継承【半裸/怪獣/黒板】

パパの秘密を知ってしまった。

今、宮城県中を騒がせている怪事件の、犯人はパパだ。

不可解な事件が続いている。

人や動物、そして建物が、夜な夜な破壊される。共通して残されているのは大きな爪痕。

まるでテレビの怪獣がそこを通ったみたいに。

東北の各県はこの一年、常に厳戒態勢で、夜中の外出は禁止されている。


ある夜、もう日付も変わったような時間。

トイレに行こうとリビングのドアを開けたら、なにやら紙束と向かい合っていたパパがひっくり返って僕を見る。そして突然に抱きしめた。

「あぁ、良かった、今日は違った」

今日は"怪獣"は出てないみたいだから大丈夫だよ、とパパを引き剥がした。そして、ふと目に入った机の上に、それを見た。

それは、黒板のようなものに描かれた、"怪獣"の姿。その黒板を写した写真だった。


後日、パパの部屋に忍び込んで、それにたどり着いた。

それは何枚もの黒板の写真。

その全てに、色々な怪獣のイラスト。そして破壊される町の名前。仙台駅、国分町、塩釜、多賀城、名取、エトセトラ。

全部、これまで被害のあった場所だ。

パパはこの事件のことを知っている。

パパが怪獣たちを操っているに違いない。


怪獣の現れる周期は分からない。

僕は明日からパパを尾行することを決心する。

パパを止めなければ。


※※※


神よ、私が一体何をした。

平凡に育って、平凡に家庭を持って、平凡に息子を育てていた平凡な私。


ある夜、息子が突然行方不明となった。

警察に保護された息子は気を失い、上半身裸に、ズボンもズタズタの半裸の状態だった。

息子が保護された場所に他に残されていたのは、引き裂かれた道路とガードレール、そして3人の人間。


事件が重なるごとに私は気付いていく。

高校時代、卒業記念にと黒板に描いた怪物たち。

私を執拗にいじめた同級生たちが住む街を、一つずつ破壊していく私の大事な怪物たち。

息子は私が憂さ晴らしに作り出した怪物そのものとなって、街を破壊している。


最後の希望は、私が描いた街を一通り破壊し終われば、この凶行は終わるのではないかという推測。

そしてそれは先日破られた。

指針を失った怪物は過去の私の手を離れ、無作為に破壊活動を続けている。

でも、今度こそ、今度こそ最後なのではないかと。

その希望のせいで、何人もの人が亡くなった。

もう、限界なのだ。


日曜日。息子の部屋から叫び声が聞こえる。

前回も、やはり最後ではなかった。

身体が変化する際、息子は尋常ではない痛みに襲われるようで、身動きが取れなくなる。

ごめんな、と呟いて、苦しむ息子の頸に手をかけた。

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