第二話 授業と稽古
入学式が終わり、皆クラス表に書かれていたクラスに向かう。
私、ルートヴィヒ、セシル、ローナの四人も自分達のクラスへと向かい、一年Sクラスと書かれた教室に入る。
黒板には自由に座ってよしと書いているので、四人で固まって座る。
クルト皇子は取り巻き二人と私達から離れた席に座っている。
周囲を見た感じ、一年Sクラスは十五人みたいだ。
しばらくするとドアが開き、ソフラ先生が入ってきて教壇に立った。
「今日から一年Sクラスの担任をさせて頂きます、ソフラ·ディレイです。よろしくお願いします」
私を含めた生徒達が拍手をする。
「最初に言っておきます。魔法学院では皇族も貴族も平民も関係ありません。皆平等です。そう心がけてください。そして、今年のSクラスには特待生が五人います。ステラさん、ルートヴィヒ君、セシル君、クルト君、ローナさんの五人です。いつもは一、二人しかいない特待生が五人もいるのですから、特に特待生にふさわしい言動をとるように。他の生徒も一番優秀な生徒を集めたSクラスにいるという自覚を持つように。それでは自己紹介をしていきましょう」
左前の生徒から順に自己紹介していく。
次はルートヴィヒの番。
「ルートヴィヒです。十二歳です。聖属性魔法が使えます。特技は剣術です。よろしくお願いします」
笑顔で簡潔に説明するルートヴィヒ。女子生徒の中には頬を赤らめている子もいる。天使の様な兄だもん、仕方ない。
続いてセシル。
「セシル·フェブレンです。十二歳です。水属性と風属性の魔法が使えます。特技はルートヴィヒと同じ剣術です。よろしく」
セシルも簡潔に済ませたなぁ。
続いてはローナ。
「ロ、ローナです。十二歳です。魔法は水属性と土属性の魔法が使えます。特技は料理です。よ、よろしくお願いします」
少し緊張してたみたいだけど、ちゃんと自己紹介出来てる。
よし、次は私の番。
「ルートヴィヒの妹のステラです。七歳です。魔法は全属性使えます。特技も魔法です。皆さん仲良くしてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」
挨拶を終え、着席する。
うん、上手く自己紹介できたと思う。
その後も自己紹介は続き、クルト皇子の番がきた。
「クルト·ヨルバウムだ。俺はこの魔法学院を首席で卒業する!! 以上だ!!」
座る際に私を睨む。いやいや睨まれても困る。それに首席で卒業するのは私。これは確定事項。
自己紹介が終わり、ソフラ先生が授業の説明をする。
「まずは魔法の座学と実技の授業です。この二つは全員一緒に受けてもらいます。次に魔法歴史学、魔法工学、魔法薬学、魔術付与エンチャントの授業は選択制になっています。選択制の授業は学びたい授業を二つ選んで下さい」
皆にどの授業を選ぶかどうかの用紙が配られる。
「ねぇ、ローナは選択授業どれにするの?」
「私は魔法歴史学と魔法薬学の授業にしようかな」
魔法歴史学はベルグア先生にみっちり教えてもらったから除外するとして、う〜ん。悩む。
ルートヴィヒとセシルにも聞くか。
「お兄ちゃんとセシルは何の選択授業にするの?」
「僕は魔術付与と魔法工学の授業にしようと思っているよ」
「俺もルートヴィヒと同じ授業だ。」
なるほど。二人は同じか。
う〜ん。···決めた! 私は魔術付与と魔法薬学の授業にする!
書いた選択授業の用紙は回収されて、早速最初の授業――魔法の座学の授業が始まる。
「今日はどうやって魔法が施行されているのかの授業からです」
今更な内容だった。まぁ、復習になると思えばいいか。
前半の座学の授業が終わった。
あ〜、お腹空いた。セシルとルートヴィヒとローナと一緒に食堂へと向かう。A定食とB定食がある。
A定食は豚のステーキと黒パンとカボチャのスープ。Bは魚のムニエルと黒パンにトマトのスープ。
う〜ん、今日は魚の気分。食堂のカウンターでB定食を受け取り、空いてる席に座る。
私以外はA定食だ。
お味はどうか? ···うん、不味くはないけど何か物足りない。
長い間フェブレン家の食事を食べていたせいで舌が肥えたようだ。
昼食を食べ終え、昼休みは四人で談笑して過ごした。
昼休みが終わり、次の授業は魔法の実技の授業だ。
と言っても初級魔法の発動という今更な内容だけど。
実技の訓練には、各属性の教師がおり、六人の先生が授業を見てくれる。
私はさっさと六属性全ての初級魔法を教師に見せ合格をもらい、空いた時間は自主訓練に充てた。
今日の授業が終わった。はっきり言ってつまらなかった。
今更な内容ばかりで目新しい事が全くなかったのだ。
まぁ、それも最初のうちだけで、授業が進むにつれて分からない事も出てくるだろう。しばらくの我慢だ。それに選択授業は私が知らない知識だ。
私とローナは寮に帰るんだけど、ルートヴィヒとセシルは放課後に光迅流本道場へと毎日通う事になってるみたい。
二人とも頑張れ!!
◆◆◆
僕とセシルはステラとローナと別れて光迅流本道場へと向かう。
今日から門弟として初めての稽古だ。
少し緊張しながら礼をしたあと道場に足を踏み入れる。
「「失礼します!!」」
挨拶をして道場に入り、奥に座っている当主メルト先生のもとに行く。
「やぁ、よく来たね。今日からよろしく」
「「よろしくお願いします」」
「じゃあ、道場の周りを五十周走った後に一ノ型から伍ノ型まで各素振り三百回。それが終わったら地稽古だ」
「「はい!!」」
道場から出て、道場周りを走る。
五十周走り終わると、次は素振りだ。一ノ型から順に三百回素振りしていく。
素振りを終えると地稽古だ。
地稽古とは柔術で言う乱取り稽古だ。
「ナーゼ! ルートヴィヒと地稽古をしなさい。グラシウス! 君はセシルと地稽古をしなさい」
当主の左隣に座っていたナーゼは「はい」と静かに立ち上がる。
一方グラシウスは待ってましたと言わんばかりの勢いで「わかりました!!」とセシルと対面する。
「久しぶりですね、ルートヴィヒ君」
「お久しぶりです、ナーゼさん」
僕とナーゼさんは再会の喜びを木刀で伝える。
「お前が来るのを今か今かと待ってたぜ!! あの時の雪辱果たさせてもらう!!」
「···参る」
グラシウスは怒涛の勢いで木刀をセシルに打ち込む。
セシルはそれを冷静に受け流す。
四人の地稽古は一時間続いた。
稽古が終わったのは夜九時。
僕とセシルは疲れた足で寮へと帰る。
これがこれから三年間毎日続くのだ。
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