グッズの開封が始まりました(彼女は中身を知っています)
「さてさて、袋の魅力は十分に堪能……もとい、紹介できたでしょう。では、中身の確認に移っていきたいと思います」
【この人、一回中身見てるんだよね? どうしてここまで新鮮かつ緊張に満ちた態度で再開封できるの?】
【それがいのりんだから】
【いのりんだからとしか答えられない】
【慣れろ、いのりんはそういうアイドルだ】
【蛇道枢ファンの中でPマンニキと並んで別格扱いされてる人間だからな、いのりんは】
このグッズは今日購入した物ではあるものの、実質的には二度目の開封となるというのにどうしてここまで楽しめるのか? その答えは彼女が黄瀬祈里だからとしか言いようがない。
もう色々と慣れている者とそうではない者とが入り交じるコメント欄がちょっとした騒ぎを見せる中、誰よりも静かで騒がしい女が枢と芽衣のイラストが描かれた袋の中からグッズを取り出し、それをカメラの前へと寄せると、リスナーたちへと見せつけていった。
「はい、まずはキーホルダーです。二頭身キャラにデフォルメされたお二人はかわいいですね~……! いや、普段からかわいいのですが、それとは違った趣があって実に良き、です。一セット目は保存用として厳重に保管してあるので、二セット目のこれは鑑賞用としてケースの中にしまっておこうと思います」
【一個目も二個目も保存してるじゃねえか!】
【一個目は大事に保存←わかる 二個目も大事に保存←???】
【推しのグッズを大事にしたい気持ちは痛いほどわかる】
「三セット目も買いますからね? それはお出掛け用として使わせていただきます。くるめいを私の手で色んな場所に行かせる。私はくるめいを見守る壁なので、実質これは二人きりのデートということになりますね」
【なるほど???(思考放棄)】
【そうかぁ、過激派の脳内ってこうなってるんだ……!】
【この人って本当にアイドルなの? ヤバい薬とかやってない?】
【くるめいのてぇてぇで脳が壊れてしまったんだ、許してやってくれ】
【俺はもう慣れた】
理解ができそうでできない重度のオタク特有の飛躍論理を活用する祈里に対して、戦慄を覚えるリスナーたち。
訓練されている者たちがこの異常さを普通に受け入れる中、段々とおかしさを増していく彼女がまた新たなグッズを取り出してみせた。
「こちらはポストカードですね。う~ん、やはり私の推したちは顔もスタイルも全体的な造形も何もかもがいい、素晴らしい。誕生日とか一周年記念とかにはサイン入りのポストカードとかが販売されるんでしょうかね? そうなったらなにがなんでも手に入れますし、転売しようとしてる奴は殺しに行きます」
【アイドルが言っちゃいけないこと言ってない? 大丈夫?】
【ヌ゛ッッの時点で手遅れだゾ☆】
【過激派が過激派たる所以出たな。いや、でも俺も転売ヤーは処したいけどさ】
「いいなあ、ポストカード……! これも大事に保管しておきましょう。さて、お次はっと……!」
わかりきっていることだが、今の祈里の脳内に自重という文字はない。
好き勝手に暴れる彼女はポストカードを丁寧に机の脇に寄せると、新たなグッズを袋の中から取り出すと共に悶絶した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます