第32話 今後の対策会議

「いや~ さっぱりした~ やはり、久々の風呂はいいなぁ~」


俺は風呂上がりで、ほこほこしながら、食堂の椅子に座り、冷えた飲み物を口にする。


「わらわはポチを洗うのにつかれたわ」


「でも、ポチ綺麗になったし、臭いもしなくなった」


同じく風呂上がりのシュリとカローラが風呂の感想を述べる。


「わう!」


 綺麗になったポチが向こうでしっぽを振っている。いつもなら、俺がポチを洗ってやるのだが、シュリが『ポチばかりズルい』と言い始めたので、では、お前たちがやれと言う事になった。まぁ、最初はしぶしぶであったが、最後の方は、犬に戯れる子供二人という状況になっていたので、俺が『風呂場では静かにしろ!』と怒鳴って、その場を収めた。


 で、本来なら、直ぐに飯にしたいのだが、カズオが今、風呂に入っているはずなので、我々は食堂でカズオが風呂から上がるのを待っている訳だ。ただ善意で待っている訳でなく、食事しながら今後の対策会議も行うので、情報や連絡に漏れが無いようする為である。


「しかし、カズオのやつ、遅せぇな… あいつ、結構長風呂だな」


俺がそんな事を言っていると、当人のカズオが食堂にやってくる。


「カズオ! 遅いぞ! 長風呂したいのだったら、飯食って会議おわってからにしろ」


「へい、旦那。お待たせしてもう訳ごぜいやせん。ちょっと、揉め事がございやして…」


カズオは困り顔をしてぺこぺこと頭を下げながら言う。


「揉め事ってなんだよ」


「へい、あっしが風呂に入っていたら、女騎士のクリスさんが来やして、あっしはビックリして、『きやぁぁ!! 女の人よぉ!!』って声を上げたら、辺りの骨メイドさんたちが集まってきて、収拾のつかない状態になりやして…」


「だから、なんでお前の方が悲鳴を上げるんだよ… 普通、逆だろうが…」


「だって、女の人に肌か見られるのに慣れていなくて恥ずかしくて… それに女騎士が怖いんですもの…」


カズオは頬に手を当ててはにかむ。


「何が裸が恥ずかしいだ! お前、普段から、腰巻みたいなズボンしか履いてないだろ! いつも、ほぼ裸じゃねぇか!」


「いや、あっしはちゃんとエプロンもつけておりやす」


そう言って、胸元を隠す。


「確かにお前はエプロン付けている事が多いな… 上半身はほぼ裸だし、もしかして裸エプロン? いやいや! おまっ! そんな事言うのはやめろ! 俺の中の裸エプロン像がくずれるだろうが!」


 俺の頭の中で、女の子のエロい裸エプロン姿が、どんどん、カズオのエプロン姿に置き換わっていく… いや、俺が求めていた裸エプロンはこんなものではないはずだ! しっかししろ! 俺!


「なんじゃ、主様、そんなに裸エプロンがいいなら、わしらも着てやろうか?」


 シュリがそんな提案をしてくる。おそらく、俺が好む姿をしてポイント稼ぎをするつもりなんだろう… 俺がポチを可愛がっているのを何かと嫉妬みたいなのしてくるからな… しかし、乳首のない女に裸エプロンしてもらっても嬉しくないだろ。見えなさそうで、チラチラ乳輪が見えるとこがいいのだ。


「いや、お前らはいい… それよりもっと大きくなることを考えろ…そして、大きくなってから着ろ」 


「なんだか、男心は複雑じゃのう…」


「うんうん」


カローラも同意しているが、お前が来たところで、幼女の涎掛けにしか見えんわ。


「それより、全員集まったし、飯にするぞ!」


「うん、分かった、イチロー様」


そう言ってカローラが合図をすると、骨メイド達が料理を運んでくる。


「おぉ、この前食べたハンバーグか! って、心臓の形だぞ…これ」


 前回のカズオ作のハートマークに矢印のソースも、カズオが作った事を考えるとキモかったが、今回はダイレクトにキモイ。しかも、ソースが心臓から血が溢れているようにしか見えない。


「あっ、今日はあっしが風呂に入っていたもんで、お料理は骨メイドさんにお任せしてやんです」


「まぁ、いい、味さえちゃんとしていれば、やっぱうめぇなぁ~」


 俺は気を取り直して一口食べる。見た目はアレだが、味付けは中々良い。箸じゃなくてナイフとフォークが進む。


そんな中、ハンバーグをじっと見つめて、食事に全く手を付けないカローラの姿が映る。


「どうした?カローラ食わないのか? 食わねぇと大きくなれねぇぞ」


「だって、これ、レバーが入っているんでしょ…私、レバー嫌い…」


そう言って、カローラは顔をしかめる。


「あ?」


「わ、分かりました、イ、イチロー様。た、食べます!」


俺が一声かけると、カローラは慌ててハンバーグを食べ始める。この前、脅しすぎたかな?




