第130話「北海道中級ダンジョン攻略戦」
1991年の年末、レベルを75まで上げた私と森下、それにレベル73の涼子、小田切、野田、レベル72の英美里とターミン先生それにSDTFから借りてきたレベル80の鹿島を伴って、北海道中級ダンジョンの攻略に挑んでいた。
「玲央っち何で剣人さんが富士ダンジョンの応援なんすか、おかしく無いっすか」「私に言われても判りませんが、肥後さんが防御に優れて居るからでは無いですか、とうとう地下19階にまで達したそうですし」
富士ダンジョンは10階でボスに遭遇するのでは思われて居たが、あっさり10階は謎解きが終わり、現在19階で複雑な暗号を解きながら先に進んで居るようだ。
どのような謎解きが為されているか知らないが、謎を解く間、隊の安全を図る必要があり、防御に優れた肥後が応援に入っているようだ。
「剣人さんって今レベル幾つなんすか」
「70だと聞いてますが、それは10日も前の話ですよ」
「10日有ったらどれだけレベルが上げられるかって話ね、札幌中級でも粘ればレベルが2つは上るでしょ」
小田切が言うように10日間でレベルを2つ上げる事は、結構厳しいように思う、現時点でレベル80に至った鹿島は異常が過ぎる。
私のレベルの上がり具合からして、中級ダンジョンでこれ以上鹿島のレベルが上がる事は無いようにも思えた。
「和美さん、4階で休憩するの」
「それはしたほうが良いと思うっすけど、聡志君はどう思うっすか」
「私も休憩する事に賛成です、魔力は全快にしておきたいです、装備関係もフル装備ですね」
レベル70に成った時点で、勇者のスキルとして聖靴と聖篭手が手に入っていた。
聖靴は僅かな時間だが空を飛べる、聖靴と『加速』の複合効果は抜群に相性が良かったが今日まで使う機会があまり無かった。
札幌中級ダンジョン地下4階の敵なんてスキルを使う必要すら無くなっていた。
私のメインジョブで有る大賢者はレベル70で魔法攻撃無効のジョブを得て、魔法でダメージを受けなく成った。
チートクラスのスキルで、各ジョブにこのようなスキルが有るのかはもう全く分からない、私の『鑑定』では見通す事が出来ないからだ。
野田から聞いた大商人、レベル70で覚えたスキルは『クレジット』所持しているクレジットを消費して、敵にダメージを負わせるスキルだ。
試しに10万クレジットを消費して敵に攻撃させて見たら、レベル65のスケルトンナイトを一撃で葬った。しかし野田は2度とこのスキルを発動しないと宣言している。
森下のジョブは御者からパイロットへとジョブチェンジしていて、陸海空なんでも来いと言う感じらしい。
スキルの効果は、はぐらかされてしまったが、『 幻の多角形コーナリング』と『幻影走行』と言う名のスキルだとは教えられている。
英美里とターミン先生の2人に関しては新たなジョブの名前さえ知らない、2人は私達よりSDTFの隊員とダンジョンに潜る方が多かったので、詳しい話を聞けて居なかった。
テイマーの小田切は本人させも自分のスキルを正確には把握していない、ジョブは猛獣使いと言う物に変わり、指揮下における魔物の数が格段に増えたが、レベル70で得たスキル『幻獣』と言う物の使い方が分からないのだ。
「リュウ君ご飯何食べる」
「カレー以外なら何でも良いよ」
「カレーは駄目なの」
「ちょっと・・・ね」
レベル上げをしている間にバキューム広田と一緒に行動する機会が有った、その時さらにカレーにトラウマを抱く話を耳にしてしまった、暫くはカレーの姿を見たく無い。
魔力を回復しながら同時に全員に強化魔法を掛けて行く、効果持続時間も限界突破前より随分伸びて居て、事前に掛けて置く意味がより強く成った。
魔力が全快した所で問題の地下5階に降りて行く、これで元の花畑しか無かったら謎解きを始めなければならない。
5階には花は無かった、枯れて居たと言えば良いのか、以前訪れた時と同じ場所だと思うのだが、一面に咲いていて花は見る影も無かった。
「リュウ君、行くね」
涼子が飛び出していく、視線の端に私も僅かに捉えたのは、真っ白い巨大な蜘蛛の化け物だった。
おそらくアレがボスだろう、私が全員に警告を与えようとした瞬間、景色が代わり札幌の大通り公園の敷地に戻って居た。
「一撃っすか」
森下が確認してきたが、蜘蛛の化け物を認識していたのは、涼子の他に森下と鹿島、それに英美里だけだったらしい。
私は涼子に声を掛けられなければ蜘蛛の化け物の存在を、感知出来ていたのか自信は無かった。
「石碑っすね」
「アスフォデルスの花についての記述ですね、やっぱりラスダン前のダンジョンで採取出来るようです」
あっさりとだったが、札幌中級ダンジョンは私達の手で、攻略する事に成功した。
「ボス戦よりダンジョンの移動の方が時間掛かったね、エレベーターでも有れば良いのに」
「本当にそうっすよね、RPGだったらありがちなポータルが無いのが辛いっす」「御者のスキルに有ってもおかしく無いかもですね」
