第107話 お熱いわね(百合。幼馴染カップル。第三者視点)

※こちら(https://kakuyomu.jp/works/1177354054921243863/episodes/1177354054921244443)の二人を、親友視点で。この話単体でも読めます。


 放課後。友人に付き合ってもらって、駅前の雑貨屋に来た。

 お目当てのものはすぐに見つかって、ちゃちゃっと会計を済ます。

 退屈しているだろう友人のもとへ急ぐと、彼女は何かを真剣に見つめていた。

 可愛いものに興味なし、出来れば男物とかユニセックスなものが良い。シンプルこそ一番、みたいな奴が、この店で興味を惹かれるとは珍しい。

 私は興味本位に、ひょっこりその手元をのぞき込んでみた。

「へえ、アンタにしては可愛いもん気にしてんじゃない」

「ん? ああ。別に、アタシんじゃない。莉音りおんにどうかなって」

 彼女が手に取っているのは、リボン付きのヘアゴムだった。

 オレンジのレースリボン、真ん中には、にっこり笑ったかぼちゃの飾り。

 ハロウィンらしい可愛いひと品だ。

「ああ、確かにあの子好きそうね」

「だろ? けど、どーすっかなー。誕生日でも何でもねーしなー」

 莉音は、こいつの一つ下の幼馴染であり、

「ふぅん? いいコイビトやってんだ?」

 恋人だ。

 可愛い、元気な女の子。

 私も、後輩として気に入っている。

「茶化すなよ」

 奴が、むっとした顔でこちらを見た。

 けど、頬が赤い。

 あらまあ照れちゃって。

 莉音を恋人にしてから、こいつもなかなか可愛い顔をするようになった。

 恋って、面白いほど人を変える。

「ごめんごめん。……いいんじゃないの? 何でも無い日のプレゼントほど、いいものってないのよ」

「そういうもんか」

「そういうもんよ」

「そうか……」

 ふむ、と頷くと、彼女は意気揚々とレジに向かった。

 その背を見送って、

「お熱いわねぇ」

 私は、ふふふ、と微笑んだ。

 あとで莉音もからかわないと、などと企みながら。


 END.

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る