#定番の展開だなしゃぼん


『うっ、ううううぅ……! どうして坊やがこんな可哀想な目に……!?』


 場面が転換し、地下牢と思わしき牢屋に囚われているくるるの姿を目にしたしゃぼんが哀れな息子の様子に涙を流す。

 冤罪で逮捕されてしまったくるるはしょんぼりと冷たい石の床で膝を抱えており、その姿がまた哀愁を漂わせていた。


『くっそ~、この村の連中もあのアルパカ伯爵も絶対に許さんからな……!! 全身の毛という毛を剃り尽くしてツルッツルにしてやる……!!』


【しゃぼんの資金力で最強弁護士呼ぼう。北〇と成〇堂、どっちでもいいぞ】

【次回、大魔王と化したくるるの復讐の物語が始まる!】

【#息子のために徹底抗戦しろしゃぼん】


 ゲーム内とはいえ、息子を模したキャラクターを冷遇するめーめー村の住民たちとそれを扇動したアル・パカーノ伯爵への怒りを深めていくしゃぼんと契約者たちはなかなかに物騒な会話をしていたのだが、それを中和するかのように捕まってしまったくるるに面会すべく、唯一の味方であるめいが牢屋を訪れた。


「ごめんなさい、くるるさん……私を助けたせいで、こんなことになってしまうだなんて……」


『いやいや! めいちゃんは何も悪くないっすから! 悪いのはあの伯爵とその取り巻きたちなんだから、気にしないでくださいっす!』


【#息子に代わって嫁と会話するなしゃぼん】

【異 物 混 入】

【#お前の方が牢屋が似合うなしゃぼん】


「どうやら、くるるさんはこれから罰として伯爵から命じられた3つの仕事をこなさなくちゃいけないみたいです。大変なお仕事かもしれませんけど、私も手伝いますから、頑張りましょうね!」


『おっ!? めいちゃんも来てくれるんすか!? なら安心だな、ガハハ!』


【実質デートやん。ちょっと見直したぞ、伯爵!】

【だが許さん。くるめいの間に入り込んだ罪で処刑だ】

【#息子と嫁のデートを邪魔するなよしゃぼん】


 とまあ、そんな感じで茶々を入れられながら、おなじみのやり取りを繰り広げながら、くるるの旅はRPGの定番であるおつかいクエストをこなす展開へと突入していった。

 翌日、牢屋から解放されたくるるは、パーティメンバーであるめいと合流した後にアル・パカーノ伯爵が出した3つの仕事をこなし始める。


 1つ目の仕事は簡単で、隣町まで行ってキーアイテムである『純白のドレス』を入手してくること。

 これは昨日の冒険と同じく、強力な技を使えるくるると彼を補助するヒーラーめいの活躍で雑魚敵を蹴散らしながら、問題なくクリアできた。


 2つ目の仕事はちょっと大変で、同じくキーアイテムとなる『豪華なティアラ』を作るためにその素材となる鉱石を持つモンスター『サファイヤゴーレム』を倒すという、いわばボス戦だ。

 防御力が高く、攻撃が効きにくい相手ではあったが、魔法攻撃に対しては耐性がないということが判明してからはくるるの『炎上斬り』が大活躍した。


 炎属性の攻撃でダメージを与え続け、HPが減ったらめいの魔法で回復し……という、同じパターンの繰り返しながらも白熱した戦いとなったボス戦は、くるるの強烈な1発によって遂に終止符が打たれる。


「これでもくらえっ! や~っ!!」


「ウゴーッ! や、やられた~!!」


『いよっしゃーーっ! ボス、撃破ーっ! 坊やはいい子! めいちゃんもいい子! 2人ともよくやったっす!!』


【888888888888】

【炎属性付きの技を覚えてるとここは楽でいい。グダらなくてよかった】

【#よくやったぞしゃぼん】


 前半の山場となるボス戦を終え、目的の品である鉱石を入手したくるるとめいがスキップでめーめー村へと帰還する。

 鉱石を納品し、また1つ仕事を終えたことを喜ぶ2人の姿に満足気な笑みを浮かべたしゃぼんは、意気揚々と気合の叫びをあげた。


『さあ、残る仕事は1つだけっす! これもくるめいパワーでサクッと解決して、坊やを自由の身にするっすよ~っ!』


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