第131話「閑話6 ど外道トリオ、絹の街から来た娘」
「君が聡志君なんだ、想像してたよりも可愛いね」
出会いの第一声がそれだった、思わず頬を染めてしまいそうになる美形で、スタイルも流石は女子大生と言った所か大人の魅力が有る、涼子や野田では立ち打ち出来そうに無かった。
「はじめまして、あなたは大島さんですか」
『鑑定』によって既に大島つむぎと言う名で、ジョブはウィップマスターと言う名の鞭使いらしい。
レベルは26なので平均的な公認冒険者よりはレベルが高い、稀に野田達と一緒にダンジョンに今でも潜っているのだろう。
「そうよ、聡志君が梨乃さんと深い関係に有るのって本当なの?」
「誰がそんな悪質なデマを流して居るんですかね」
「勿論梨乃さんよ」
口元に手を当ててオホホッと笑う、大島と出会った時期は千葉の中級ダンジョンを攻略してしばらくしてからだ。
大した用じゃ無くて梅雨入り前のジメッとした空気から逃れたいと、北海道に1人で遊びに来たから、偶然の出会いと言っても良いかも知れない。
「聡志君は犬と猫どっちが好き?」
2択を迫られたらどちらかを答えなければならないように思えて来るから不思議だ、基本的に動物は好きだが、この場合どちらを答えるのが正解なのだろうか。
猫と犬との好感度を比較した事は無かったが、大島が猫っぽいので猫と答える事にした。
「どっちも好きだけど、どっちかって言うと猫かな」
「それは良かったわ、私も猫が好きなの、だって猫って何を考えてるか分からないじゃない。そんな気まぐれな子が好きよ」
出会って5分で大島つむぎの危うさを感じ取ったが、大島は私の事をただの高校生だと考えて居る筈だ、女子特有の皆私を好きになーれ攻撃では私は怯まない、と思いたい。
「ここで何を?」
「空が見たくなって、授業を抜け出して来たのよ。聡志君は態々北海道まで何しに来たのかな」
「気分転換ですかね、むこうは湿気がすごくて、びしょ濡れの心を乾かしたくなったのかも」
私は何を言っているんだろうか、ポエマーの大島に乗せられて、恥ずかしくて赤面物の台詞を吐いてしまった。
「そうなんだ、じゃあ私と一緒だね、こんなに綺麗な青空なんですもの。きっと聡志の心も晴れるわ」
野田の喫茶店を出て、2人で外に出る。出かける先に当てなんて無かったけど、紙ヒコーキのように、空を求めて歩いて行った。
「聡志君何してるんですか」
運悪く2人で歩いている所を野田に見つかってしまった。
「散歩ですけど」
「ファーストイーターつむぎとですか」
「何ですかそれ」
「梨乃さん、それってただの悪口ですよ、根拠の無いただの噂です」
「その手は何なのかな、聡志君も初対面の女子大生と手を繋いでお散歩する趣味が有ったんですね」
全く無意識に手を繋いでいた、まさか大島には精神感応系のスキルが有るのではと、スキル構成を覗いてみたが見事に戦闘系のスキルしか所持していなかった。
「残念だけどねつむぎ、聡志君は既にお手つきよ」
「えっそうなんだ、見えないね」
小首をかしげられにっこり笑って自然に繋いだ手を離して行った、つまりつむぎは初物食いだと言うわけか、女性では珍しい性癖だな。
「と言う事はあのポエマー風味のキャラも作り物って事ですか」
「つむぎがポエム?そんな話聞いた事無いですけど」
そもそもだ、どうしてつむぎは私の事を知っているんだ、『鑑定』も無いようだし、何処かですれ違っていたか。
「梨乃さんが私の事、どういう人間だと思っているのか聞いてみたいです」
「少年の心に巣食う、性春の幻影」
「酷いです、そんな風に考えて居るなんて」
既に私から興味を失っている事はヒシヒシと伝わってくる、大島が泣き真似をしているがこのまま置き去りにして帰りたく成ってきた。
「野田さんはこんな所で何をしているですか」
「えー、それ聞いちゃいますか、実は・・・やっぱまだ言えません」
野田にも春が来たんだ、と私は本気で帰りたく成った。
私より一足先に泣き真似をしている大島を置いて野田は、約束が有るからと立ち去っていく。
私も一緒に連れて行って欲しかったが、万一野田の彼氏とばったり出会うのも面倒なので、大島の手を引いて、人目の無い場所に移動した。
「駄目よ聡志、そう言う事するには早すぎるわ。私達まだお互いの事名前くらいしか知らない物」
「あ、はいっ。そうですね」
泣き真似をする大島が衆人の視線を集めて居たから、人気の無い場所に来たので有って、大島をどうにかしようなんてコレッポチも考えて居なかった。
なんと言えば良いのだろうか、確かに高校生や中学生なら大島の魅力でイチコロなんだろうけど、流石にその攻撃は私には効かない、筈。
「もう大丈夫ですね、送って行きましょうか」
「どう、しよっか、なー」
的確に男子高校生の弱点を突いてくる、正直右手に当たる胸の膨らみが幸運過ぎるが、ここで手を出したらどえらい目に会う、童貞キラーの大島これまで会ったどのお姉さんキャラよりお姉さんさんだ。
「じゃあお姉さんが美味しいお昼ごはんを御馳走しちゃおうっかな」
「マジっすか」
その後大島さんに美味しいお昼ごはんを御馳走になって、帰ったとさ。
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