第183話 星月夜の紅茶(薔薇。幼なじみ。唯行×公彦《あきひこ》)


「金平糖?」

「ああ」

 唯行ただゆきが出してくれたのは、紅茶と金平糖だった。

「……莉音りおんが」

 話によると、妹の莉音ちゃんが行った喫茶店で、出たものらしい。

「落ち込んでた気が、軽くなったんだと」

「へえ」

 陽火はるひ……うちの妹……と、喧嘩でもしたのだろうか。二人は、付き合っている。

「疲れた顔をしてたから、お前にもどうかと思って」

「!」

 隠していたつもりなのに。

 何でか、唯行にはバレてしまう。僕は苦笑した。

「……ありがとね」

「無理はするなよ」

 紅茶に、ぽとぽとと金平糖を落としていく。

 黄色と白の星。

 混ぜると、紅茶色の宇宙の中で星が溶けていった。

 顔を寄せると、微かに柚子の匂い。もう一つは。

「薄荷?」

「らしい」

 涼やかな香りと優しい甘さに、頬が緩んだ。

「ちょっと元気になった、かも」

「それなら良かった」

 唯行の手が、頭を撫でる。

 僕は目を細めて、その手を受け入れた。

 

 END.

 

 こちら(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816927861540931551)の二人。妹ちゃんはこちら(https://kakuyomu.jp/works/1177354054921243863/episodes/1177354054921244443)。妹ちゃんが行ったカフェはこちら(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816452220504574573)。

 

 

 

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