第11話 貧乳はステータスだッッッッ!!(迫真)

「けーっきょくスキル1つしか買えなかったな」


転売ヤーの男の家に仕込みを終えた帰り道に俺は嘆いた。


『しょうがないさ。まぁ、私も欲しくないかと言われれば欲しいがな…』


「いやぁ、兄妹で同じスキル取って、ペアルックみたいなことやりたかったなぁ」


『スキルが買えなくて良かったわ』


俺の速球率直ストレートの愛の告白に、雪は吐き捨てるように安堵する。


…なるほど、これが照れ隠しか。全く…我が妹ながらに可愛いではないか。


『なにニヤニヤしてんの?きもいんですけど…』


これも照れ隠し…


『てか、なんで私たちは同じ体なんだよ…お前が死ねば、私の体になるかもしれないから死ね』


街にも近いこんなところで、人がいるところで、そんな熱烈な照れ隠しを……


「なんだろうな。泣きたくなってきた」


15分後…


「んで…なんで私が目を離した隙にそんな泣いてるんですか?」


エイルは、宥めることなく、ただ呆れ果てた様子で俺たちを眺めている。


「うぇーん!妹がいじめてくるよー!もっといじめろよー!」


『分かった!分かったから、公共の場で大騒ぎするのはやめろ!流石に恥ずかしくなってきた!』


こうして、口の悪い妹とのいつもの口論は、俺が周りの人と、パーティメンバーであるエイルに引かれることで完全勝利した。


計画通り…やったぜ。


「あの…ほんとにいい歳して、独り言言ってると、周りの注目を集めますよ?」


『ほんとに妹にこんなことして嬉しい?いろいろ大事な物を失っているぞ?』


エイルの蔑みにも似たような視線に、かえって雪の憐れむような声。


そして、見渡す限りの白い目。


だが、もちろん俺はそんなことに屈しない。


「構わない。むしろもっと見てくれ。今から服を脱ぐから」


「私はそういうのは…あまり好きではないですね…」


……………………………………………………


『ほんとに嬉しい?』


…計画通り…やったぜ!(泣き)


この時俺は、周りに白い目で見られて大丈夫でも、乙女にガチ嫌われすることには傷つく、思春期の脳味噌を恨むのだった。


         ♣︎


妹に事実上敗北したことと、エイルの視線で涙ぐみながら、来たるは俺たちが初めてきた飲食店。


「さーて、せっかく冒険者になったんなら、クエストには受けたいもんだよな!」


さて、さて気を取り直し、俺は昼飯を食っていた。


今回は雪ではないので、ケバケバは頼まない。極々、一般的なステーキである。


プレートには、ポテトが盛られて、肝心のステーキは、これまた油が良い音を立てて食欲をそそる。


俺いわく、「お前が変なのに、好物が意外と普通」だと言ってしまったことを気にして、今までカエル肉のソテーを食って、母親を泣かしていたものだが、メニュー表のこの一般的なステーキの写真の破壊力には、耐えることはできなかった。


俺は手慣れた手つきで、ナイフを操り、ソースをつけて1口いただく。


うむ。肉厚な食感に、程よく酸味が効いている。味は特にわからないが、野性味あふれる異世界らしい味だ。


ソースも絶品。フルーティに塩気がついたソースは肉に濃厚に絡みつき、その美味しさをより際立てる。


『なんで食レポなんかしてんだよ!当て付けか!?おおん!?』


ゲデモノ食いの雪のことは置いておいて、俺は、だらしなく口元にソースをつけているエイルに向き直った。


「なんか…ちょっと見ないうちにエイルの口が悪くなったなぁ…」


俺が傷心するきっかけを作ったエイルの言葉を思い出しながら呟いた。


「アレ?罵倒されるのが嬉しいって言ってたので、それに従ってみたのですが…何か不満でもありましたか?」


エイルは、キョトンとした顔で言ってきた…


『チッ』


エイルには、俺はそんな事をひと言も言っていない。

雪はこれ見よがしに舌打ち。

…つまりここから導き出される答えは…


「俺の心の声が漏れたか…」


『違えよ!私のお前の嫌がらせだろうが!お前がドMだって、エイルに?言ったんだろうが!気づけよ!』


俺がしたり顔で正解を言ってのけると、雪はいきなり怒号を上げ、バツを打ち始めた。


なんか、自信満々のテスト問題が返却された時にデカデカとバツと書かれた時のようにイラつく気分だ。


そんな兄妹喧嘩に勤しんでいると…エイルが安心したように微笑み…


「ふふ…流石に、拾ってくれた恩をいきなりそんな風に返すほど腐っているわけではありませんよ?罵倒は傷つくのであれば、もうしません」


エイルはまさに天使の笑みを浮かべる。


そこで俺は感極まったかのように…


「…天使だ…官能小説家の天使だ。腐っていない腐女子だ…」


「腐女子って別に腐敗しているというわけではありませんよ!?」


          ♣︎


場所は変わって、冒険者ギルド。その名も《エプリコ》。についた俺はふと思い出したかのようにエイルに話しかけた。


「なぁ、エイルの《図鑑》って、触れれば、もっと精度を上げられるんだよな?俺のステータスって見れるの?」


人のごった返すギルドからちょっと外れた裏路地。

…男女が2人きりで狭い裏路地…なにも起きないはずがなく…ただ残念。俺は今は女の子である。


さらにそもそも女の子の体でなければ、裏路地にもついて来てくれないという事実を雪に突きつけられて悲しくなったところで、エイルの、《図鑑》としての力を試すことにした。


「はぁ…一応、できないことはないですけど…この図鑑…ちょっと変わっていて…いいですか?気分を害しません?」


「正直、この図鑑の悪意ある説明文には慣れたかな」


アレは忘れもしない、俺が百合認定された図鑑。恨みを完全に忘れたわけではない。


だからこそ、仕事はしてもらうぞ…!


俺は、ゆっくりと図鑑に触れる。そして、エイルはスキルを行使して、本に文字が刻まれた。


_________________________________________


ユウキ・イア


……以下略。


ステータス


攻撃力 C


魔法抵抗力 B


魔力量総数 S


魔法才能 D


防御力 D


スピード S


_________________________________________

…ふむ、思ったよりも高水準…。スピードが高いのは知っていたが、魔力が高いのは、はっきり言って、いい意味で予想外だ。


あれ…?もう一段…なんかある。


_________________________________________


胸 S (補足:貧乳はステータスだ。貧乳は、ステータスだッッッッ!!)


大きさ A

_________________________________________


おい…これ、この《図鑑》…作者だろ…雪言ってたんもんな。作者、貧乳好きって…


しかも、補足の部分だけ、何故か文字が太いし…


しかも、それがなんかもっと太くなってくるし…


いずれ、補足部分の文字は、俺のステータスを塗りつぶし、デカデカとした文となる。




……貧乳はステータスだッッッッ!!(洗脳済み)








































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