第25話「裏盆」

 涼子が飛ぶと言った次の瞬間には、涼子の家の前に到着していた。人通りは疎らだがひと目が無い訳では無い、それなのに突然現れたはずの私たちに注目している人が1人も居ないのだ。

 通行人が無関心なだけなのか、スキルの影響なのかは判断が難しい所だ。しばらくその場で動かずに居ると、涼子の家の玄関が開き涼子の母美智子が、ごみ袋片手に家から出てきた。私たちと目が合っている筈なのだが、まるでそこに居ないように振る舞う美智子に、私の方から声をかけてみた。


「ただいまおばさん、帰ってきました」

「あらあなた達いつの間にそんな所に、おかえりなさい二人とも鎌倉は何か変わって無かったかしら」

「なんだか駅前にビルが建ってたけど何ができるのかは知らないよ」

「そう今年は母さんの所に顔を出せって急に言われてね、でも光司さんのお義母さんあまりいい顔しないでしょ。どうしようか迷っているのよね」


 涼子の家庭の話を聞いて居たくはないので早々に切り上げて私は実家に戻る、涼子自身がどう思って居るのかは分からないが、涼子の父光司の実家に積極的に尋ねたいとは思わないだろう。

自宅に戻ると紀子からのお土産は攻撃にあって、買って来る暇なんて無かったから無いと言い切ると、どうして攻撃に移って行ってしまった。どうにか母の執り成しのおかげで、逃れる事は出来たが埋め合わせをしないと駄目だな。


 13日の午前中、涼子達は母親の実家に帰るようで車で出かけて行った。帰ってくるのは16日になるだろうと言う事なので、それまでは涼子の目を気にする必要が無いのだが、うちも午後から千葉市にある祖父母の家に出かけるので、結局盆中は何も出来ないと言う事になった。


「お兄ちゃん立花の家でテレビ見れるかな」

「どうして?」

「あのね、奈々子ちゃんがテレビに映るかも知れないんだって」


 奈々子って誰よと思わず聞いてみると、紀子が小学校で初めて出来た友人の事らしい。


「聡志知らないかな役場の福祉課で窓口に座っている東山さん所の奈々子ちゃん」


 福祉課の東山?ああ税務課の課長だった東山さん所のお嬢さんか、2,3度挨拶した事があったが、紀子の同級生だって話は聞いた覚えが無い。東山さんが退職した頃は、まだ奴らの侵攻前だったように記憶している。


「なんで母さんが健康福祉課の人知ってるの?」

「えっ健康?福祉」


 まずい今はまだ存在しない課の名前を出してしまった、このころは福祉課と言う名称だったか。


「役場の部署なんて知らないけど、何で母さんが知ってるのかなって」

「聡さんの病院とも関りがあるでしょ、だから福祉課の人とはお歳暮やお中元を贈り合ってるのよ」


 ああ歳暮中元か、公務員でもまだこの時期だと送り合っていたのか、完全廃止になったのはいつだったか覚えてないが結婚した当時にはもう禁止されて居たと思う。


「その東山さんちの奈々子ちゃんが、どうしてテレビに出るって話になるの?」

「チャリティーコンサートでピアノを弾くんですって、それがもしかするとテレビに映るかもしれないって事で大騒ぎよ」


 この時期にやってるチャリティーTVか、まったく興味が無かったのでこれまでの人生で一度も見たことが無いのではなかろうか。


「時間が分かってたらビデオに録画出来るのにね」

「奈々子ちゃん所は朝から晩までずっと録画するんだって」


 母の実家に向かう間、徹は助手席で一言も話さずにじっとしていた、徹は乗り物に弱い質で長時間車に揺られる里帰りを苦手にしている。それに反して元気いっぱいの紀子は、車中話っぱなしで相手をさせられる事になった。


幸い渋滞に左程巻き込まれず、1時間ほどの所要時間で母の実家千葉市の秋葉台に到着した。私たちの到着を待ち構えて居た祖父母の歓迎を受け、紀子はさらにはしゃいでいたのだが、徹はいつもの如く寝間で横になっていた。

