第44話 絶望と自棄から始まることもある(百合。失恋から立ち直るには)
「みんな、好きなアイドルが結婚したときはどうやって立ち直ってるんだろう……」
みゆきが、呆然とした顔で言った。
手には、スマートフォン。画面には、『ご報告』というタイトルのメール画面。恐らく、FC会員限定のメルマガか何かだろう。
「時間薬じゃない?」
律が、さらりと返した。
「普通の失恋と一緒だね……」
この世の絶望をすべて煮詰めたような顔で、みゆきが言う。
あまりに悲しすぎると、人って涙が出て来ないんだねとみゆきは呟いた。
「まあ、失恋みたいなもんだしねぇ」
「このまま立ち直れなかったら、どうしよう」
「それはそれで、いいんじゃない? 一つの恋を五年十年引き摺ってる人もいるみたいだし」
「いいのかなぁ」
「少なくとも、私は構わないよ。みゆきの愚痴とか、嘆きを聞くの」
律は、ぽんぽんとみゆきの肩を優しく叩いてやる。
「うう……ありがとう……。けど、出来る限り、早く復活したいなぁ」
「まあ、しんどいものねぇ」
「何かいい方法あるかな?」
「新しい恋なんて、どう?」
律が、悪戯っぽく言った。
「それも、よく言われてるよね」
「そうそう。いっちょ、私と付き合ってみない? なーんて」
「……いいかも」
「へ?」
「りっちょんだったら、私のダメなとこ知ってるし、私もりっちょんのダメなとこ知ってるし、でも大好きだし」
バッと、みゆきが俯いていた顔を上げた。
「そうだ、私たち、付き合おう!!」
「…………うん、よろしく、ね?」
こんなに上手くいくだなんて思ってなかった、とその日を述懐するたび、律は言うのだったが、それはまた、別のお話。
END.
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