第15話 雪、ペットを拾う (雪 視点)

今回、割とホラー的な描写が含まれるかもです…そういうのが嫌いな方は注意してください

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夜もふけ、涼しい風が吹く。宿屋には、昼間には誰かが歩く音も止み、静寂に包まれている。


風が窓を叩く音と共に、私、鷺堂雪さぎどうゆきは目を覚ました。


『やっべぇ…目が覚めた…』


私はユウキ・イアの体にいて、今は私の兄であるゆうが主導権を握っているため、目を開けることすらできない。


『ちょっと…借りるぞ』


意外と静かに寝ている兄に、意外さを感じながら、そう断って表に出ようとする。


「んん…雪は…俺の嫁…」


…静かに寝るというのは、訂正する必要があるかもしれない。


結局、私は兄貴の体を奪い、夜風を当たりに街の外へと駆け出した。


夜の街は、静寂に包まれているというよりは、都会の夜のように、喧騒に包まれている。


異世界にありがちな、趣ある街並みは、笑顔で談笑する人たちで賑わっていた。


「お嬢ちゃん今1……ボヘェェェェッ!!」


たまにナンパを仕掛けてくる人間の玉を握りつぶして、特に意味はなく、夜の街を練り歩く。


まるでイベントでもあったかのように、どこもかしこも街灯が付いている。


もう何10分くらいか歩いただろうか…


少し街の中央部から出て、端の少し落ち着いた村みたいなところに着いた。


「意外と広いな…この街…ん?」


街の石畳ではなく、整備された土の地面を踏みしめていると、前方の道で少し光を帯びている何かと出会った。


もうちょっとよく見ようと、近づき、そいつも私の姿に気づいたのか、「ニャー」と鳴いた。


…そこで私は、首だけをのぞかせている猫と出会った。


「…かわいい…」


見た目は可愛らしい白猫である。自由気ままで誰にでも引っ付いてきそうな猫を、私は思わず駆け寄って抱きしめた。いや、抱きしめて、しまった___________


「…………………………………」


…………………鷺堂雪、私は、兄にもよく言われているように、随分と怖いもの知らずということで有名である。だからこんな状況でも絶叫しずに済んだのだろう。


そのかわり、猫は投げ捨ててしまったが…


なんたって、その猫は、首から下がない、生首だけが、呑気に人懐っこく鳴いていたのだから…


          ♣︎


いや…怖っ!この世界がコメディチックではなかったらすぐさまホラー小説に様変わりだよ…


………いや、コメディチックでも怖えよ!


猫は頭を逆さまにした状態で相変わらず鳴く。


やがて、その体制に不満を感じたのか、首から血のようなものが生えて、それが組織を作るかのように、すぐさま赤い体毛を生やした猫となった…


「………」


うん、帰ろう。私はなにも見なかった。そうだこれは夢だ。変な時間に目を覚ましたというわけではなく、ただの夢だ。帰ろう、さぁ帰ろう早く帰ろう。


私はそう踵を返す。その間に怖いもの見たさでつい猫を覗き込んでしまった。


猫のつぶらな瞳が目に入る。


_________________________________________ 猫は寂しそうにこちらを見ている。   

仲間にしますか?


はい            いいえ

________________________________________


………→いいえ…


そう、この猫は化け物なのだ。そんなものは放っておくべきだ。いくら寂しそうにしていても拾ってはおけない。


私は前に向かって歩く。


……猫は急に私の前方に現れた…なんて素早い反射神経…私じゃなきゃ、見逃しちゃうね!


_________________________________________

猫は悲しそうにこちらを見ている。

仲間にしますか?

 ↓↓

>はい<          いいえ

 ↑↑(絶対押せ!)

________________________________________


…なんか、強調表記が入りましたね…


いえ、それでも…→いいえ……


猫を振り落とし、私は歩く。


今度は猫が私の前に来て、ぴかーっと発光した。


…どんな生体だよ…


________________________________________

猫は仲間にして欲しそうに発光している。

仲間にしますか?


はい   はい   はい   いいえ

_________________________________________


……→いいえ…!


_________________________________________

猫は寂しそうに…(以下略)




……→いいえ→いいえ→いいえ→いいえ→いいえ→いいえ→いいえ→いいえ→いいえ→いいえ→いいえ→いいえ→いいえ→いいえ→いいえ!


「はぁ…はぁ…なかなかやりますね…」


ここまで拒否すると、流石に熱が入ってくる。意味不明である。何故この猫はここまで人に懐くのか…しかも化け物…


猫というのは、もっとつっけんどんとしている生命体ではないのか…!


もう私は構うのものかと、走り出す。

すると、当然のように追いつき…

_________________________________________

猫は寂しそうに…

_________________________________________


うるせえええええええええええええっっっっ!!!!!


何故だろう。普段なら動物を殴ることに心を痛める乙女(異論は認めない)のはずなのに、このしつこい猫をぶん殴るのに関して、一切の躊躇いがなかった。


殴った猫は、ボヨンボヨンと、スーパーボールのように跳ね、結果生首だけになって私の元に…


_________________________________________

猫は仲間にしてくれないと、末代まで祟ってやるという目で見つめている。

仲間にしますか?


はい  はい  はい  はい  はい  はい  はい  はい  はい  はい

はい  はい  はい  はい  はい

_________________________________________

妙に仲間にしますか?の文字が、不穏に満ちている。

おい、ついにNoが消えたぞ…


しばしば睨み合っていると、生首の血走った目が私を捉えて…


……→はい……


ついに、私はこの正体不明な生物に負けてしまったのであった。


「ニャー」と擦りつく、猫をもう止めずに、急いで宿に戻り、私はその夜を終えた。


……もう、夜の街なんて行きません!








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