 母の実家である立花家は日本家屋の古民家で、ほとんどの部屋が和室となっている、下水道が出来た時に水回りと、叔父の部屋、応接間を改築して洋室に変えて居たが私たちが、寝泊まりすることになる座敷も当然のように和室であった。


「姉さんお帰り」

「陽一あなた今日休みだったの?」

「会社は辞めたんだ、今は自営業の真似事をしてるこう見えてもそれなりに忙しくて聡志お年玉は期待してもらっても良いぞ」


 母は叔父の態度に安堵感すら漂わせ「よかったじゃない」と言って祖父母の元へと行ってしまった。


「叔父さんの勤めてた会社ってどこだっけ?」

「東西不動産、姉貴は随分嫌ってたけど金払いだけは良い会社だったよ」


 聞いたことが有るような・・・あそこか、社長が生放送中に自社ビルの屋上から飛び降りて、地面に当たって弾ける所まで映されたあの伝説の地上げ屋。


「鈴原剛掌」

「聡志がなんで専務の名前を知ってるんだ?あの人そんな有名人じゃ無いと思うんだが」

「辞めて良かったんじゃない叔父さん、あそこ、ごりっごりの地上げ屋だよね。なんであんなところに入社したの?叔父さんならどこでも入れたでしょうに」


 他人事ながら勝手な事を言っている自覚はある、バブル崩壊後民事は元より法改正され刑事でも立件されそうになり、社長の鈴原がビルから飛んだのだが、現時点ではまだ専務らしい。


「社長の悠木ってのが大学時代の後輩でな、色々世話になって断れなくなって入社したんだよ。これでも幹部候補生だったんだが不動産業界に見切りをつけてな、泥船から一足先に降りさせてもらったと言う訳だ。近々大蔵省から不動産融資総量規制ってのが出されるって噂だし、土地は辞めて株で一儲けしようかと思ってな」


 土地の規制はバブル経済崩壊の引き金だった、この時期叔父にまでその情報が下りて来ているとは思わなかったが、どうやらこの世界線でもバブル崩壊は既定路線なようだ。


「株ってもっと危ないように聞こえるけど」

「まあ素人が手を出したらヤバイだろうけど、俺には怪しい情報を持つ悪友が五万と居るからな。西芝電算株、来年までその名前を憶えていたら面白いニュースが聞けると思うぞ」


 甚八と組んで仕手戦で一儲けしようと企んでいたのだが、叔父にまでその情報が出回っているとなると、儲けは期待できないところか尻ノ毛まで毟り取られて終わりそうだ。


「叔父さんも西芝のココム違反のネタ掴んでたんだ、やっぱり株はダメだね」

「聡志・・・それ何の話なんだ・・・俺が仕入れた情報は西芝電算がDRAM開発に1000憶の投資を行うって情報だったんだが・・・ココムってCOCOMの事だよな西芝が共産党と繋がってるなんて話初めて耳にしたぞ」


 どうやら私は早合点し、叔父の掴んで無い情報をペロっと口にしてしまったようだ。叔父が掴んだ1000憶の投資話は、初冬には発表され株価が一時的に高騰する、その機会に空売りしココム違反の話が流れたタイミングで買い戻す算段だったのだ。


 叔父にしつこく誰から聞いた情報で、何で私が剣道だけじゃなく株にまで詳しいのかと詰め寄られた。やり直し前も世話になった事は事実だし、叔父の懐が寂しくなると小遣いやお年玉が減るだろうと、あらましだけは説明する事にした。


「何で西芝が共産党にそのメモリーを横流しする必要が有るんだ」

「共産じゃなくて社会党って事になるのかな、メモリーを横流す理由はDRAMの開発が失敗しそうだって話。叔父さんはパソコンには詳しい方?」

「使っては居るが中身はさっぱりだな」

「そう、じゃあ分かりやすく言うと、日本で使われてるパソコンのCPUは、アメリカ製の物と比べると一世代前の物らしいんだ。それで西芝が開発しているDRAMは、新しい世代のコンピューター用でノウハウや特許が全く無い。そのノウハウと新たな特許を得るための資金が1000憶円だったんだけど、どうもね1000憶じゃ足りなかったみたい。それで新DRAMの情報と開発資金の追加の為に、ソ連にメモリーを売るって話になったみたい。今は商社を使って、国内のメモリーを片っ端からかき集めてるみたいでさ、その情報がパソコンマニアの間で回ってるんだって」


