銀杏

街路樹に勇気の鈴が鳴る

この街ですっくと立てと

枯れるなかれと鈴が鳴る


たった一坪の固めた土に

根を埋められて立っている

銀杏よ 人が憎くないか


午後二時にもう日が沈む

高層ビルの陰になる

拾われた実は可燃ごみ


それでも勇気の鈴は鳴る

銀杏は金の葉を散らし

冬を乗り越え緑が萌える


街路樹に勇気の鈴が鳴る

崩れ落ちた私に 立てと

俺のようにと鈴が鳴る


並木は長く続く 先へ 先へ

私は 呆然とする その遠さに

銀杏は鳴らす 鈴を しきりに


鈴の音よ それならどうか

私の耳元で 永遠に鳴れ

一歩踏み出すごとに鳴れ

立ち上がるたび こうべ垂れるたび

鳴れ 鳴れ 勇気の鈴

銀杏よ 私とともにあれ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る