第136話 冷たい手のいいところ(学生百合)


 私のちーちゃんは、手が冷たい。

 冬なんか、氷のようになる。

 そこが、好き。

「わ、もう冷たくなってるじゃん」

 そう言って、私はちーちゃんの手をそっと握り締める。

「手袋、片方貸してあげる。で、もう片方はつないどこ」

 ちーちゃんは、手袋が好きじゃない。

 けど、こうして私が無理にでも貸すと、付けてくれる。

 片方だけ。

「……ん」

 ちーちゃんは、つやつやの黒髪から覗くように私を見て、

「ミーちゃんの手は、やっぱりあったかいね」

 と言った。はにかんだ笑顔で。

「でしょ」

 私は、その笑顔が可愛くて、ぎゅぎゅっともっと力を込めて手を握る。

「ちーちゃん専用の湯たんぽだから」

「ふふっ」

 ちーちゃんが、擽ったそうに笑う。

 辛そうだから、本当はこんなこと思っちゃいけないんだろうけど。

 私は、ちーちゃんの手が冷たくて良かったなって、冬の度に思うのだ。


 END.

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