Episode:14 High priestess
今日は特注の馬車が完成する日だ。カリストが引けるようにカリストの胸あたりに巻けるようにしてある布と綱が馬車につないである。この場合は熊車になるのか?まあ、わかりにくくなるだけだから馬車でいいや。カリストの速度、パワーに耐えられるように丈夫な素材を使ったり、急停車しても馬車が壊れないようにしたりと、いろいろ大変だったらしい。500万ほどかかった。億に行かなければ安いという考えになっているのが少し不安だ。楽しみに思いながら朝食を食べていると、モナが気になる話をしていた。
「この間の討伐部隊が帰ってきたようですよ。討伐自体は無事に成功したらしいです。この街の
「そうか。わかった。気にかけておこう。」
そんな会話から数分後、朝食を食い終わったあたりで、教会からの迎えが来た。こんなにすぐか。馬車は楽しみだったが、ローズに受け取ってもらおう。モナは賢いし、暗殺系の知識もある。ついて来てもらったほうが良さそうか。ついていかないという選択肢はない。どうせ避けられぬ接触なら、懸念は早めに潰しておきたい。
ローズを伴い、教会へ向かう。迎えの人は余計な問答は不要とでもいうように、一切話しかけてこなかった。無言で先導されるとこちらも話しかけづらい。結局、ほぼ無言のまま教会へと到着した。教会は辺境都市という大都市にふさわしい、荘厳な石造りの教会だった。
「ようこそおいでくださいました。偉大なる魂を持つ男、メメント・モリを体現セシ者よ。いろいろと疑問はあるかと思いますが、まずは聞いてください。」
女教皇は思いのほか誠実な対応をしてくる。あちらに敵対の意思がないのなら、こちらとしてもありがたい。とりあえずは話を聞いてみることにしよう。
「我らがエンデール教会では、神による導きに沿い、人の世を救済するという大いなる行動原理のほかに、もう一つ役割を持ちます。この役割は口伝によって歴代
「なるほど…。胡散臭い、非常に胡散臭い話ではあるが、残念ながら心当たりがある。ちょうどそろそろこの街を出る予定だったし、王都にも興味があった。初めに目指す予定ではなかったが、王都に行ってみることにする。」
「良かった。ではお気をつけて。教会としても少しの協力はできますが、何かご入用なものはありますか?」
「特にない。が、俺がこの街を出た後、少しだけ俺の知り合いの力になってくれると嬉しいかな。」
「わかりました。ではそのように。」
「ああ。興味深い話だった。ありがとう。」
教会を出て、宿に戻る。ひとことでいえば胡散臭い話だったが、あまりにも俺の状況に似ていた。メメント・モリを体現セシ者が死を経験したものを表すとすれば、魂が炎に宿ったフェニクスはまさにメメント・モリを体現セシ者だろう。しかしこの伝承を残した意図がわからん。王都に行けばわかるのだろうか。
宿に戻り、馬車の具合を確認。
「カリスト、動きにくくないか?」
「グゥゥルフ!」
「なるほど。重いとか、そういうのは?」
「グフ!」
カリスト的には問題なさそう。乗り心地の方は、普通の馬車とそこまで変わらないだろう。カリストは力持ちだから、馬車部分は大きめ。荷物を多く載せられるので、大抵のものは持っていけるだろう。
「一週間ほどしたら、王都方向へ向かおうと思う。この一週間は荷造りに当てる。資金は十分だから、護衛任務は受けなくていい。保存食なんかは最小限にして、狩った魔獣を積み込むスペースを少し残しておこう。」
「了解です。」「わかった。」
水分を多めにして、保存食は少なめ。武器のメンテナンスのための道具や料理に使う香辛料、テントに替えの服など、考えられるものはたいてい買って積んでおいた。最悪、自給自足でも生活できるから忘れ物をすると死ぬようなことにはならないが、今回は訓練ではなく旅だ。旅である以上、快適に過ごしたいから、結構念入りに持ち物チェックは行った。モナは道具さえあれば基本何でもできる万能人間なので、道具さえあれば料理から手入れまでしてくれる。今の状態のモナを買おうと思ったら、いったいいくらするのだろう。俺なら億は出す。エンデールからの旅立ちのお供はは、そんなくだらない想像だった。
いずれ、またこの都市に戻ってくることがあるのだろうか。それはきっと神すらも知らないのだろう。小さくなる塀を見て、俺はほんの一瞬、そう思った。
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