義妹ができてから始まる、ファンとのラブコメ

江月祐畝

第1話 「…………妹ができたらどう思う!?」

 「なぁ、奏多」


 「…………」


 「なぁ、奏多」


 「……………………」


 「なんで目の前にいるのに視界にすら止めてくれないのん?」


 「…………ん? 何か言った?」


 何か独り言をつぶやいていたような気がしたのでスルーしていたが、だんだんと泣き目になってきていたので、もしかして無視しちゃっていたパターンのやつかな、と思いなおす。無視はしない主義なのだ。だって今の親父、俺がクラスメイトに話しかけてみたけど聞こえていないのか無視されたときの俺の顔していたからな。…………あれはマジで辛かった。周りの人が笑っていたしな。


 ヘッドフォンを外して問い返す。


 俺に会話をしようという意思があったのを分かったからか、泣き顔から一転、嬉しそうな顔になる親父。


 「ちょっと話があるんだ」


 「それは知ってる」


 「なぁ、奏多」


 「ん?」


 「…………妹ができたらどう思う!?」


 うちの家は現在俺と親父の二人暮らし。


 「…………は? ……はっ! ……まさか愛人!?」


 「なんでその発想に至る!? …………いや、普通に新しい家族として、だよ」


 「…………まさかあいじ__」


 「その下りはもうやったわ」


 「いや…………いいんじゃない? 再婚ってことでしょ? 俺の意思関係なくね?」


 「お前の意思も大事だろうが」


 まっすぐ俺を見つめながらそう言う親父。ちょっと感動しかけたが、俺は親父が前にゲーム機購入をごり押ししたことを思い出す。危なかった、騙されるところだったぜ。こいつは信用してはいけないやつや。


 「いいと思うよ? 義妹でしょ? 小学生?」


 「いや、高校生」


 「…………ってことは高1か高2か。…………そっか、高校生かぁ」


 思わずうへぇ、という顔になってしまうのを親父は見逃さない。その人がいや、というわけではなく、ただ単に、女子高生の持つ拡散力に警戒しなければなくなるからだ。俺のについて拡散されたらたまったもんじゃない。


 「嫌か?」


 「その人を見てみないことには…………だけれど、高校生の拡散力、しかも女子のには予測できないものがあるからなぁ。…………仕事のこと、秘密にしていていい?」


 「まぁ、そうなるよな。…………お前の義母さんになる人には言ってほしい」


 「その人、秘密守れんの?」

 

 「信頼できる人だ」


 親父は割とポンコツな面もあるが、人を見る目でだけは俺も信頼している。だから、きっといい人なのだろう。


 「分かった。秘密にしてもらうことが条件なら」


 「そうと言っておく」


 そう言うや否や、すぐさまスマホを取り出してRINEに文字を打ち込み始める親父。今すぐ文面を作っているのだろう。


 作り終えると、俺にスマホを渡して、推敲させる。嫌な表現があったら変えろ、ということだろう。


 特に変えるポイントが見当たらなかったので、そのまま送信する俺。


 送信されたのを見届けてから俺は親父にスマホを返す。その時、乗り出した机がギシッと悲鳴をあげたのはそろそろ寿命だからだろう。すぐにバキッって壊れることはないとは思うが。


 「ちなみに新しい家族が来るのは明日からだから」


 「はいよー…………って、は? …………ほう、いい大人が事後報告とはいい度胸じゃないですか?」


 「それじゃ」


 そう言い残すと、そそくさとリビングから出ていく親父。その背中は「気がついていないうちに逃げちゃえ」と語っていた。


 「おい待て親父ぃいいいいい!」


 親父を後で〆るのは決まったが、多分決定は覆らないし覆そうにも向こう側に迷惑がかかる。ならば俺が真っ先にしなければならないことは…………


 を隠すこと、だろう。


 [あとがき]


今日もう一話更新予定です。是非お付き合いください!

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