乙女ゲーム実況プレイ動画
「え……ちょっと待って今なんて言った……プレイ動画……民?」
いきなり飛び出してきた現代日本、しかもネット用語に頭が混乱する。
「あの……ゲームプレイ動画ってわかりますよね?」
「うん、わかる。あんまり見てなかったけど」
ゲームで遊んでいる様子を記録した動画のことだ。ゲームを四苦八苦しながらプレイする動画は結構な人気ジャンルだった。ゲームによっては公式が動画のアップを推奨していることもある。
私自身は『ゲームはまず自分でやってみる!』ってタイプだったから、そんなに興味がなかったんだけど。
「私は……小夜子さんのゲームプレイ動画を見たんです」
「そんなもの録画してないけど?」
病院のベッドの上で実況動画とか撮る余裕はない。
そもそもあれは『開発中のゲーム』という設定だったはずだ。未発表ゲームの情報をネットに流出させるほど、私のネットリテラシーは低くない。
「私が、13歳の時です。義母に売られた私は、カトラスの闇オークションで競売にかけられました」
「……ダリオから聞いてるわ」
その場にいたことは、まだ内緒だ。
「変な薬を嗅がされて、身動きできなくて……気が付いたら、暗い部屋で誰かに抱きかかえられてました。見上げると黒い瞳の男の子が、私を見ていて……」
恐らく、それはアギト国第六王子ユラ・アギトだ。
彼がセシリアを落札した直後の記憶だろう。
「彼の目を見てると、すごく怖くなって……私はまた気を失いました。そして次の瞬間、スイッチが切り替わるみたいに意識が女神の世界に飛んだんです」
「女神の世界?」
「夢の中の世界、って感じです。明るくてキレイなんですけど、私と運命の女神様以外は、なんだかぼやけて見えて、現実感がないんです」
「確かにそれは、夢としか思えないわね」
「そこで、女神様が言ったんです。『厄災と出会ったことで、運命が繰り上がりました。あなたを聖女として覚醒させましょう』って」
「あ~……本来出会うはずのなかった相手と会ったせいで、また運命がねじ曲がったのね」
ここ数年で何度も経験した、運命捻じ曲げあるあるだ。
あっちを曲げたら、こっちが歪む、でフラグがごちゃごちゃになるあれである。
「そこで、女神様から世界救済の予習として、小夜子さんのプレイ動画を見せられました」
「なんでやねん」
「……は?」
「ごめん、思わずつっこんじゃった。え……私はただひたすら遊んでただけで……いつプレイ動画が……?」
「あ、録画編集担当は女神様ご本人だそうです」
なんですと?
「小夜子ちゃん、プレイ中の言動も楽しいから張り切っちゃった……って」
「プライバシいぃぃぃ……!」
女神様には、人間の法律とか関係ないかもしれないけどさあ!
「じゃ、じゃあ……もしかして、ジェイドルートプレイして『ヤンデレ美青年キター!』って叫んでたのも……」
「見ました」
「クリスティーヌルートで『チンピラすぎんだろこのお姫様、ギャップ萌えとかそんなレベルじゃねーぞ』って言ってたのも……」
「見ました」
「フランルートで『働きすぎだからとりあえず寝ようよ! 膝枕か? 膝枕がいいのか?』って言ってたのも……」
「見ました」
「ぎゃあああああああああああああ」
メイ姉ちゃん、なんてことをしてくれる!!
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