第70話 ユニバーサル・ジェンダー党のWEBの起動:2023年11月

(ユニバーサル・ジェンダー党が、有権者交流システムを使った党員とパートナーの募集を始めた)

2023年11月。WEB。


ユニバーサル・ジェンダー党は、WEBの有権者交流システムのサービスを開始した。

1)メンバー登録

WEBの利用者は、3種類に分けられる。党費を払う党員、無料のパートナー、一般のユーザーである。党員とパートナーは、メンバー登録が必要なメンバーである。一般ユーザーは、登録は不要である。ユニバーサル・ジェンダー党のWEBは、有権者と有権者、有権者と候補者が、コミュニケーションを深めて、政策要求と公約を作りあげ、その中で、候補者を育て、選抜して、公認を与える。ここでは、冷やかしを排除して、密度の高い議論をしたい。このため、議論に参加できる有権者は、メンバーに限定した。WEBでは、一般ユーザーに対して、閲覧は、登録不要であるが、コメントを書き込むためには、メールアドレスを記載するルールが採られる。ユニバーサル・ジェンダー党のWEBでも、この扱いは同じである。しかし、コメントを書きこむことと、議論に参加することは、全く別な扱いになる。つまり、WEBは、メンバー向けサービスと一般のユーザー向けサービスに大きく分かれる。


2)メンバー向けサービス

メンバー向け、サービスは、議論と投票で、政策と公約を構築する。ここでは、候補者は、政策要求の課題毎に、グループを作って活動する。必要があれば、アンケートをとり、投票を行う。候補者の公認のための選抜など、特に、重要な投票は、党員に限定されるが、議論は、メンバーに制限はない。ここでは、議論と意見集約、集約結果を使った議論を繰り返すことになる。この部分は、民主主義の根幹に関わる部分であるが、今まで、選挙を中心にして、ないがしろにされてきた部分である。このサービスは、選挙後も、重要な法案については、メンバーの意見をアンケートで集約し、メンバーの投票を行うことを前提としている。このサービスは、ITを使って間接民主主義を、直接民主主義にどこまで近づけられるかという実験でもある。

具体的なイメージを示そう。

最初に、公約の候補である政策要求を分野毎に作る。

政策要求を集約・編集して、公約を作る。政策要求の作成には、双方向のコミュニケーションをする。更に、メンバーの間で意見交換をするフォーラムもある。保育園が足りない、渋滞がひどいといった問題は、メンバーに政策要求を作ってもらって、集約すれば良い。一方、外交問題などは、日常生活に直接つながっていないので、問題を提示して、メンバーに答えを選択してもらう。

次に、メンバーのレスポンスを反映して、政策要求にランクをつける。そして、ランクの上位を公約に格付けする。ランクの付け方は、その分野内での順位もあるが、分野間にもランクがある。後者は、環境と経済のどちらを優先しますかといった問題である。ランクは、毎週見直され、それによって、公約は、毎週変わる。コロナウイルスのような、新しい問題が発生すれば、これに対応して、公約をバージョンアップする。

政策要求を公約の候補リストに編集する場合に候補者は中心的な役割を果たす。もちろん、全ユーザーのリクエストを候補者が直接処理することは、オーバーワークである。このためには、AIが、意見集約をする。これには、G社の言語要約システムが有効である。こうしたAIのサポートを受けて、候補者はメンバーが提示した「問題の解決には、このような政策で対応したらどうでしょうか」という提案を作成する。この提案に対して、メンバーは意見を提出する。更に、メンバーの間で議論する。こうしたやりとりを繰り返して、公約の適切な絞り込みと候補者のメンバーとのコミュニケーションが図られる。候補者もメンバーの評価によってランク付けされる。このランクも毎週見直され、党の推薦候補の選出時に使われる。

以上のように、公約と候補者のランクにメンバーが関与できれば、メンバーは政治に参加しているという手応えを感じることが出来る。

3)一般ユーザー向けサービス

このサービスは、党の宣伝を行う。

一般ユーザーにコメントを書いてもらい、アンケートを実施することもあるが、結果の扱いは、メンバー・サービスとは異なり、あくまで、参考に留まる。

このサービスは、アマゾネス・ウーマンズ・パートナーシップと似ている。ユニバーサル・ジェンダー党は、一般ユーザーにメンバーになってもらうか、メンバーにならなくとも、選挙で、ユニバーサル・ジェンダー党に投票してもらいたい。差別化は、情報の量と質である。ここでは、メンバーのボランティアを使って、ジェンダー問題に関するデータの蓄積と発信が行われた。このデータは、メンバー向けサービスの議論の基礎となるエビデンスにもなる。各企業のジェンダー・エクイティ・レポートの要約と比較、ジェンダー問題の情報へのリンク、ユニバーサル・ジェンダー計画の最近の活動など、ともかく、ジェンダー問題に関心のある人は、ユニバーサル・ジェンダー党のWEBをチェックしないと話が始まらない状況を目指した。ソーシャル・メディアも併用している。

このサービスの要点は、ユニバーサル・ジェンダー計画を中心に活動が行われている点である。政党色を弱めることで、誰もがアクセスするWEBを目指していた。

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