第十九話 考古学者の仲間入り


 ルートヴィヒとセシルと打ち解けた様子のジアスを見て頬が緩む。


 美少年達が仲良くしている所を見れて幸せです。


 「パラちゃん、仲良き事は美しきかなだね」


 「うんうん、素晴らしいものを見せてもらったのね」


 パラちゃんと二人で拍手をしていると、ナギさんが不思議そうに首を傾げる。


 おやおや、ナギさんにはこの尊さがわからないらしい。


 「まだまだナギちゃんは精進が足りないのね」


 パラちゃんの言葉に同意するように私は頷く。


 「え? ど、どういう事ですか?」


 ナギさんを置いてけぼりにして、私達はまるで兄弟のように仲良くしているルートヴィヒ達を見て楽しみながらダンジョンを進んでいく。 


 四十五階層でモンスターが現れない部屋を見つけたので野営していく。


 部屋が狭いので家は出さずに野宿をする事になった。


 料理はもちろんジアスが作ってくれた。


 アイテム袋には干し肉や長期保存の効く野菜を入れているので、ジャガイモと干し肉のポテトサラダに人参と玉ねぎとジャガイモのポトフとナンを作ってくれた。


 マヨネーズたっぷりのポテトサラダと、黒胡椒の効いたポトフはかなり美味い。


 ナンを千切ってポトフやポテトサラダと共に食べていき、結構な量があったのに皆でぺろりと完食した。


 後片付けをした後、すぐに就寝。


 モンスターが居ない部屋だけど、念の為に見張り番を交代しながらする事になった。


 最初に見張り番をする事になったので、壁に寄りかかってぼーっとしていると、ジアスは寝られないみたいで起き上がった。


 「ジアス、寝れないの?」


 皆が寝ているので小声で話しかける。


 「うん、明日には最下層に行けるのかと思うとワクワクして中々寝付けないんだ」


 「ふふっ、本当に考古学が好きなんだね」


 「ああ、祖父が教えてくれた事だからね」


 ジアスがお祖父さんの事を話す時は過去形だ。


 「ジアス、お祖父さんはもう?」


 「···うん、二年前にね」


 「そう、言いにくい事を聞いてごめんね」


 「いや、祖父の死に対して踏ん切りはついているんだ。だから気にしないで」


 「うん、ごめんね」


 その後数分話した後、眠気がきたのかジアスは横になった。


 二時間が経ってナギさんと見張り番を交代して私も寝た。



 翌朝、ジアスが作ってくれた朝食を食べた後、ダンジョンの先へと歩を進める。


 ジアスが私達に打ち解け始めたおかげか、チームワークが向上してあっという間に最下層である五十階層に着いた。


 残るボスモンスターは一体。


 気を引き締めて扉を開けると、そこには一つ目の青色の肌をした巨人が居た。


 ゲームとかでサイクロプスと呼ばれているモンスターに似ている。


 サイクロプスを大きな金棒を持っている。


 接近戦をしてくるモンスターかと思ったけど、魔眼を解放したナギさんから防御魔法を展開するように指示された。


 慌ててアイギスを展開すると、サイクロプスの目からレーザーが放たれた。


 アイギスがレーザーを防ぎ火花が散る。


 こいつ、遠距離攻撃も持っているのか。


 ルートヴィヒ、セシル、ナギさんが散開してサイクロプスを撹乱する。


 サイクロプスは金棒を振り回すがルートヴィヒ達はそれを回避する。


 私はサイクロプスの目に向けてライトニングを放つけど、レーザーで相殺される。


 私の攻撃は相殺されたけど、サイクロプスに隙ができて、ルートヴィヒ、セシル、ナギさんは、サイクロプスの攻撃をかいくぐって斬撃を当てる事に成功した。


 三人の斬撃を受けてサイクロプスが片膝をついた。


 今がチャンスだと思い、聖属性最上級魔法レヴァンティンを放ちサイクロプスを貫く。


 サイクロプスは絶叫しながら光の粒子となって消えた。


 残ったのは、大きな金棒。


 ふぅ〜、あまり苦戦する事もなくS級ダンジョンのボスモンスターを倒せた。

 強くなっているのを実感できて嬉しい。


 金棒をアイテム袋に入れると、私はダンジョンコアの元へとむかう。


 私はいつものようにダンジョンコアに触れると、ダンジョンコアが、光りだした。


 その光景を見てジアスが驚いている。


 ジアスに私の能力について話すつもりだけど、先にダンジョンコアを吸収する事にした。


 ダンジョン名をギルダムダンジョンと名付けて、S級ダンジョンコアを吸収すると、ダンジョンコアの声が頭の中に響く。


 『おめでとうございます。古の扉を開く条件を達成しました。古の都アムレイドへと向かって下さい』


 アムレイド? 聞いた事がない。


 『アムレイドってどこなの?』とダンジョンコアに語りかけるけど返事がない。


 ジアスが心配そうに私を見ているので、ダンジョンマスターとダンジョンコアの事や私がユルゲイトに造られた古代人のクローンである可能性について説明した。


 ジアスは私の話を聴くと、目を輝かせて私を見つめる。


 「確かにユルゲイト·スペンサーは考古学者としても有名だ。だけど、まさか古代人のクローンを造るなんて!! それにダンジョンマスターの能力は現代では考えられない程のロストテクノロジーだよ。でも古代人が何の為にダンジョンを造ったのかは謎のままだ」


 ジアスは私を見ながらぶつぶつと興奮した様子で呟いている。


 そんなジアスにダンジョンコアに告げられた事を話す。


 「古の都アムレイド? それなら中央大陸オルファースト王国北の街ヘルエイムの近くにある遺跡の事を指しているんだと思うよ。その遺跡から古代語でアムレイドと書かれていた石版が見つかったと書物で読んだ事がある」


 ここでオルファースト王国が出てくるのか。

 だとするとユルゲイトがそこで待ち構えている可能性が高い。


 それでも私は私の事を知りたい。


 皆と話し合いオルファースト王国へと再び行く事になった。


 するとジアスも連れて行ってほしいと頭を下げてきた。


 「僕もステラの真実が知りたい。考古学者としても知りたいけど、一人の友人としても力になりたいんだ。どうか同行させてほしい」


 ジアスの考古学者としての知識は頼りになる。断る理由がない。


 「ジアスの知識があると助かるわ。これからよろしく」


 ジアスに向かって手を差し出すと、嬉しそうに両手で私の手を握った。


 ジアスが正式に仲間になり、オルファースト王国へと向かう事になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る