 パソコンマニアの間で回って居るのは、商社がメモリーをかき集めているという情報だけで、ココム違反云々の話は私が未来的な知識で知った情報な訳で。つまり直接利害関係の無い人物で、ココム違反の事を知る人物は、甚八の他にはここに居る叔父しか知らない事になる。

 違反に係わっている連中や、インサイダーを取り沙汰される連中から情報が漏れ出すのは、事件が表ざたになる直前の事だろう。


「聞きかじりの知識だから信用しない方が良いよ叔父さん、でもそういう噂が流れてるって事知ってるだけでもだいぶ違うんでしょ。叔父さんが他で情報を調べるのは良いんだけど、ココム違反の話は出来るだけ隠して情報収集してほしいかな。年末に大規模な仕手が行われるって言う話なんで、叔父さんからその情報が漏れたとなると色々まずそうだしさ」


 叔父がこの話を広めると旨味が無くなるので、情報漏洩をやめるように忠告しておいたが恐らく無駄だろうな。

 誰にその情報を持って行くかしだいだが、広まる時には広まってしまう、元々濡れ手に泡だったのような儲け話、仕手が駄目なら他の情報で稼ぐだけだ。

ダンジョンから奴らが溢れて来るまでには余裕が出来たし、二十歳を超えれば自由になる金も桁が変わる、それこそ大規模に馬で大穴を狙っても良い。


「そう言われるとますます信ぴょう性が増すように聞こえちまうな。でも俺と聡志の情報で冬に1000憶の投資話が持ち上がる事は共通している。それまではこつこつ少数の株を買い集めて、情報が公になった瞬間売り逃げする事にするわ・・・うんそれが一番無難だな、欲をかいちゃ駄目だ」


 叔父は自身に言い聞かせるよう、最後の言葉を呟くと勝手に納得していた。叔父はその他にも東西不動産時代に手に入れた埋立地の土地の権利を持ち合わせていた、今はまだただのゴミ捨て場だが、それが大化けして叔父の株での失敗の尻ぬぐいをしたのだろうと思われる。


「どうやってその埋立第13号地の土地を手に入れたの?」

「債権者から債権を買い取ったんだ、あそこの土地で博覧会が行われるって言う情報が流れて公募が始まったんだが、いまだ博覧会の音沙汰が無くてな 13号の土地を担保に金を借りてた所が飛んだって言うのが顛末なだ」

「よくその債権を買い取れる金があったね」

「そこはまあな、たとえゴミ捨て場だとしても東京にある1万平米の土地が、僅か300万で手に入ったんだ悪くない取引だと思わないか」


 悪くないどころの騒ぎではない、将来的にはタワーマンションでも建てれば左うちわで暮らせる事だろう。その他にもいくつかの土地と建物を所有しているようだ、その多くは東西不動産勤務の間に買いあさった物で、はっきりと言えば職権乱用で条件の良い物件を安値で買いたたいて居たらしい。


「つまり叔父さんは不動産の不労所得で独立したって事で良いの?」

「大家業をやってるから不労じゃないぞ、とは言っても管理運営は本職の不動産屋にまかしてるけどな」


 どこの業者かと思えば、地元の堅実な不動産屋で、東西不動産とは縁もゆかりもない所だった。東西に任せないのかと嫌味で問うと、あんな頭のおかしい会社に任せる訳がないだろうがと叱られた。叔父との会話が終わったのは、夕飯が出来たと呼びに来た紀子が叔父の部屋に入って来たタイミングだった。


 夕食の最中、母から十和子の所で剣道を習い県大会の個人戦で優勝したと言う話が出た所で、祖父から此花神社で行う神事に誘われてしまい断りづらい雰囲気を醸し出されてしまった。


