第三十話 槍王ガティ·イザーク
烈華民国を出て、隣国のヤーバル王国に入国した私達は、ヤーバル王国王都カンバナルにあるA級ダンジョンに向かう事にした。
カンバナルには、馬車を走らせる事二週間で到着した。
カンバナルの街中に入ると、流石は王都なだけあって賑わっている。
A級ダンジョンに潜る前に食料品の補充をする為に買い物をしていると、一際賑わっている場所があったので向かう。すると、木の看板に対アルジュナ連合軍の兵士募集と書かれている場所に人の列ができていた。
もうアルジュナを倒す為の軍を準備している。
アルジュナが指定した半年まで三ヶ月をきっているのだ。当然と言えば当然かもしれない。
アルジュナとの戦いが迫っている以上、ヨルバウム帝国のクーデターがどうなったのかは気になるが今はダンジョンコアを集める事に集中しなければ。
思案しながら兵士募集に並んでいる人々の先を見ると、兵士候補と模擬戦をしている美丈夫が居た。
彼が持っている槍を振り回す度に模擬戦を観ている女性達から歓声が上がる。
どうもこの賑わいを作っているのは彼みたいだ。
艶がある亜麻色の髪を肩口で揃え、髪と同じ亜麻色の大きな瞳をしている彼は確かに美しい。
女性達が見惚れているのもわかる。
しかし、先程から兵士候補達を余裕であしらっている彼は何者なのだろうか?
答えはシャオが教えてくれた。
「あれは槍王ガティ·イザーク。ヤーバル王国に所属する十二星王アル」
十二星王!? 何で十二星王が兵士の見定めをしているの!?
驚きの視線を槍王に向けていると、槍王は兵士候補と戦うのを止めて、シャオに視線を向けて近付いてくる。
「これはこれは闘神殿、お久しぶりですね」
「久しぶりアルな、ガティ。相変わらず女性にモテモテで羨ましいアルよ」
槍王とシャオはお互いに笑みを浮かべながら握手をする。
周囲の女性の嫉妬の視線がシャオに向けられる。
「ところで、闘神殿は我が愛する国に何用ですか?」
「今仲間とダンジョン探索をしていて、この王都にあるA級ダンジョンにも潜りに来たネ」
「···闘神殿がダンジョン探索? 闘神殿が今更ダンジョンで修行という訳でもなさそうですし、何か訳ありですか? よろしければ俺も力になりますが?」
「···ラティス、ガティにもラティスの事を知っていてもらった方がいいかもしれないネ」
槍王ガティ·イザークが手を貸してくれるなら話すに決まっている。
私達は槍王の家で私達の事を話す事にした。
ガティさんの家は十二星王の家としては貧相とも言える普通のご家庭の一軒家だった。
「さぁ、お茶とお菓子をどうぞ」
ガティさんは私達にお茶とお菓子を出すと、向かい側のソファーに座る。
対面するガティさんにユルゲイトとの戦いや、アルジュナがどうやって復活したのか、そして私がどのような存在かを話した。
「なるほど、君はユルゲイトが造った古代人のクローンで、ユルゲイトの策略でアルジュナに身体を奪われて別のクローンの身体に入る事になったと。そしてアルジュナに対抗する為にダンジョンコアを集めているんだね。···随分と壮大な話だ。···すまないが君の素顔を見せてもらってもいいかな?」
私は頷き、仮面を外してガティさんに 素顔を見せる。
「···確かにアルジュナと名乗った者と似ているね。···わかった。俺はヤーバル王国の将軍職についているからずっとは一緒に居られない。だけど、君達がヤーバル王国に居る間は手を貸すよ」
「ありがとう、ガティさん。助かるわ」
槍王がダンジョンについてきてくれる事になった。
ラダンさん、イレーヌさん、ゼロと私だけでもS級ダンジョンは攻略できるのに、SSSランク冒険者のシャオと槍王ガティさんは過剰戦力な気もする。
だけどダンジョンを早く攻略できるのだからありがたい。
早速カンバナルのA級ダンジョンに潜った私達だけど、シャオとガティさんが強すぎてあっという間にダンジョンコアをゲットしてしまった。
シャオもかなり強いけど、ガティさんもシャオに劣らない程の強さを私達に見せつけた。
A級ダンジョンは三十階層まであって、二日かけて攻略したのだけれど、その間の食事はガティさんが作ってくれた。
その味はジアスの料理を思い出す程の美味だった。
食後のお茶も出してくれるし、朝も一番早くに起きて朝食の準備をして、優しく私達を起こしてくれた。
物腰も柔らかく紳士というのが見事に当てはまるくらいのジェントルマンだった。
そりゃあ女子にモテるに決まっている。
「次は南西の街イボルタにあるS級ダンジョンだね」
A級ダンジョンから脱出した私達は、爽やかに告げるガティさんと共にイボルタの街を目指す。
あと一個で以前の私と同じダンジョンマスターの能力に至れるのだ。
そうすれば、中央大陸に行ける。
クーデターが治まっている事を信じて私は次の目的地へと向かう。
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