第254話 こんな風に恋が生まれても可笑しくない(薔薇?)
疲れたから、たまたま視界に入ったから、という理由で入った喫茶店。
レトロだけれ小洒落た雰囲気で、こんなの友人と二人で入るとこじゃないじゃんと思う。
そうなると、恋人いない歴も告られたことない歴も年齢と一緒である我が身が、こう、胸に染みて来て、強烈に願う。
恋人が欲しい、と。
これは、その欲望のままに友人と会話していた俺の話だ。
「なあ、あの二人、可愛くない?」
「え? あー……まあ、そうねぇ。可愛いかも」
「どうよ、俺たちで声かけてみねぇ?」
「みない」
「何で」
「……だって、あの二人さあ」
「何」
「んー、多分だけど、付き合ってるよ」
「──マ?」
「いや断定は出来ないけど。雰囲気的に」
「……馬に蹴られる?」
「蹴られるね。ま、蹴られなくても、二人で楽しんでる女の子に声かけるのは無粋の極みよ」
「それもそうか……」
「というか、何で俺も一緒なの」
「え、だって二人揃って恋人出来た方がいいじゃん。一緒に遊べて。俺、お前とも遊びたいもん」
「じゃあ別に恋人はいらなくない?」
「いや、恋人は欲しいんだよ。恋がしたいんだよ、俺は。とにかく誰かとキャッキャウフフして、イチャイチャしたいんだよ」
「すごいな、恋に恋してるってやつじゃん」
「いっそもう、誰でもいいから俺に告ってくれないかな」
「誰でもいいの?」
「うん。年下でも年上でも、何なら男でもオネエさんでもいい。あ、幼女とかショタは困るけど。犯罪者にはなりたくない」
「じゃあ」
そこで友人が、可愛らしく小首を傾げて見せた。
「俺なんか、ど?」
「え?」
「自分で言うのも何だけどさぁ、俺、そこそこキレーな顔してるし。お前のこと好きだし。基本的に好きな相手には尽くすタイプだし。ど?」
優良物件よ?
と笑う顔は、良く知ってるはずなのに、全然知らない人間の顔に見えて。
──何故だろう、いきなり、いいなと思えた。
「OK、わかった。付き合おう」
「うっそでしょ、即決。提案しておきながら何だけど引くわ」
END.
冒頭出て来た女の子たちは昨日の(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16817139556104346512)。
たまに、こういう勢いだけの何も考えない感じで始まる恋物語が読みたくなったり書きたくなったりします。
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