「十和子さんの所で剣道を習うなんて正気を疑うぞ、あの人のしごきは尋常じゃ無いからな」

「叔父さんまでそういう事を言うんだ、付属の大橋先生も同じような事を言ってたよ」

「大橋って保の事か、あいつも十和子さんからはかなり目を付けられてたからな、そう言うのも尤もだ」


 叔父も大橋もかなり悪戯をするタイプの子供だったようで、生真面目な十和子とは性が合わなかったらしい。大橋と言えば涼子の母親から、付属の事を聞くよう言われてた事を思い出した。


「ある人から聞いて欲しいって頼まれたんだけど付属ってさ、中に兄姉が居ると弟妹は入りやすいとか枠があるって言うのは、本当の話なのかな」

「有るんじゃないか、ただ多額の寄付金をしてる家とか、親子代々とかそういう古い家だけだろうな、ぽっと出の俺や聡志じゃ難しいだろうな。この先聡志が剣道の大会で優勝したとか、国際大会に出場したとかなると、聡志の子供は無条件で入学できるかもな。紀子とは年が離れているから、インハイで活躍したら中等部から入る事は出来るかも知れん、紀子が態々千葉まで通うと言い出さないとは思うが」


 つまりは宣伝効果次第では、涼子の弟浩助も付属の門を潜れる可能性があるって事か、私が高校で活躍するよりも涼子が無双する可能性の方が断然高い。高校在学中に全日本選手権で優勝するなんて事も、あながち無い話では無いだろう。


「来年は家が氏子総代で神社の行事に参加しないとならなかったが、聡志が手伝いに来てくれるとなると大助かりだな、正月三箇日は空けて置けよ。お年玉分はきっちり仕事をやるからな」


 来年の話をすると鬼に笑われるのだが、すでに正月の予定はがっつり確保されてしまった。そんな話も出たものだから翌日墓参りを終えた私たちは、ついでに此花神社へと参拝することになった。


「叔父さんがここで剣道やってなんてらしくないね」

「若さゆえの過ちって奴だな、道場で自分の才能の無さを思い知らされたよ。しかし聡志に剣道の才能ねえ、義兄さんには勿論無さそうだし、姉さんだって俺よか多少ましって程度の運動神経だったから誰に似たんだか」


 安心して欲しい、私にもやはり才能なんて物はかけらも無かった。私に有るとするならば折れない覚悟と、努力することに躊躇が無いって事だけだろう。

 私の力の諸元はレベルと勇者ジョブの補正効果なのだろう、それが無ければさすがに優勝なんてものは夢物語だった。




「君、緒方君だよね、緒方も奉納試合の稽古に呼ばれたのかい」


 叔父とたわいもない会話をしている所で、声をかけて来たのは、付属の魁皇だった。今日はあのおかしなマネージャーは居ないらしいので、少し話をしてみる事にした。


「全然別口、祖父が来年氏子の役員だとか何かで挨拶がてら冷かしに来ただけ。奉納試合って剣道の試合をここでやるの?」

「奉納試合は秋のお祭りの時にやるんだけど、中学生で出るの僕だけなんだ、それで緒方君も出てくれたら心強いんだけど駄目かな」


 ダメって事は無いがそもそもその祭り何時やってるんだ、子供の頃に参加した記憶があるがそんな物40年も前の話で全く覚えちゃいない。


「聡志友人かい」

「ああっと、叔父さんが入らなかった付属で剣道やってる魁皇薫君、私と一緒の2年生だから高校に入ったら一緒に剣道をやる予定だよね」

 

 魁皇を紹介するとペコリとお辞儀をして簡単な自己紹介をしていた、中学生にしては出来た子だ、おかしなマネージャーに惚れられるだけの事は有る。


「史彦さん所のお孫さんか、お母さん元気?俺はこの聡志の叔父で立花陽一。君のお母さんとは小学校と大学で同窓だったよ」

「立花さんって事は大橋先生の」

「そっか保が剣道教えてるんだったな。まあ俺たちは近所の幼馴染って所だ、残念ながら聡志が奉納試合に参加する事は難しいだろうな、平日だし聡志の住む東兼からは距離もある、聡志の母親は祭りで子供を休ませるタイプでもないしな」


