第124話 焼肉食べよう(義理姉弟。ほのぼの)
じゅ~、じゅじゅぅ~
「はーい、どんどん食べてねぇ」
「……」
肉の焼ける匂いと、煙の匂いが充満する店内。
今、俺は義理の姉と近所の焼肉屋に来ていた。
そんなに値段は張らないものの美味い肉が食えるとあって、いつも人気の店だ。
俺の前では、義理の姉がせっせと肉を焼いている。
今日は、姉の提案で此処へ来た。
『いやあ、二度も倒れてるところを救われたからねぇ、お礼だよ、お礼』
とのことで。
そういえば、姉の家で、倒れていない姉を見るのは今日が初めてだった。
玄関を開けて、そこに立っている姉を見ると不思議な気持ちになった。
「アンタも食べろよ」
姉が、どんどん俺の皿に焼けた肉を入れて来る。
「あ、私、肉、食べられないんだよねぇ」
「は!?」
俺は、思わず声を上げた。
「あ、でも鶏肉と魚肉は食べられるよ?」
「じゃ、何で焼肉屋に連れて来た!?」
アンタが食うものねぇだろうが、と言えば、姉はきょとんとした顔になった。
「え? 君が好きらしいって聞いたから」
カチカチ、とトングを鳴らして言う。
「あと、焼肉屋の方が肉食べられない奴にとっちゃ楽なんだよねぇ。店に寄るけど」
「はあ?」
「肉が食えなくても、野菜ならいけるし。ここは、鶏肉も置いてるしね。ほら、ここで鶏焼いてるでしょ」
あ、もちろん君も食べていいからね、
姉が、にこにこ笑いながら言った。
「……もっと食いでのあるやつ頼めよな」
数少ない食えるやつまで、他人に譲ろうとするなよな……何だこの人。
俺は、深いため息を吐いた。
「食いでのあるやつねぇ」
姉が、小首を傾げる。
「参鶏湯とか、何かあるだろ」
「うーん……食い切れるかどうか……」
チッ
つい、舌を打ってしまった。
どうしてこう、自分に関しては吃驚するほど頓着しない大人なのか。
「残ったら俺が食うから。でも、肉はちゃんと食えよ」
チーンと呼び鈴を鳴らし、店員さんを呼ぶ。
参鶏湯を頼んだついでに、鶏肉も追加注文した。
「だから貧血で倒れんだよ、アンタ」
「ハハッ、面目ない」
「本当に思ってんのかよ」
「ハハハハ」
相変わらずへらへらと笑うだけで、反省の色が見られない姉だ。
俺は、もう一度舌を打った。
END.
※こちら【https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220371917465/episodes/16816700426355265820】とこちら【https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220371917465/episodes/16816700426579840491】の義理姉弟でした。
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