食育乳&メンタルケアの結果
「……は? Cカップ? ABCのCカップ……? おい入江、どうなってる!? お前は私を置き去りにしてどこに行くつもりだ!?」
「ちょっ、やめ、やめてくださいぃ……!」
沙織の一言を耳にした天が、血涙を流さんばかりの勢いで吼えながら有栖の肩を掴んでぶんぶんと揺らす。
悲鳴を上げて彼女に止めるように有栖が懇願する中、その動きによって僅かではあるが揺れを見せている彼女の胸を見た沙織は、うんうんと頷きながら呟いた。
「やっぱり大きくなってるさ~! これも零くんのお陰かな~?」
「零!? あいつに揉んで育ててもらったってのか!? 芽衣ちゃんのおっぱいは私が育てましたってか!? あの蛇めっ!!」
「そそそ、そんなことしてもらってませ~ん! 変な誤解しないでくださ~い!!」
いきなりぶっ飛んだことを言い始める天に対して、大声で叫び返す有栖。
そんな二人を見つめながらからからと笑う沙織は、天の勘違いを訂正するように言う。
「違う、違う。揉むんじゃなくて、ご飯をしっかり食べさせてもらってるってことだよ~! 栄養バランスが偏った食事を続けてると、体型って簡単に崩れちゃうでしょ~? 逆も然りで、しっかりと考えられた食事を取れば、体も健康になるしすくすく育つってことさ~!」
「それは……確かにそうかもしれません。私、零くんがいなかったら三食カップラーメンかコンビニ弁当でしょうし……」
「うんうん! 食育で育乳、略して食育乳ってことだね~! 零くん好みの巨乳さんに、有栖ちゃんも順調に近付いてるよ~! あっはっは~!!」
「ぴぇ……!?」
沙織の言葉に顔を耳まで真っ赤にした有栖が胸を隠すように自分を抱き締めて湯船へと体を沈める。
顔を半分ほど湯船に沈め、ぷくぷくと口から泡を噴き出す彼女の照れ具合を見て楽しげに笑う沙織であったが、貧乳属性を持つもう一人の女性は気が気ではないようだ。
「待ちなさいよ……! このまま有栖ちゃんのおっぱいが零の手で育てられたとして、それが新衣装とかの立ち絵に反映されたら……二期生の貧乳は私だけになるじゃない!!」
「やったね、天ちゃん! 世のちっぱい派を一気に取り込めるよ!!」
「嬉しくない! 全っ然嬉しくない!! ちょっと沙織! あんたの乳、触らせなさい! ご利益、ご利益もらうから!!」
「おっ、いいよ~! 天ちゃんのおっぱいも大きくなるといいね~!」
「くそっ! 持つ者としての余裕が腹立つ!! でもこのサイズには何も言えねえ……っ!!」
泣きながら沙織の胸に手を伸ばし、もみもみと鷲掴みにして祈りを捧げる天。
世の男性諸氏からすればかなり羨ましい状況なのだが、どうしてだか彼女は涙を流し続けている。
圧倒的な重量感と力を込める指を押し返すような張りの強さ、そして柔らかさを併せ持つ沙織のおっぱいと自分のそれとの差を、手を動かすごとに感じ取る天が嗚咽しながら救いを求めて彼女の胸を揉み続ける。
たゆん、たゆんと静かに揺れるたらばのたわわなたらばと行為だけを見れば百合っぽく思えるそれとを羞恥を感じながら見つめていた有栖であったが、そこでふとあることに気が付いて沙織へとこう問いかけた。
「あ、あの、喜屋武さん……? その、私、二十万人耐久の時に喜屋武さんの胸を見させてもらったんですけど……その時より、大きくなってませんか?」
「あ、うん、そうだよ~! ちょっと前に計ったら、育ってたさ~!」
「……は? はぁぁぁぁっ!? う、うっそでしょぉっ!?」
以前、チャンネル登録者二十万人到達までフィットネスゲームをプレイする配信を行った際、有栖(と零)は沙織の胸を見たことがある。
その時と比べて、明らかにサイズが育っている件について問い質してみれば、あっさりと沙織はそれを認めてみせた。
自分よりはるかに大きいこの胸が、沖縄産パイナップルが、南国育ちの巨大山脈が……まだ成長を続けている。
その事実に驚愕し、この胸を揉む行為で更にたらばのたわわなたらばが大きくなってしまうのではないかと焦った天が大慌てで手を離す中、堂々と胸を張った沙織が何でもないようにこんな話を始める。
「いやね~、前々からちょっとブラがキツいとは思ってたんだよ~! 多分、私も二年間抱え続けてきた心配事が解決して、心がすっきりしたからね~! 胸が軽くなったっていうのにおっぱいは重くなったって、ちょっと面白いさ~!」
「嘘、でしょ……!? 心が軽くなって胸が育つっていうなら、私だってBくらいにはなってるはずじゃん! どうして私は育たなくて、持つ者が更に富むわけよ!?」
「た、多分、体質の問題ですよ……秤屋さんが悪いわけじゃあないですって……」
「遠回しに私が何をしてももうおっぱいは育たないって言わないで!! 自分は成長してるからって憐みの目で見やがって!! ちくしょうめ!! ええ……? 確かあんた、Fカップだったんでしょう? それが育ったってことはGカップぅ!? ふざけんなよ、どこのグラビアアイドルだよ……!?」
頭を抱え、個人的には喜ぶどころか憎しみを滾らせる要因でしかないその情報を呻きながら繰り返す天。
Gカップという驚異的な胸囲が目の前にあることに驚愕する彼女であったが……次の瞬間に沙織の口から飛び出した一言によって、その驚愕すらも打ち砕かれてしまう。
「ううん、違うさ~! Gじゃなくて、Hだよ~!」
「……は? え、えいち……?」
「うん、そう! Hカップ! いや~、育ちに育ってて、流石の私もびっくりだよ~! これ以上大きくなるとかわいい下着がなくて困っちゃうさ~! いや、今も見つからなくて困ってるんだけどね~! あははのは~!!」
「え、えいち……? えー、びー、しー、でぃ、いー、えふ、じーを超えて、えいちかっぷ……? う、うわ、うわああああああっ!?」
「はは、秤屋さ~んっ!? 秤屋さ~~~んっ!!」
信じられないとばかりに顔面を蒼白にした天が、不意に大声で叫び出すと共にざばざばと水飛沫を立てながら逃走を開始する。
沙織の下に一人残された有栖が驚異の胸囲に目を引き寄せられる中、楽し気に笑う沙織がこんなことを口にした。
「こう考えると私たちって、零くんにおっぱいを育ててもらった同士だね~! 本当に感謝感謝さ~!」
「そ、それ、配信で言っちゃだめですよ? 絶対に零くん、燃やされちゃいますから……」
「わかってる、わかってる! ……ねえ、お礼に零くんのこと、おっぱいで挟んであげるってのはどうかな~? きっと零くんも喜んでくれるさ~!!」
「は、挟むって……あうぅ……!?」
自分たちが前後左右から零の顔を胸で包む光景を想像した有栖が、再び顔を真っ赤にして湯船の中に沈む。
HとC寄りのBでは破壊力に差があり過ぎるだろうと、心の中でそうツッコミながらも口には出せずにいる彼女のことを、沙織はからからと笑いながら見つめ続けるのであった。
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