 祭りは11月の23日に行われているらしい、何でその日なのかは知らないが昔からそういう物らしい。


「残念、でも今なら練習くらいは参加出来るでしょ、予備の道着も防具も有るからやってかない?」

「いいんじゃないか正月前の顔見せって事で、どうせ奉納試合に参加してるのなんて氏子の連中なんだしさ保は・・・来てる訳ないか師範も保には厳しかったしな」


 知らぬ間に奉納試合の練習に参加させられてしまう事になった、魁皇以外の参加者は年配者が多い。かつて此花流で学んできたお歴々なのだろうが、如何せん年が行き過ぎて居て、まともに動けそうなのは2人ほどしか居ないようだ。


「助かったよ緒方君、大人しか居なかったからどうしたらいいのか分からなくて」 


 それはそうだろうな、私だってこんな中に入りたくは無かった、魁皇と練習できるのは有難かったが敢えてここで行う必要は感じない、若い私たちが注目されて言る事は感じ、やりにくくて仕方ない。


「聡志で良いよ魁皇君」

「そうなのじゃあ僕の事も薫で良いから。聡志君って落ち着いてるね僕ここに初めて呼ばれた時大人ばかりで落ち着かなかったから」


 確かに緊張はしていないが場違い感は感じて居る、地元の人間でも無いのに神事に参加している事が座りが悪い。周りの大人たちは私の事は知らずとも、祖父母や母や叔父の事は知って居るのだろうけど。


「練習って何をやるのかな」


 着替えの場所に案内してくれる間に練習の内容について確認する。


「掛かり稽古か地稽古だよ、遊馬さんとやる時だけは打ち込み稽古みたいな事もするけどそ、れは僕だけかな」


 遊馬と言うのは30代の青年で元高校剣道部部長、子供の頃は此花流の道場に通っていたが、剣術を習っていたわけではないそうだ。大学でも剣道を行っていたらしいから、本来中学生が相手に出来るような選手ではない。


「薫君でも勝てない?」

「絶対無理だよ、鳥羽上先輩だって勝てないんじゃないかな、選手権にも出場したって聞いたし」


 選手権と言うものが分からなかったが、剣道の大会である事には違い無さそうなので、生返事で相槌を打っておいた。着替え終わり防具も一通り装着した後、いよいよ練習と相成った。


「じゃあ最初は聡志君が打ち込んで来てよ僕が受けるから」


 真剣勝負の地稽古では無く、打ち手と受け手に分かれての掛かり稽古を行うらしい、隙を見せないよう構えて居る面から順に、小手胴と打ち込んでいったが、何とか竹刀で防ぐ事には成功していた。

 大会で対戦した時よりも一段成長しているように感じた、しかしそれより私の方が二段も三段も成長していたようで、まともに攻めると練習にならない。今なら達也とやっても楽勝で勝てそうだが、慢心はよくないな。


 攻守の交代で次に私が薫の攻撃を受ける、大会では分からなかった事だが、薫打ち込んでくる場所が事前にわかる気がする。

 これが勇者の力なのか、レベルが上がった恩恵なのかは判別出来ない、もっとも薫では相手にならない事は完全に把握した。


「聡志・・・はぁはぁ・・・君・・・はぁはぁ・・・大会の後に亀の甲羅でも背負って特訓した?レベルが10くらい上がった感じがするよ」


 惜しい残念ながら私が上がったレベルは二つだけ、10も上がって居たらそれはもう人と言う枠組みではいられないのでは無いだろうか。いずれそんな日が来るかも知れないが今は考えないでおこう、少しでもダンジョンを削れれば生き残れる確率が上がる。


「特訓は盆休み明けから始めるつもりで今は自主練って所かな、そう言えば薫君達関東大会はいつからだっけ」

「もう終わった後だよ、全国大会が24日から始まるから個人戦のプレ大会の関東大会とぶつかるんだ。だから付属生は辞退したんだけど聡志君なら関東大会優勝できそうだね」

「それはどうかな、達也さん並みの選手とぶつかったら負けるかも知れないよ」

「うちの部長クラスの選手なんて関東には居ないと思うよ、本場は九州だし北海道に一人すごい選手が居るって話だから全国大会は大変かもね」


 息を整えている間に雑談をしていたら、30代の出来る方の選手遊馬が私の相手をしてくれるという話になって、道場の真ん中で相手になってもらう事にした。



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