第67話 ユニコーンとバイコーン
俺たちは、行きとは違い、帰りはゆっくり歩いて帰る。その間、ケロースは仕入れてきた馬とバカップルのようにいちゃいちゃとしている。
「ほんと、分かってんのか? 囮用の馬だぞ? お前の女を買ったわけじゃないからな」
俺は釘を差す。
「わ、分かっている! しかし、彼女を危険な目に合わせる訳にはいかん! 私もバイコーンをおびき寄せる時には同行するからな!」
いや、依頼人であるお前たちを危険な目に合わせない為に、囮を買ったのにお前が同行してどうすんだよ…
そんな感じで、村の広場まで辿り着くと、広場は馬車を中心にお祭り騒ぎのようになっていた。
「あっ、旦那、お帰りごぜいやす」
人だかりに囲まれて、カズオが声をかけてくる。
「一体、どうなってんの?」
「いや、集まってくる人と話しているうちに、更に人が集まって来やしてね、あっしらと村で宴会をする事になったでやす」
あぁ、こんな田舎の村じゃ刺激がないからなぁ~ 何かにつけて騒ぎたいのであろう…
ポチも村の子供たちに囲まれて、色々触られている。
「じゃあ、これから宴会料理でもつくるのか?」
「へい、村人が郷土料理を作って、あっしも何か村人が食べた事がない料理を作ろうとおもいまして」
「なら、時間がかかりそうだな… その間に、俺はさらっとバイコーンを退治してくるか…」
俺がここに残っても宴会の準備なんかしたくないからな…
「ケロース、じゃあ行くぞ」
「そうだな、水辺の近くなら、バイコーンも水を飲みにやってくるだろう」
俺たちは村人に丁度いい水辺を聞き出して、二人と一匹でそこへ向かう。10分程、歩いた場所に丁度いい湖があった。そこの水辺の木に馬のロープを繋ぎ、俺たちは近くの繁みに隠れることにした。
「あそこにつないで置けば、湖の反対側からも見えるし、その内、バイコーンもやってくるだろ… しかし、いい日和だな…なんだか眠くなってくるわ…」
「彼女の事が心配だ… 一人で寂しがっていないだろうか…」
「囮なんだから仕方ねぇだろ… しかし、眠い…」
………
……
…
「ヒィヒヒーン!」
俺は馬の嘶きで目を覚ます。いつしか本当に昼寝をしていたようだ。そばで一緒に監視をしていたケロースの姿が見えない。
「しまった! バイコーンにやられたか?」
俺はすぐに飛び起きて、嘶きをあげた囮の馬の方を見る。
「ちょっ!! おまっ!!」
俺の声に気が付いたケロースと目が合う。なんか馬と繋がっている…
「い、いや! こ、こここれは違うんだ!!」
「違うって…どこをどう見間違えれば違うんだよ… って、ケロース…お前…その姿…」
俺は、夕闇の染まる村の中を広場に向かって速足で歩いていく。
「おぉ、主様、もう退治してきたのか?」
広場で村人と一緒に郷土料理を食べていたシュリが俺の姿を見つけて声をかけてくる。
「あぁ、依頼の事はもう済んだ。それより、ユニポニーは?」
「馬車の中におるが… で、その男はどうしたのじゃ?」
シュリは俺の後ろに控えるケロースの姿を見て、目を丸くする。
「何でもない… そう、何でもない…」
俺はそう言って馬車へと向かう。中へ入ると都合の良いことにユニポニーがソファーに座って一人、食事を採っていた。
「イチロー様、もうバイコーンの退治は終わられたのですか?」
ユニポニーが声をかけてくるが、俺は無言でユニポニーに近づく。
「イ、イチロー様?」
俺はユニポニーの前に立ちはだかり、その服に手をかけ一気に引き裂く。
「きゃぁ!! 何をなさるのですか!」
「何って、ナニするに決まってんだろ!」
「そ、そんな! ケ、ケロース兄さま! 助けて!!」
ユニポニーが悲鳴をあげて兄の助けを呼ぶ。
「残念ながら、お前の兄公認なんだ…諦めろ」
「そ、そんな! 嘘よ!」
ユニポニーが開けた胸を隠しながら叫ぶ。
「ユニポニー… もう、処女なんて捨てちまえよ…」
俺の後ろのケロースが告げる。
「に、兄さま!? ど、どうしたんですか? その姿は!?」
俺の後ろのケロースは真っ白だった肌が、サロン焼けしたチャラ男の様に黒い肌になっている。
「どうしたもこうも、お前の兄はバイコーンになったんだよ!」
「そ、そんな兄さまが…」
ユニポニーは驚愕して目を見開く。
「前から貞操観念の強いユニコーンがどうやって増えているか、バイコーンがどうやって増えるか謎だったが、貞操を失ったユニコーンがバイコーンになるんだよ!!」
「嘘! そんなの嘘よ!!」
ユニポニーは絶叫をあげる。
「ユニポニーよ。やっちまえば全てがわかる。ここはイチロー殿にその身を委ねるのだ…」
チャラ男になったケロースは告げる。
そうして、俺はガッツリ、ユニポニーを頂く事になった。
そして、次の日の朝、腹が減った俺は飯を食いに馬車を出て村の広場へ向かう。遅くまで騒いでいたのか、皆、そのあたりに転がって寝ていたり、昨日の残った料理を食べていたりしている。
「おはよう、イチロー殿」
クリスが挨拶をしてくる。
「おはよう、クリス。残り物でいいから食い物をくれ、腹がへった」
そこへ、遅れてユニポニーもやってくる。
「ユ、ユニポニー殿! どうしたのだ! その肌は!」
クリスが小麦色の肌になったユニポニーを見て驚く。
「私に話しかけないでください! 処女臭い!」
「えぇぇぇぇぇ~」
昨日までとは違うユニポニーの態度にクリスは目を丸くする。
「イチロー様、私は貴方のお蔭で女の喜びを知ることが出来ました。ありがとうございます」
「お、おぅ…そうか…」
次にケロースもやってくる。
「ケロース殿! ユニポニー殿が! ってケロース殿もその姿は…」
「私に話しかけるな! 処女臭い!」
「えぇぇぇぇぇ~」
ケロースにも罵声を浴びせられ、クリスは項垂れる。
「で、お前らこれからどうすんの?」
「はい、私は兄とプルラ義姉様と共に牧場を開こうかと思います」
「プルラ義姉様って?」
「ははは、昨日のこの娘だよ。私の妻となった」
そういってケロースが昨日買ってきた馬を連れてくる。プルラ義姉様って、その馬たしか2歳だったろ…
「それと、これが報酬のユニコーンの角だ」
俺は二人から角を渡される。確かに高価な物だが、なんか捨てた童貞を渡されるようで嫌な気分になる。
「おぉ…ありがとう…では…達者でやれよ…」
「はい!、ありがとうございます!」
そこへ、呆然とするクリスの代わりにカズオが朝飯を持ってやってくる。
「あぁ、カズオ様、昨日はこの様に素晴らしい方とは知らずに失礼を致しました」
ユニポニーはカズオに恭しく頭を下げて、ケロースと共に去っていく。
「一体、なんなんでやす?」
「気にするな、飯食ったら出発するぞ」
こうして、再びクリスの引きこもり生活が始まったのであった。
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