サークル・オブ・ライフ【お肉/カード/願い】
生き物を食べるのはかわいそう。と10歳の娘のメグミが言い始めたのはしばらく前のことである。
最初は肉を食べないと言い出したけれど、2種類の夕飯は作れないので私が許可しなかった。
それならせめて、とメグミは肉たちへ"感謝"することを始めた。
食卓に肉料理が上るごとに、その肉へと名前をつける。
その名前を小さなカードに書き込んで、自室の棚の上に飾って手を合わせるのだ。
お肉になってくれてありがとう、モーちゃん、ブーさん、ピーちゃん、泳げサバ焼きくん、エトセトラ。エトセトラ。
メグミのカードの束がクッキー缶に収まらなくなるころに、私は発狂した。
毎日毎日、食卓に出す料理の材料に名前をつけられて、それに包丁を差し込む自分への罪悪感が少しずつ積もっていく。
台所の窓の外に、夜の枕元に、動物たちが目を光らせているのではないかと幻視する。
当然のように食卓から肉類は消えて、我が家はベジタリアン一家となった。
メグミの願いは別の方向から叶ったわけである。
恨みがましくメグミを見ても、彼女に悪意はないのだ。美味しいね、といって豆のサラダを食べている。
「そういえば、お母さん知ってる?理科の授業でやったんだけどさ、植物も生きてるんだって!」
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