第5話 結論その2日本人の会話の癖を使って日本人を強調する

白人女性大好き! かずきーでございます。


 前回は長ったらしい前置きで、日本人の話し方の癖を強調することで、欧米人のセリフとの違いをより際立たせるという試みを提案しました。今回はその具体的な内容を早速提案してまいります。


 まず、第三回で日本人は会話において動詞を省略するというお話を致しましたが、実は日本人は会話において動詞どころか文章を丸ごと省略することが少なからずあります。会話の例を挙げます。


スーパーにて


女客「あの、買ったキャベツに虫がついていたんですけど……」

店員「たっ、大変申し訳ございません! 別のキャベツに変えさせて頂きます」

女客「でも、もう料理作っちゃってキャベツ使わないので……」

店員「ご不便おかけして申し訳ございません。では返金させて頂きます」


 この会話、日本人としての感性で見れば特に珍しくもないでしょう。ですが、この会話をもし欧米で行えば店員の第一声からほぼ間違いなく違うでしょう。おそらく、So what? だから? とするどいカウンターが返ってくることでしょう。そう、欧米人にはこの話法は通じないのです。


 結論を述べると自分の要望を自分で言わずに相手に察させようとするこの話法を使うとあなたのキャラクターはより日本人らしくなります。ではこの結論に至った理由をもっと掘り下げていきましょう


 例文の女性客にSo what? と聞き返したら、多くの日本人は冷たいとかサービスが悪いと感じるのではないでしょうか。しかし欧米人からすれば何も意地悪をしているわけではありません。なぜなら客は虫がついていたという事実の表明をしただけであり、その事実に対して自分が何を求めているのか何一つ自分では語っていないからです。


 会話全体の流れを見れば、空気を読むことに長けている日本人であれば客が求めているのは返金であるとことはできます。そして店員が察してくれた結果として最後まで客は自分の目的を自分の口からは話していません。


 この話法が日本人同士の会話で通じる理由、それは日本人の責任を負うことを嫌う文化にあると私は考えます。数年以上の日本企業における社会経験をお持ちの方でいらっしゃれば、偉くなるほどに責任を負わなくなっていく上司の一人や二人心当たりがあるのではないでしょうか?


 私はこの話法は日本人の悪癖の一つだと考えています。なぜなら先程の例文の場合、客には返金を受けたいという目的があるけれども、提案を発言したのは意図を察した店員なので、店員の発案として責任が生じるからです。


 個人的に無責任会話、またはヤクザ会話と呼んでおります。

 言ってしまったら恐喝や脅迫になってしまうので、事実だけ述べて要求は察させる。そして相手が察して案を言ったら約束して、反故にしたら落とし前を付けさせる。相手に言わせることで自己の責任を回避できる。そんなずるい目的の話法だと思うのでこう呼んでいるのです。


 日本人はあまりにもこの話法に慣れ過ぎているので、いざ立場が下の人が心情を読み外した場合に、「気持ちを分かってくれなかった」と責めてくる人もいるのでなおさら質が悪いと思います。


 少し話が脱線しますが、ホストと言う職業が日本で成立する一因がこの話法にあると考えております。なぜか? 日本人は幼少の頃からこの話法に触れることで、コミュニケーション難易度インフェルノモードの環境で成長します。立場や空気を読んで話相手の思考を予測して、それに対する最適解を提示し、それでいて自分の主張は控える。そんな頭一つ飛びぬけたメタ認知能力があって初めて太刀打ちできる世界で女性に女性が求める言葉を投げかけられるからこそ、ホスト職が成り立つのだと考えます。日本企業が採用面接においてコミュニケーション能力をみることが多いのも同様の理由だと思います。


 ここまで述べてきた内容からはこの話法を使うとキャラクターの無責任さや自信のなさばかりが際立ちそうと思いませんでしょうか。私はそうとは限らないと思います。この話法の性質を理解していれば先述したヤクザのように相手を陥れる策士として、もしくは一筋縄では行かない交渉の達人としてキャラクターを描くために使用もできると考えます。


 たとえば私は接客業をしていた頃はお客様が使うこの話法を受け入れて積極的に意図を読んでいました。しかし、その後BtoBの仕事をしてからは契約にかかわる会合で相手方のこの話法を絶対に許さずに、省略した……の先の文章まで完結させていました。


取引先「仕様の変更が必要になったので……」

わたし「はい、必要になったのですね。お客様のご要望を正確に把握したいので、何をお求めか具体的に仰って頂いてよろしいですか?」

取引先「〇〇と〇〇の実装をして欲しいんですが……」

わたし「(あえて空気を読まずに)エンジニアに確認しますので納期と予算をお伺いできますか」


 他にも私が自営業の頃にエラーを起こしたWebサイト運営会社に対してはあえて相手が具体案を出すまで私がこの話法で粘ったことがありました。相手が代案を出してから初めて本格的にこちらも話し始めました。


わたし「昨日一日営業できなかったんですけど……」

取引先「申し訳ございません」

わたし「申し訳なく思っていらっしゃるのは知ってます。損害があるんですけど……」

取引先「〇〇でしたら……」

わたし「こちらの損害は〇〇円なんですけど。データもあるんですけど……」


 この会話の取引先の意図は「謝罪の言葉だけで済ませたい」です。私はそれを認知していましたが、損害が出ている以上は許す訳にはいきません。だからと言って契約書に賠償について取り決めがなされていない限りこちらから求めては脅迫になりかねません。だからこそ無責任話法で相手に察させるのです。


 このように日本人が相手の意図を察する能力に長けていることを知った上で、キャラクターがこの話法を使うか判断できるようにすれば、より狡猾なキャラクター構築に繋げられると思うのです。


 なお、欧米人はこの話法をほとんど使いません。使うことでむしろ自分の思考を言語化して主張できないだとみなされます。実は第二話で触れた日本人男性が白人女性に頼りなく見られている理由の一つが正にこれです。


 最後にまとめです。

 日本人が無意識に使っている、文章を丸ごと省略して内容を相手に想像させるヤクザ話法を紹介しました。特に以下の性格の日本人キャラクターに合うと思います。


1・プライドが高くて人前で恥をかくことを異様に嫌がる

2・依存思考で気が小さい

3・こちらにとって都合の良いことを相手から言わせる策士


 この話法を欧米人キャラクターには使わせず、日本人だけが使うように意識することで、セリフを日本語だけで構成してもキャラクターの差別化ができるようになると考えます。


以上、初めての創作論でございました。

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