何かのジョブにはそういったスキルが有ってもおかしくは無いが、私には知らされて居ない、SDTFに秘匿されると調べようが無いから考えるだけ無意味だ。
「北海道もこれで上級ダンジョンだけに成ったっすね」
「すすきのダンジョンでしょ、結局私場所も知らないよ」
英美里の紹介無しでは中に入れなかったから、まだ私や涼子は確認していなかったが、森下は場所の特定を行い中に入っている筈だ。
「今はあの風俗ビルSDTFが買い取ったって聞いて居るわよ、オーナーも逮捕されちゃって、シンパの一つが潰れたって、昔の仲間から聞いたわ」
なんで英美里が風俗関係のビルに出入り出来たのかと思っていたら、どうもそのオーナーが過激派のスポンサーだったようだ。
鑑定能力も上がった事だし、一度札幌上級ダンジョンを覗きに行くかと、移動する事にした。
「攻略推奨レベル65、6人PT限定、魔道士必須みたいですね」
野田にダンジョンを鑑定してもらうとそこまで読み取れた、新宿ダンジョンのように入場するために特別なアイテムが必要な訳では無いらしい。
「魔道士って私じゃ駄目って事ですかね」
「どうかしら、試しに入ってみる?」
小田切が意外な提案をしてきた、推奨レベルが65なら出入りが制限されてないなら、入って見ても良いかとも思う。
しかし今ダンジョンを攻略したばかりで、ボスは一瞬で討伐したとは言え、やはり疲労も有るから中に入る事は辞めて置こうと言うことになった。
札幌上級ダンジョンには、私達が中級ダンジョンを攻略したと伝えたその日に、攻略隊の面子を変えて何度か中に入ろうと試したようだ。
中に入れるのは6人PT限定、5人でも7人でも中に入る事は出来なかったし、PT内に魔道士が居ないと6人PTでも弾かれてしまうようだ。
現状魔道士で高レベル帯の冒険者は居ないようで、魔道士がレベリングと限界突破を終わらない限り中に入る事は無いと言う結論に達した。
後日私と涼子と札幌に暮らす野田達4人で中に入ろうとしたが、やはり弾かれて閉まった、大賢者じゃ魔道士の代替は出来ないらしい。
「聡志君この後どうするっすか」
官舎の一室で森下から今後の方針を問われた。
「どうするって何がですか」
「ダンジョンっすよ、ダンジョン」
「横浜の中級に入るか名古屋の中級に入るか、難波の上級くらいしか選択肢が無いですよね」
本当は新宿の上級ダンジョンに入りたいのだが、龍の首飾りが無い為、私達は入れない、SDTFが1層目だけでは有るが入って居るらしいが、誰が入っているかまでは知らない。
鹿島玲央のレベル80と言う飛び抜けたレベルに達したのは、1層目でレベル上げをしているのでは無いかと勘ぐっている。
「難波の上級は私達が入るのは難しいっすよ、なんせ必要PTが20人っすからね」
20人はMMORPGのレイド戦だ、私には余り馴染みの無い戦闘だし、現実世界で20人が同時攻撃なんて出来る物なのだろうか、推奨攻略レベルが分からないが、私達とは相性が悪そうだ。
「和美さん、推奨レベルは?」
「60っすね、日本じゃ一番レベルの低い上級ダンジョンっす」
「福岡と名古屋の事も判っているんですか」
「福岡は札幌とおんなじレベル65っす、名古屋はレベル70で、残りの中級ダンジョンが攻略すると、難波の上級ダンジョンを一気に攻略する予定っすね」
とうとう上級ダンジョン攻略の道筋が見えて来た、光が一切見えない闇の中だったのが、生き残る未来がようやく・・・。
「それじゃあ、福岡の上級ダンジョンを候補に入れても良いかも知れませんね。SDTFでは誰か福岡上級に入った人が居るんですか」
「柴田班が入ったみたいっすよ、レベル制限以外には他の制限は無かったみたいっすから、私達に向いてるかも知れないっすね」
柴田班は普段北九州に有る中級ダンジョンでミスリルを掘っているが、限界突破薬騒動の時にレベリングと限界突破を強制的にやらされてるから、最低でもレベル65には至っている。
「レベル制限は幾つなんですか」
「65っすね」
「つまり限界突破をしなければ中に入れないって事ですね」
「そうっすね、1層を少し回って出て来ただけみたいっすけど、すんなり外に出られたし、支店に飛ぶ事も出来たみたいっすよ」
正月明けにちょうど、剣道の全国大会が福岡で開催される、団体戦は私と涼子を抜いたメンバーで全国大会出場を決めて居たし、個人戦はインターハイ優秀者と言う事で予選を免除され本線トーナメントの第1シードに入れられて居る。
「人数制限も無いなら、覗きに行きましょうか。私と涼子が福岡で試合をしますので、その辺りで日程を調整しましょうか」
「じゃあ梨乃っちとイッちゃんには連絡入れとくっすね」
1991年はダンジョン攻略と共に終わって行った。
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