第68話 鈴木太郎の辞職:2023年11月

(鈴木太郎が、T商事を辞職する)


2023年11月。東京。鈴木家。

10月に入って、T商事の業績は、更に、悪化してきた。大きな原因は、予想されたとおりの不十分なダマスカス対策である。国内システムが、レガシー・システムで、ダマスカスに対応できていないことが、致命傷になることは、ずっと前から、予想出来ていた。鈴木の仕事の手詰まり感はピークに達しつつあった。


一方、鈴木にも、アマゾネス・ウーマンズ・パートナーシップから、ユニバーサル・ジェンダー党への推薦のレターが来ていた。鈴木は、これに応募した。ユニバーサル・ジェンダー党からは、受諾の返事が直ぐにきた。とはいえ、この段階では、立候補予定者のリストに載っただけだ。最終選考まで、生き残れるかは不明である。

ユニバーサル・ジェンダー党の立候補者養成プログラムは、選抜を目的としたものではなく、候補者養成を目的としていた。つまり、分野別に、弱点が表示され、そこを重点的に強化する。とはいえ、立候補出来る枠は限られている。このため、立候補者養成プログラムでは、議員の種類を選択すると、党の公認が得られる確率が数字で表示される。

鈴木は、1月の衆議院選挙を目指している。11月の最初に、ユニバーサル・ジェンダー党に登録した時の最初の公認推薦確率スコアは30%と低かったが、その後の勉強で、スコアが改善して、現在は60%を超えた。このままいけば、公認が得られそうだった。


こうして、鈴木は、議員に賭けることにして、11月末に、T商事に、辞表を提出した。

鈴木の退職後、12月に入って、T商事の業績は更に悪化して危険水域に近づいて来た。結果からみれば、鈴木の辞職の判断は正しかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る