第三話 再びの
私とゼロは現在マドランガ共和国北部の町ペルシェカの冒険者ギルドに居る。
私は今、顔を隠す仮面を着け、フードを深く被っている。
数日前に世界中に姿を晒したアルジュナに酷似する容姿を隠す為だ。
私達はダンジョンコアを集める為に、ペルシェカの町にあるF級ダンジョンへ潜る為に冒険者カードを作りに来た。
かつてステラだった頃の冒険者カードは手元に無い。あったとしても今の私の身体は、前の身体よりも成長しているのでステラとは信じてもらえないだろうし、なによりアルジュナと酷似しているステラとして活動するのは危険だ。
なので、名をラティスと変え、冒険者カードを新たに作ることにした。
ゼロも冒険者カードを持っていないので一緒に作る為にペルシェカの冒険者ギルドへとやって来たのだけれど、作ってすぐに下卑た笑みを浮かべる三人のおっさん冒険者に囲まれた。
「おいおい、姉ちゃん達。女二人で冒険者を始めるのは危険だぜ。だから俺達がパーティーを組んでやってもいいぜ?」
おっさん冒険者の一人は私達の顔じゃなく胸に視線を向けながら話しかけてきた。
うげ〜、気持ち悪い。こうもあからさまに下心を見せつけられると吐き気がする。
「結構よ。私達こう見えても強いの」
私とゼロはおっさん冒険者達を避け、ギルドから去ろうとしたけど、話しかけてきたおっさん冒険者に手を掴まれた。
「まぁまぁ、先輩冒険者の忠告はちゃんと聞いたほうがいいぜ仮面の嬢ちゃん」
「···はぁ〜。これ以上私達に絡むなら痛い目見てもらうわよ?」
「ぎゃはははっ!! 痛い目? 冒険者になったばかりの嬢ちゃん達がCランク冒険者の俺達を? ははっ、中々良い度胸しているが、相手を見ばばばばっ!?」
長くなりそうだったので死なない程度にライトニングの魔法を手を掴んでいるおっさん冒険者に流した。
そのおっさん冒険者は白目になって気絶した。
「なっ!? スタンティンに何しやがる!?」
大柄な体格のおっさん冒険者その二が剣を抜いて向かってくるけど、ゼロが指二本でおっさん冒険者その二の剣を受け止め、おっさん冒険者その二の顔面に拳を放ってぶっ飛ばした。
「ひぶぉはぁ!?」
「ひっ!?」
おっさん冒険者その三はその姿を見て腰を抜かしている。
私とゼロは、おっさん冒険者達を冒険者ギルドに残してF級ダンジョンに向かう事にした。
このペルシェカの町に来る間にモンスターと何回か戦闘になったけど、新たな身体は前の身体と同じ様に魔法を放てるし、魔力量も前の身体と遜色ないように感じる。
ゼロは魔法も使えるみたいだけど、魔法を身体にエンチャントさせて徒手空拳で戦うのを好んでいるみたい。
ゼロは中々強く頼りになる。
そんなゼロと、前の身体でSランク冒険者になった私が組んでいるのだからF級ダンジョンなんて楽勝だった。
最下層である十階層のボスモンスターを瞬殺して、ダンジョンコアに触ると、光りだして機械音声の様な声が頭に響く。ダンジョンコアの声だ。
『ダンジョンマスターと認識しました。ダンジョンコアの譲渡が出来ますが、ダンジョンコアをお受け取りになられますか?』
やはりこの身体でもダンジョンマスターと認識された。
『うん、受け取るわ』
私の返事を受けてダンジョンコアが私の身体の中に入っていく。
『ダンジョンコアの受け渡しが終了しました。まもなくダンジョンの崩壊が始まります』
あっ、そうか管理下に置かないとダンジョンは崩壊するんだった。
『このダンジョンを管理下に置きたいんだけど出来る?』
『いいえ、不可能です。現在のダンジョンマスターはダンジョン創造とダンジョン管理の能力を開放していません』
ううっ、やっぱりか。
なら今は脱出するしかない。
『外への脱出を希望ですか?』
『ううん、ダンジョンの一階へ転移して』
『了解しました。ダンジョンの一階へと転移します』
ダンジョンが崩れ始める中、私はゼロと手を繋ぎダンジョンの一階へと転移した。
ダンジョンの崩壊が始まっているので、私達はダンジョンの一階から外へと急いで出た。
外に出ると、ダンジョンから地響きが起こっている。ダンジョンの入口も崩れ始めた。
ダンジョンの門番は驚いて何が起きたのか聴いてきたが、「突然ダンジョンが崩れ始めた」とだけ伝えた。
ペルシェカの兵舎まで連行されて事情聴取されたけど、「突然ダンジョンが崩れ始めた」の一点張りをしていたら三時間程で事情聴取から解放された。
ダンジョンを崩壊させた事を申し訳なく思いつつ、私達は首都ワーシュルゼに行く馬車の護衛依頼を冒険者ギルドで引き受けて、ペルシェカの町を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます