第43話 洋子の出向計画 :2023年5月
(南山洋子は、G社からの出向を打診される)
2023年5月。東京。G社オフィス。
「南山君、一度、わが社を辞めてもらえないだろうか。
『ユニバーサル・ジェンダー計画』に合わせて、新しく『アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社』という会社を立ち上げる計画が動いている。この会社は、今までに例をみない独創的な会社だ。うまくいくかどうかは、やってみないとわからない。うまくいかなければ、それで、ジ・エンドだ。後はない。切符は片道だ。失敗しても、G社に戻る道は残されていない。
君のG社における業績には、目覚ましいものがある。このまま、G社に残って幹部を目指すという選択もある。おそらく、その方が、成功する確率は高いだろう。その意味で、この人事は、左遷かと言われれば、左遷と思ってもらって構わない。G社の将来を考えれば、君に残ってもらって、少なくともあと5年は活躍して欲しいというのが本音だ。
『アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社』は、今のところ、実体のない訳のわからない会社だ。喜んで働く人は誰もいないかも知れない。人材募集すら、ままならないかもしれない。人が、集まらなければ、そこで、座礁してしまう。
しかしね。私は、ふと思う時があるんだ。実は、私は、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズと同じ世代なんだ。1980年代にね、彼らは、訳のわからないPCの会社に自分の人生をかけたんだ。その頃、私もパソコン少年だった。でも、彼らのように、PCの大海原に乗り出す勇気がなかったんだ。いつも、このことを思い起こす度に、人生の幸福ってなんだろうと考えてしまう。
君も、聞いているように、『ユニバーサル・ジェンダー計画』に対応できないと、ただでも傾いている日本経済は、いよいよ、ご臨終になるかもしれない瀬戸際だ。今までのように、少しずつ、ジェンダー問題を解決しますというアプローチは通用しない。冒険が必要なんだ。
『アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社』は、ユニバーサル・ジェンダーの大海原に漕ぎだしていく小舟なんだ。ルイス・デ・カモンイスの詩にあるように『ここに地終わり海始まる』、男性中心社会の地が終わり、ユニバーサル・ジェンダーの大海原が始まった、その現場に君はいるんだ」
笹川CEOは、こう洋子を説得した。
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