第125話 午後四時半、文芸部部室の微睡み(文芸部寮。独白)


 誰かの気配がするところで寝るのが好きだ。

「あ、部長、また寝てる」

「また昨日も寝られなかったみたいだからね。寝かしといてあげて」

「はーい」

 気を許した人たちの声や、気配、物音は、最高の子守歌だと思う。

 寝ている自分に気遣ってか、少し抑えた声。

 たまに、堪えきれなくてどうにも大きくなってしまう笑い声。

 どちらも、耳に心地好い。

 あまりにも心地好いから、一度録音してみたことがある。

 それで、寝られるかなと思って。

 確かに入眠はいい感じだったけど、すぐに目が覚めてしまった。

 やっぱり、本人たちの気配がいい。

「部長、本当によく寝てるなあ」

「気持ちよさそうだよね、いつも。こっちまで眠くなるわ」

「今度、みんなでお昼寝大会しましょうよ」

「いいねぇ」

 いいかも知れない。音が無くても、それなら寝られるかも。

 いいね、と言いたかったけれど本格的に意識が底の方に落ちて行って、私は何も言えず、ただただ倖せな気持ちの中を揺蕩っていた。


 END.

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