第15話 手のひらの永遠(中学生。独白)


 パシャッ

パシャッパシャッ

清泉いずみはさぁ、いいの?」

 何が?

 シャッターを切りながら、私は問う。

「だって、清泉、さっきから撮ってばっかじゃん」

 いいの。

「何で自分も写らないの?」

 だってこれは、『私』の視界を切り取ったものだから。

「視界?」

 そう、この目に見えているもの。それを、残したいんだな。

「どうして?」

 まるで、この時間そのものを切り取っているみたいだから。

「何だか、聞いてると永遠みたいだね」

 ……そうだね。


 *


「……私は、永遠を手に入れたかったんだろうね」

 あの日の写真を見ながら、私は、あの子の言葉にうなずいた。

 あの日。

 修学旅行の日。

 写真はたくさんある。

 どれもこれも、私の『視界』を切り取ったもの。

 楽し気に笑う、いつも通りの友人たちの姿。カメラ目線ですら無い。

 あの頃の日常。

 今、ここには無い。

 あの頃一緒に居た彼女たちとは、もうほとんど繋がっていない。

 けれど。

「永遠は、ここにある」

 『あの頃』の彼女たちには、ずっと会える。

 あの日のまま。

 彼女たちの笑い声や、花の香り。風の感触すら、蘇るように。

「……ここにいるよ」

 私の手の中。

 この長方形の中に、息づいているのだ。


 END.

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