「あぁ、食った食った、食う事に夢中で、対策を話し合うの忘れていたな」


俺は空になった皿を前に、満腹になった腹をたたく。


「それで、主様よ。これからどうするのじゃ? もうイアピースにはいけんぞ」


シュリは食後のお茶をしながら言う。


「イアピースがだめなら、他の国に行けばいいだろ」


どこかのギロチンにされた姫様みたいなセリフだが、今の俺にはそれしかないだろう。


「今、王国は連合を組んでおるのだろう? 他国に行っても駄目ではないか?」


俺の言葉にシュリは疑問を投げかける。


「そんな事はないよ、シュリ」


それを否定するカローラ。


「どういう事じゃ? カローラよ」


「ここの北にあるウリクリ王国とイアピース王国とは本来、仲が悪いのよ」


「そうなのか?」


俺もそれは初耳だ。


「えぇ、城の書物を呼んで調べたのだけど、北のウリクリ王国は、農産物の収穫が安定するまでは、何度も、食料を求めて紛争を起こしていたようなのよ」


「あぁ、わらわで言う所の縄張りに餌が少なくなったから、他者の縄張りに餌を求めに行ったんだな」


 もともと北の気候で間に山脈があるなら、元の世界で習ったと思うが、雨もあまり振らないのであろう。三国志であった北方民族みたいな感じかな?


「なるほど、それで、今は魔族戦役で一応、連合は組んでいるという訳か…連合がなければ、やはり仲は悪いのか?」


俺はそんな過去を踏まえて、現在の関係について訊ねる。


「はい、イチロー様。やはり、過去に襲われた恨みがありますからね。こんなウリクリとの国境の近くに、隠居した王族の別荘があるのは、ウリクリに対しての挑発なんです。何かしかけてきたら、それを理由に戦争をするつもりだったようです。だから、その囮になる王族には好き勝手させていたのです」


 カローラの説明で、大体わかった。こんな国境近くに王族が好き勝手にする別荘なんて不思議だと思っていたが、そう言う訳だったのか… そりゃ~好き勝手もするし、ウリクリからしたら目障りでしょうがないな。 


「あぁ、なるほどなぁ~ 結構、せこい事を考えるな…でも、そんな状態だったら、ウリクリに行けば何とかなりそうだな…」


「でも、どうじゃろ? ドラゴンのわらわを配下に置いている事はある程度、評価されるかもしれんが、カローラの件はイアピースでしか評価されんのではないか?」


「あっしなんか、ただのハイオークですしね」


 シュリの言葉ももっともである。このまま行ってもウリクリにとっては火種を招き入れる事にしかならない。


「では、ウリクリ内でも手柄を立てといた方がいいな… お前ら何か手柄になりそうなのを知っているか?」


「それなら、ウリクリ国内を荒らしまわっておりやす、魔人プリンクリンがおりやす」


補給部隊として動き回っていたカズオが述べる。


「なんだ? そのプリンクリンって変な名前は?」


「…私、プリンクリン、嫌い…」


プリンクリンという名に、カローラが露骨に嫌な顔をする。


「カローラは知っているのか?」


「はい、知っています。人間の魔導士でありながら、魔王様に忠誠を誓って、若さと美貌を手に入れた女です。あったのは私が大人だった頃の話ですが、会うたびに自分の方が可愛いとか、若いとか、人気があるとかで自慢してきたので鬱陶しいかったです」


エロピッチピチカローラが成人女性の姿で、大体JDぐらいだったから、それより若いと言うとJK辺りか…これはこれは… 楽しみじゃないか…


「ほほぅ~ 若くて可愛いのか… で、強いのか?」


「そこまでは分かりませんが、いつも魅了した取り巻きを引きつれていました」


取り巻きを引きつれているって、サークルの姫みたいなものか?


「なるほど…自身の強さでなく、魅了して仲間を増やしていくタイプか… 本人を奇襲すれば何とかなりそうだな…」


「でも、結構な数の取り巻きがいますよ?」


カローラの言葉によると、サークルの姫レベルではなくアイドルレベルか?


「ん~ そうだな… ん~ そうだ! いい事を考え付いた! お前らのお陰だぞ!」


俺はシュリの言葉を思い出し、ある考えを思いつく。


「わらわたちとな?」


「あぁ、そうだ! カローラ! そのプリンプリンの姿を思い出して、何かに描け、後、裁縫の出来る骨メイドを集めろ!」


俺の考えが上手くいけば、取り巻きを引きはがせる。


「プリンクリンじゃな、主様、わらわは?」


シュリが出番が欲しそうに声をあげる。


「お前はもっと上手く化けれるように努力しろ」


「…わかった…」


シュリはしょぼくれて目を伏せる。


「旦那、あっしは?」


「お前は、骨メイドが心臓ハンバーグを作らない様に飯担当だ」


やはり、ハンバーグは普通の形がよい。


「わう!」


「あぁ、ポチは協力したいのかぁ~ 賢いなぁ~ 偉いぞ! ポチ! お前は俺の近くでモフモフされてろ」


「わう!」


やはり、ポチはかわいいなぁ~

そこにシュリがジト目で睨んでくる。


「贔屓じゃ…」


「あ?」


「なんでもなりませぬ…」


シュリは俺の一声で押し黙る。


「では、始めて行ってくれ!」


こうして、俺は計画実行の掛け声を上げた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



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