
いかにも軍人らしく姿勢良く歩くゴードンの後ろを、私も早足でついていく。
「その肩の魔物はなんですか?」
カツカツと石の廊下に軍靴の音を響かせながら、彼は振り返りもせず訊いてくる。
ゴードンの喋り方は敬語なのにちっとも丁寧な感じがしなくて、……なんだか刺々しい。
「ここはペット禁止ですよ」
「ペットじゃなくて騎獣です」
入団の申請書に騎獣として登録すれば、魔獣の持ち込みOKだと書いてあった。だからそうしたのだけど。
ゴードンは立ち止まると、怪訝そうに眉を寄せて、
「……乗るんですか?」
「乗りません」
……今乗ったら虐待でしょう。
「成長したら乗る予定です」
この子のお母さんは普通の虎より倍も大きかった。セリニも将来有望だろう。
ゴードンはふんっと鼻を鳴らした。
「それまで生きていればいいですね」
……それは私のこと? それとも窮奇?
どちらにしろ、副隊長さんは感じ悪い。
廊下の最奥、一際巨大で物々しい扉の前で、ゴードンは立ち止まる。
ノックをしてから直立で中の人物に呼びかける。
「失礼します! エレノア・カプリースを連れて来ました!」
「入れ」
返事を待って、ゴードンがノブを回す。
開いたドアから見えたのは、意外と広い室内。毛足の短い紺の絨毯に、いくつもの勲章を収めたガラス棚に、観葉植物。
マホガニーの大きな執務机で書き物をしていた彼は、羽ペンを止めて目を上げた。
「ようやく来たな」
端正な唇が僅かに綻ぶ。
フィルアート・サンク・パルティトラ。
……今日から私の上官になる人。
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