蓼食う虫も好き好き【米/写真/ダメージ】
ファッションはカルチャーと結び付いている。
ファッションデザイナー兼反戦活動家のタキザワは常にファッションにリアリティを求めていた。
彼のコレクションには毎シーズン、銃弾で撃たれたようなダメージ加工のデニムパンツが含まれている。
日常と戦場の交差する場所としてのダメージデニムパンツ。
しかしタキザワは常に不満を覚えていた。
自分の象徴的メッセージを工場で作り出すことにリアリティはあるのか?
"裏"のヴィンテージ取引に辿り着くのに時間はかからなかった。
主に米軍による被害を受けた中東のゲリラ部隊たちが捨て去った、もしくは死体から剥ぎ取られた銃痕だらけのアパレルは、一部のミリタリー・マニア向けにウェブ上で取引されていた。
死体から剥ぎ取ったものは、剥ぎ取る前の写真が同封されるのが通例。
どれだけリアルなダメージ・アパレルを手に入れてもしかしタキザワは不満だった。
銃痕の位置が気に食わない。血の乗り方が気に食わない。
もう自分がデザインするしかない。
己の全てをかけてデザインをしたデニムパンツを穿いて・・・。
海外で発見される日本人の"ボディ"の写真は珍しい。まさかミリタリーオタクたちがこんなルートを持っているとは。
僕はネクロフィリアを拗らせて、戦場の死体でしか性的に興奮できなくなってしまっていた。
僕は写真のデータだけが欲しいのだから、余計な衣服はいらないのに。足がついてしまう。
モノが届くやいなや僕は写真データ以外のそれを細かく裂いて処分した。
その晩、僕の劣情を満たした彼の死に顔は、銃で撃たれたらとは思えないほどに安らかだった。
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