ステイながみね
「その後、何人も情報提供者が現れたのだけど、証拠映像はどれもバラバラ。物音が記録されてたり無音だったり。結局、しびれを切らした住民が警察を呼んだの。でも事件性がないと判断して引き揚げたわ」
生田あかしは欧米人のように肩をすくめて見せた。
「それがわたしの到着する一時間前の話ね。…ええと、ちょっと待って。ステイながみねは廃業したって警察は出動を断ったんじゃなかった?」
みとりは早くも矛盾を見つけた模様だ。あかしは一瞬だけ視線を泳がせ、すぐ話を続けた。
「ええ、わたしもおかしいと思ったんだけど、近所の主婦が教えてくれたの。たしかに民泊は十年前に閉鎖されてるわ。でも半年後に競売にかけられてリニューアルオープンした。臼井蔵人――今の経営者よ。それから近所トラブルが三カ月に一回のペースでおっき始めた。最初は警察も真面目に対応していたらしいんだけど、面倒になっちゃったのよね。十年前の件を口実にしはじめた」
警察が通報を却下するなどあり得るのだろうか。どんなに些細な内容でも現場へ赴いて確認する義務がある。虚偽であれば愉快犯を処罰し、そうでなければ迅速に解決すべきだ。みどりは胡散臭さを感じたものの、詮索せずにおいた。今のところは、だ。
永遠い来人は全国に散らばる霊能者をマッチングさせるシステムだ。オンラインで連絡先と短いプロフィールを登録し、所定の適性検査に合格すれば、活動開始となる。
「それで不揃いな映像はどうなったの。見落としや、気づかない共通項が…」
みとりは動画の閲覧を求めた。
「消されちゃったわよ。臼井が激怒したの。風評被害を拡散するなって」
「どういう事なの? 元凶はステイながみねでしょ。潔白の証明になるわ。疚しいところがなければ」
「うちばランキングサイトでも上位だ。営業妨害はやめてくれの一点張り」
あかしも動画のコピーを願い出たのだが、あっさり拒絶された。しかし、彼女はスカートのポケットからプラスチックケースを取り出した。
「なに、それ?」
「マイクロSDカードよ。どさくさに紛れて遠巻きに撮っておいたの。全部が全部じゃないけど」
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