その問題は誰のせいか
「え~と……今までの話をまとめると、これからのハーティアをなんとかするには、王子を王妃様から引き離さないとダメ……ってこと?」
「あいつがこのまま王になるなら、そういうことだな」
「ええええええ……」
いきなり王子の婚約者にされただけでも面倒なことになってるのに、マザコン王子の目を覚ませて、さらに王妃を退陣に追い込まないといけないとか、だいぶ無理ゲーじゃない?
「でも……こうなったのも……自分のせい……?」
そもそも、王妃が彼に接近したのは王子がひとりだったからだ。
10歳の私は王妃怖さに彼との婚約を拒否した。その後も、彼女と関わりたくなくて王宮関係のイベントはできるだけ避けてきた。
王家の問題は聖女にしか解決できないからと言い訳をして、ひとりにした。
ずっと彼を放置し続けておいて、今更自分たちの望む姿に成長してないからといって、不満をもらすのは筋ちがいではないだろうか。
「だから……私は……」
すっぱーんっ!
突然、頭を叩かれて思考が途切れた。
あわてて顔を上げると、いつの間にか私の後ろに移動していたドリーが、冷ややかに見下ろしている。
乙女の頭に何をする。
いや今は乙女同士だけどさ!
「全ての出来事が、お前ひとりの責任なわけあるか。うぬぼれも甚だしい」
「え……でも……」
「今の状況は、貴族全員の責任だ」
ドリーが断言すると、ヴァンとケヴィンが頷いた。
「俺も王妃が面倒くさくて王子を避けてたひとりだからな」
「俺もだ。そもそも、人と本気で関わってこなかったしね……」
「いやふたりには事情があったから……」
「それはお前もだろ。11歳で領主代理やらされてた奴が王家の問題まで関われるかよ」
「それはそうなんだけど……」
「よし、決めた」
ヴァンが立ち上がる。
「リリィ、王子の件は一旦俺たちに預けろ」
「ほぇ」
「男の立場で考えてみろ。あんな孤立した状態で、女に、しかも婚約者にかばわれたら、余計こじれるぜ」
「え? そういうもの?」
アイリスたちと対立しているところを想像してみる。そこに王子が割って入ってきたら……うん、確かにややこしいことになりそう。
「それにね、リリィ?」
ケヴィンも立ち上がって笑う。
「今日の授業中、君の様子を見てたけど……王子との婚約をまだ受け入れられてないよね? 彼と冷静に向き合える?」
「う……それは、そのう」
「できないよね?」
「……はい、その通りです。ごめんなさい」
できないことを、無理にやろうとしてしまいました。
「あはは、謝らなくていいよ。さっきも言ったでしょ、王子の問題は俺たちの問題でもあるって。騎士と王子の間にできた溝は、騎士科の俺たちが解決しなくちゃ」
ぽん、と頭に手が載せられた。見上げると、ドリーの青い瞳と目があう。
「あなたは何でも、自分の問題にしすぎるんですよ」
「……わかった」
「その代わり、女子部のほうはお前がどうにかしろよ。女の争いこそ、俺たち男が手出しできねえからな」
「りょーかい!」
あっちはあっちで、放っておけないもんね!
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