その鬼の意味は
「俺は
「なるほどの……! 地獄というからなにかと思えば、つまりはここがお主ら鬼の
広大な半円状のホールの中、闇の中から湧き出るようにして現れた褐色金髪の引き締まった
「お、
「アーハハ? アレレ? なんか君、もしかしなくてもすっげえカワイイね? そうビビらないでよ。ここに俺が来たのはアンタらを殺しに来たんじゃなくて、昔使ってた入り口がまだ使えるか見に来ただけだからさァ」
先日の
六業はその立ち姿こそ緊張感の欠片もなかったが、全身から放つ
「呑まれるな! 覚悟を決めよ新九郎っ!
「俺は
「はァ? 猫チャン? 俺がァ?」
未だ強敵との戦闘経験が少ない新九郎を庇うように、
奏汰の発したその問いに六業は驚いたように口を開けると、目を逸らして何かを考え、首を
「アーアー……なるほど、そういうコト? そこの奴、古すぎてぶっこわれてンのか。まだ使えそうなら使ってやろうかと思ってたけど、こりゃ無理かなァ?」
「なにをごちゃごちゃと言っておる! 来ぬのならこちらから行くぞっ!」
「アーッ! 誤解! 誤解だって! 猫チャンは俺も好きよ? 痛めつけたりするわけねェじゃん? 猫チャンをやったのは俺じゃなくて――――ソイツだよ」
「っ!?」
瞬間、赤い閃光が奏汰達の後方から奔った。
その閃光は奏汰達の横。四の十六が立っていた場所に
「あ、あ……?」
「四の十六!?」
奏汰達の横に立っていた四の十六のさび付いた巨体がゆっくりと地面に崩れ落ち、重々しくもどこから軽い、甲高い音が響き渡る。
四の十六の分厚い胸の中央には、
「っ……仲間じゃ、ないのか!?」
「ンー……仲間っちゃ仲間なんだけどねェ……。まあ、意味合いが違うのよ。でもさ、なんで俺に怒ってンの? そいつが猫チャンになにかしてたンじゃねーの? ま、別にいいけど」
「この……野郎っ!」
「待つのじゃ奏汰よっ! ――――すでに囲まれておるっ!」
奏汰は倒れ伏した四の十六に即座に駆け寄ろうとしたが、そんな奏汰の腕を凪は掴み止めると、周囲への警戒を促す。
見れば、すでにその場の全方位から六業のものと全く同じ、無数の縦に割れた赤く輝く瞳が闇の中で奏汰達を捉えていた。
「やるぞ奏汰、新九郎っ! 固まっておってはまずいのじゃっ!」
「くそっ! やってやるよっ!」
「は、はいっ! 徳乃新九郎――――参りますっ!」
凪と奏汰、そして新九郎の三人が凪の指示で三方へと弾かれるようにして散るのと同時、
「俺は
闇の中、降り注ぐ熱線から逃げ惑う三人を見て余裕の笑みを浮かべる六業。
凪は俊敏に宙を駆け、新九郎は地面をめまぐるしく駆け回りながら目にも止まらぬ剣捌きで熱線の直撃を逸らす。
「くっ! まずいのじゃ! ここではたしかに地の利は奴にある!」
「うわわわ! ちょ、ちょっと!? あのー……これっていつまで捌けばいいんでしょうっ!?」
しかしいつ終わるとも知れないその熱線の雨に、やがて避けきれなくなった凪はついに自身の周囲に結界を展開し、新九郎は僅かな物陰へと逃げ込む。しかし奏汰は――――。
「調子に乗るなよ……っ! 竜巻――――勇者キイイイイイイイック!」
「ハァ?」
その時、自身に降り注ぐ全ての熱線を凄まじい超高速回転で弾き飛ばした奏汰渾身の跳び蹴りが、六業の引き締まった腹筋に突き刺さったのだ。
「オギャアアアアアアッ!?」
「うおおおおおおおおおッ!」
たった今この場に降り注いでいるのは、分厚い鉄板すら容易く貫通する威力の熱線だ。そんな物を回転の勢いだけで無効化して突っ込んできた奏汰の蹴りは、そのまま六業の体を木っ端微塵に打ち砕いた。しかし――――。
「っ!? 手応えが!?」
『オイオイオイオイ……なんなんだァ、コイツは……? 聞いてねェよ。剣奏汰ってこんなヤベェ化け物なワケ? これさ、もしかして俺よりアンタの方が全然バケモノってオチなんじゃねーの?』
奏汰の蹴りは完全に六業を捕らえていた。六業もまた、その威力に為す術もなく粉砕された筈だった。しかし、砕け散った筈の六業の声が、今度はホールの中の全方位から奏汰達の耳に響いてきたのだ。
『――――でもさァ、それならそれで俺も簡単には負けられねーんだわ。
その言葉と同時、薄闇の中に沈んでいたホールに光が灯った。
どこまでも白く、無機質なその光はホールを隈無く照らし出し、その滑らかで傷一つない壁面をはっきりと浮かび上がらせる。
そしてその光の中、出現した異形――――。
『ンじゃ……続き、やろうか?』
それは、広大なホールの天井すれすれまでその巨大な頭部をもたげた一匹の巨大な黒い蛇。そしてその周囲にわらわらと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます