第84話 思わぬ繋がり

「レオン…………あれ? レオンって聞いたことあるぞ……も、もしかして、レオンってあのレオンか!?」


 あのレオンってどのレオンだ?


「あのレオンと言われてもわからないのですが?」

「レ、レオンは、平民だよな?」

「はい。そうですが……」

「マルセルを知っているか?」


 え? マルセルさん? ロンゴ先生ってマルセルさんの知り合いなの!?


「ロンゴ先生はマルセルさんを知っているのですか!?」

「やっぱり知っているのか……ではお前が…………」


 そこまで言ってロンゴ先生は、少し困ったように顔を顰めてしまった。何か悩んでいるようだ。

 何だろ? うーん、もしかしてロンゴ先生は、俺が新しい魔法具を作ったことを知っているのか? マルセルさんとかなり仲が良いのなら、マルセルさんが頼ったってことも考えられる。

 それなら、それを話していいのか悩んでるとか?

 俺が魔法具を作ったことは、マルティーヌは知っていたし多分ステファンも知ってるだろう。リシャール様にも話したからリュシアンも知っているだろうか? まあ、もし知らなくても教えても構わない。三人は俺が全属性なことを知っているしな。


 でも、本当にロンゴ先生が知っているのだろうか? マルセルさんなら隠そうと頑張ってくれそうだ。それでも、隠しきれずに気づいたってことはあり得るよな。

 今思えば、あの魔法具を作ったことはかなり危険な行為だった。あの時はお金を稼ぎたくて後先考えてなかったから……マルセルさんにめちゃくちゃ迷惑かけてたかも。


「ロンゴ先生は、マルセルさんから私のことを聞いているのですか?」

「いや、私とマルセルは昔からの付き合いで、そのマルセルが新しい魔法具を次々と開発していると聞いて、本人の元を訪ねたのだ。何故そんなに新しい魔法具を開発できるのかと」


 やっぱりそういう人いるんだ……マルセルさん、迷惑かけてごめんなさい!


「マルセルは、自分の工房を持って集中して研究できたからだと言っていたが、それだけであそこまでの成果を上げられるとは考えられない。マルセルはそこまでの天才的な才能はなかったのだ。わしと同じようにな。そこでわしは少し調査をしたところ、あの魔法具が開発された時期に、レオンという名の平民が工房に出入りしていることを突き止めた」


 やっぱりそうやってバレることあるんだ…………本当に迂闊だったな。他にもバレてる人いるのかな? 怖すぎる。

 でもそこまでバレても、俺が開発したと思う人は少ないだろう。それに全属性までたどり着くことはないはずだ。魔法具を開発する人たちは、自分の属性以外の魔法具を開発する人もいるらしいからな。まあ、それが成功した事例はほぼないんだが。


「そこでわしはマルセルに、レオンという平民のおかげで開発できたのかと問い詰めたんじゃ。そうしたらマルセルにお主のことを自慢されたよ」


 え? 自慢しちゃったの!?


「レオンの発想力はすごいと。その発想力に助けられて、新しい魔法具が思いついたと言っていた。ぜひ一度会ってみたかったんだ!! まさか王立学校にいるとは。さすが頭も良いんだな! 素晴らしい! わしにも助言してくれないか!」


 そういう話にしてくれたんだ……マルセルさん本当にありがとう。


「はい。私で良ければ先生の助けになれればと思います。ただ、マルセルさんにもそこまで効果的な助言ができたとは思っていないのですが……」

「そんなことはない! あそこまで素晴らしい魔法具を開発する手助けになったのだ! 製氷機も火魔法の魔法具も素晴らしいものだ!」


 ロンゴ先生のテンションがどんどん上がっていく。他の人が置き去りになってるよ……


「ロンゴ先生、少し落ち着いてください」

「あっ…………大変申し訳ございません。ずっと会いたかった人に会えて興奮してしまいました」


 ロンゴ先生がステファン達に謝る。


「私達のことは気にしなくて構いませんよ。ロンゴ先生が、魔法具を真剣に研究している事が伝わってきました。それよりも、私達が研究会に入ることは認めてもらえるのでしょうか?」

「勿論でございます」


 おお、今度は簡単に認められたよ。でも良かったな。これで魔法具の研究ができるのか、ちょっと楽しみだ。

 全属性は明かせないけど、回復魔法を使う魔法具とか、今までの魔法具の改良とかならできるもんな!


「ありがとうございます。それでは、本日から研究会の活動に参加しても良いのでしょうか?」

「それは良いのですが……魔法具研究会は、基本的に個人で活動をして、話し合いたいことがあるときだけ話し合うというやり方なのです。ですので、活動と呼べるようなものはありません。研究会の教室は所属している生徒はいつでも使用可能です」


 それは気が楽でいいな。自由に活動できるってことか。


「もし何かを思いついて魔石や魔鉄を使用したい時は、私に言っていただければ必要な分だけお渡し致します。そして、できた完成品は私の元に持ってきていただきます。また、魔法具を改良したい時も私に言って頂ければ、研究用の魔法具をお貸しします」


 おお! 魔石と魔鉄も使えるなんて最高だな! 

 何を研究しようかな? 回復魔法の魔法具もいいけど、やっぱり魔法具の改良をしたい。どうしてもスイッチ機能をつけたいんだよな。


「皆さんはどんな研究をする予定なのでしょうか?」


 ロンゴ先生のその言葉に、ステファン、マルティーヌ、リュシアンは皆俺の顔を見た。

 えっと…………俺が答えるの? まあ、そうだよね。だって皆は、俺が魔法具研究会に入るから一緒に入るんだもんね。


「私達は、魔法具の改良を中心にやっていきたいと思っています。新しい魔法具も考えますが、まずは魔法具の改良からですね」


 俺がそういうと、ロンゴ先生は目を輝かせて身を乗り出している。


「それは、どんな改良を考えているのだ? 構想はあるのか?」

「はい。一応少しは考えているのですが、魔法具にスイッチ機能をつけたいと思っているのです」

「すいっち……とは何だ?」


 あ……久しぶりに翻訳されなかったのか? スイッチっていう概念がないのか? 


「えーと、今の魔法具は魔石をつけると魔法が発動し続けますよね。それを魔石をはめ込んだまま、魔法の発動と停止をできるようにしたいと思っているのです。もしそれが難しければ、魔石の取り外しをもう少し簡単にできるようにしたいです。魔石をいちいち取り外すのは大変だと思うので」

「それは……! 今までその改良は考えたことがなかった! もしそれが実現できたら素晴らしいことだ!」

「そ、そうですか……」


 ロンゴ先生のテンションがやばい……先生興奮しすぎです!!


「今すぐにその改良に取り掛かろうではないか!」

「ちょっ、ちょっと待ってください。その前に先輩達に紹介していただけないのでしょうか?」

「それもそうだな……では、研究会の教室をご案内するついでに、魔法具研究会に所属している生徒二人をご紹介致します」


 ロンゴ先生は、ステファン達に向き直ってそう言った。先生結構暴走してるから、ステファン達に敬語を使っても意味ないんじゃないか? まあ、形が重要なのかな。


「今すぐに研究棟に向かうので良いでしょうか?」

「はい。よろしくお願いします」

「かしこまりました。ではご案内致します」


 ロンゴ先生はそういうと、いくつかの魔法具を鞄に入れて部屋を出た。研究会の教室で改良の話をする気満々だな。

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