第215話 素敵なデートの約束を(洋服と女性)

 

「いいことあるよ」

「……ほんとうに?」

「そうホント、絶対に」

「……じゃあ、まだ生きてみようかな」

「そうしなよ。それで、また僕を着てよ。僕を着て、今度はもっといいとこ一緒に行こう」

「うん。……久しぶりに、美術館行こうかな。あなたを着て」

 私は、自分の着ているワンピースを見下ろして言った。

 最期だし、冒険してみようと思って買ったイエローとブルーの、清んだ夏の朝みたいな素敵な服。

 これを着て、もっと何処かへ出かけたい。

 そう願った私自身が、私へ聞かせた幻聴かも知れないけど、でも。

「……ありがとうね」

 明日とか、また今度とか、そんな明るい夢を思い出させてくれて。

 私は、私を暗い道から引き戻してくれた服に礼を言う。

 次にこの服を着る予定を思って、笑った。

 明日は、今日より悪くないかも知れない。

 そう思うのは、きっといいことだ。

 

 END.


 こちら(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816927862918037783)のお洋服。

 

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