第4章1992年
第135話「春休み」
1月の選手権は団体は勝ち抜き戦で、当然私も涼子も高校生相手に負ける筈が無いので、すんなりと優勝してしまった。男子個人戦の方は優勝が私で、準優勝は鳥羽上だった、肥後匠は運悪く私と同じ山に居たので3回戦で敗退していた。
主将の鳥羽上は泣いていたが、過去の事を考えると気持ちは判る。
3年の澤崎達はこれで引退と言う事で、優勝旗を持って千葉に帰った後学校上げての祝が行われた。
「緒方君本当にありがとう、これで我が校の部活動も救われる事が出来ました」
普段あまり接点の無い校長から涙ぐんだ言葉を送られ、どうしていいのかよく解らない。他に何人もの大人から声を掛けられた、嬉しい気持ちより高レベルの私が高校生に混じって試合をする罪悪感の方が強くなった。
部活の体制は、主将は鳥羽上が継続して務め、副主将は相澤が就任した、私を副主将に押す声が上がって居たが辞退を申し出ている。
「次の目標はインターハイ優勝だ、その為には肥後匠が率いる神武館高校から3勝する必要が有る。聡志は誰と当たっても大丈夫だから、残りの2勝を俺達で取るんだ、俺自信は何としても肥後に勝つよう練習を取り組む」
匠と鳥羽上とでは地力に差が有る、私が対戦した感想なので必ずしも正解では無いのだが、今のままだと鳥羽上が匠とやって勝てるとは思えなかった。
女子部の方は主将は順当に千葉佐奈江で副主将は明星美奈子が抜擢された、3年が抜けた女子部の戦力はかなり厳しい物が有るだろう。県予選は涼子の力で勝ち残れるかも知れない、しかし関東大会やインターハイは難しいかもと思えた。
ダンジョン攻略は停滞している、札幌ダンジョン攻略の為に魔道士の育成が急がれるのだが、現在最もレベルの高い魔道士でも40代だ、レベル上限を突破するにはあの悪魔の薬を飲まないとならない。大変そうなので攻略はSDTFに任せてしまう事にする。
私達の攻略は、官舎でこれからの事をどうするか、森下を含めて3人で相談することになった。
「私は九州攻略をお勧めしたいっす、広島ダンジョンが攻略されて残りはミスリルの採れる北九州と福岡上級だけっすし」
「広島ダンジョン攻略されたんですか」
「そうっすよ、攻略したのはSDTFじゃ無くて公認冒険者の皆さんっすけど」
公認冒険者も上限突破した奴らが何人か居る、そのうちの数人は私がレベリングを手伝いもしたし、なんといってもあの薬を飲む根性が有るのだ、今更中級ダンジョンを攻略したとしても驚く事では無かった。
「和美さん他のダンジョンの攻略状況はどうなの?」
「とうとう富士ダンジョンの謎解きは終わって、ボス戦はすんなり終わったみたいっすね」
地下20階で謎解きがどうのと言ってた富士ダンジョンがとうとう攻略されてしまたらしい、謎のメッセージで富士ダンジョンを攻略せよなんて物が有ったが、何か新事実が発見されたのだろうか。
「石碑にはどんなメッセージが残されて居たのですか」
「そう言えば聞いて無いっすね、情報端末にも攻略したとしか更新されてないっす」
秘匿されたのだろうか、こんなもん現地に飛んで確認すればいいので一旦棚上げにしておこう。
「じゃあ横浜はどうなんです」
「御園班が攻略開始したっす」
とうとう関東の残り2つあで有る横浜に手を付けだしたか、新宿ダンジョンにもちょこちょこ手を出しているようだし、関東近郊は無事に生き残る事が出来るかも知れないな。
「新宿の情報ってどうですか」
「鹿島さん達が潜ってるって話は聞くっすけど、それだけっすね、情報端末には全く情報が共有されてないっすし」
首輪が無い事には新宿ダンジョンには入れないから、ここも私達では手が出せないな。
「攻略が後回しの香川と北九州を抜くと、残りは名古屋の中級と上級の2つよね」「札幌と難波もあるけど、私達じゃ手が出せないね」
「名古屋は今の所だれも入ってないっす、これから公認冒険者の方々が入るって話っすけど、いつから入るとは知らないっす」
「となるとやっぱり九州の上級に挑戦って事になるのか、流石に上級ダンジョンに挑むのは少し怖いね」
いまだどこの国でも上級ダンジョンを攻略したと言う話は聞いていない、上級ダンジョンを攻略した事によって不利益が有る可能性も否定は出来ないだろう。本当に勘弁して欲しいのだが、新たな上限突破薬が現れる可能性だって有る、今以上のおかしな薬を飲める自信が無い。
「じゃあ少しお休みするっすか、今日まで急いで来たからちょっとくらい休んでも罰が当たらないと思うっす」
「それもそうか、森下さん私と涼子が2年になるまでダンジョン攻略は休むって事で構いませんか」
「いいとも」
冬が終わるまで、ダンジョンに関しては様子見する事になった。
カウントダウン まわたふとん @apuro
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