第39話 名案を閃いた!(百合。女子高生。親友からの)
「閃いた!」
「閃くな」
「何でよ、サ○シリーズだと閃くのはいいことなんだよ?」
「ここは現実だし、お前の閃きはたいてい余計なことだからとりあえず黙っていて欲しい」
「例えば? ふぉーえくざんぽー?」
「発音よ」
「いいから」
「……閃いたー! って言って夜の学校に忍び込んで大騒ぎ起こしたり」
「不思議だよね、世の怪談系では絶対に警備員なんて来ないのに、何で現実では来るんだろうね?」
「ゆ○聞いて、『エウレーカー!』と叫んだかと思えば自転車で坂道下って事故ったりとか」
「『ゆっくり、ゆっくり』っていうのが肝なんだろうね、あの歌。次からは気を付ける」
「他にも枚挙にいとまがない」
「暇がないのはいいことだよ。常に何かに夢中ってことだからね!」
「そういうこと言ってんじゃないんだよ。言えばいいってもんじゃないよ」
「言わないと負けるよ?」
「お前は何と戦ってんだよ」
「ところで、閃いたんだけど」
「今までの話を聞いてたか?」
「私とアンタが付き合っちゃえば、話は早いと思う!」
「……は?」
私は、付いてた頬杖から思わず顔を離した。
「は?」
もう一回言った。
活動日でない日の部室。散らかった原稿用紙に、誰かの書き損じのネーム。
夕陽が、窓から射しこんでいる。
「だって、告られて困ってる話だったでしょ? なら、恋人がいれば、その不埒な男はアンタを諦める。違う?」
「いや、そうだけど。いや、でも何で」
アンタと、と言う前に、「だって」と言って奴は笑った。
「アンタ、ふりとはいえ、好きでもない奴と恋人になれないタイプでしょ?」
「……まあ、そうだけど」
「だから、私と恋人! ね、イケてるっしょ?」
「……何で、アンタと」
「決まってるじゃん!」
明るく、奴が言い放つ。
「アンタが私を好きで、私もアンタを好きだから!」
「どんだけ、自信過剰よ」
「ええー? だってだってだってだよ?」
そっぽを向いた私に構わず、歌うように、
「さっきの例に出したこと、ぜんぶ付き合ってくれたじゃん。『めんどくさい』って言いながらもさ?」
奴は言った。
「そんなの、愛がなきゃ無理な話」
ね! と笑う奴に、私は。
「………………ほんとに、余計なことしか思い付かないね」
わざと冷たく言ってやった。
頬が熱いから、きっとまったく、説得力なんて無いだろうけど。
「いいことって言ってよ」
「坂道での事故、あれ結構痛かったんだからね」
「うん。あれは流石に反省してる。もう二度と、アンタに怪我は負わせないよ」
「……だといいけど」
夕暮れの作戦会議は閉幕。代わりに、今週末の記念すべき『初デート』の相談になった。
END.
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