#決戦は目前だなしゃぼん
「ひどい……なんて有様だ」
場面が転換し、必死に村まで走って帰ってきたくるるがその惨状を目にして呻きを漏らす。
のどかだった村はあちらこちらで人が倒れ、家屋が崩壊し、炎と共に黒煙が立ち昇っているという悲惨な状態になっていた。
自分をいじめためーめー村の住民たちではあるが、流石にここまで追い込まれるとざまあみろという気持ちよりも心配や同情の気持ちの方が勝る。
そうやって、ただただ呆然と半壊した村の様子に唖然としていたくるるへと、よたよたとした足取りで村長が歩み寄り、声をかけてきた。
「おぉ、旅のお方……愚かな我らを許してくだされ。あのアル・パカーノ伯爵によって、めーめー村はご覧の有様ですじゃ」
がっくり、と肩を落としてくるるへと謝罪しつつ、悲しみの表情を浮かべる村長。
彼の方へと視線を向けたくるるは、ただ黙って話を聞き続ける。
「奴は悪魔に魂を売り、凶悪なモンスターとなっています。それも全てはめいちゃんを己のものとするため……伯爵は、彼女を連れて自分の屋敷で結婚式の準備をしているはずです」
そこで言葉を区切った村長が、大袈裟に涙を流して大声で嘆く。
「お~いおいおい! 可哀想なめいちゃん! 彼女はめーめー村を守るため、自らを犠牲にしたのです! このままではめいちゃんはアル・パカーノ伯爵と望まない結婚をする羽目になってしまう……ですが、我々にはもうどうすることもできません。なんて情けないことなんだ。お~いおいおい!」
連れ去られためいの身を案じながらも、自分たちには何もできないことを嘆く村長。
そんな彼へと力強く胸を叩いたくるるが、自分の存在を強くアピールしてみせる。
「お……!? まさか、あなたがめいちゃんを助けてくれるというのですか!? ですが、アル・パカーノ伯爵はかなりの強敵、あなた1人だけでは……!」
「それでもだ。俺はめいちゃんを助けに行きます。あの子のためっていうのもあるけど……俺が彼女を助けたいって、心の底から思ってるから……! 例え敵がどれだけ強かろうとも、俺はあの子を助け出してみせます!」
「………」
力強く自身の決意を語るくるるのことを驚いた表情で見ていた村長が、大きく頷く。
彼が口笛を吹き、何らかの合図を出してみせれば、倒れていた村人たちがすくっと起き上がると一気に集合してくるるへと期待を込めた眼差しを向け始めた。
「……わかりました。あなた様のその覚悟に賭けてみようと思います。めいちゃんを助けるためになら協力は惜しみません。あなたが体を休める場所と、必要な道具を補充する商店だけはなんとか復旧してみせます」
『そこは無償で力を貸すべきところでしょ。この状況に至って、なんで商売っ気を優先するんすかね?』
【#気持ちはわかるが黙ってようなしゃぼん】
【#感動的な雰囲気が台無しだぞしゃぼん】
【#でも実は俺も同じ意見だしゃぼん】
途中、実況中のしゃぼんによる茶々が入ったが、こうしてめいを救うためにアル・パカーノ伯爵との決戦に臨むこととなったくるるの表情は決意に満ち溢れている。
そんな息子を援護し、敵の手に落ちた嫁を救出すべく、しゃぼんは戦いに備えて万全の準備を整えていくのであった。
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