第41話 デザートを食べながら
『二人ともありがとうな。子供たちもバクバク食べてる。もう少ししたら明里帰ってくる』
李仁はシバから来たメールを読み上げる。二人は自分たち分に取り分けたご飯を食べ、片付けをしている。
「一緒にシバの荷物も持っていけばよかったかなー」
「まぁ明日取りに来るでしょ」
「ほんと作戦うまくいく?」
「いかないと困る……」
食器洗い機に次々と入れていき、入らないものは湊音が洗って李仁が布巾で拭いている。
「ミナくんはやっぱりシバのことは忘れられない?」
「……」
「夢語ってた中でシバの名前出たし」
「ごめん、怒ってるよね」
「別に」
李仁は少し機嫌が悪い。車の中では使えるものは使えと言ってたり、昨日はシバと李仁の二人はキスをしていたのだが。
「まぁシバが剣道場にいる限り無理だろうけどね」
「ごめんね、李仁」
「何度も謝らない、私も蒸し返したの悪かった……」
「……」
「もう終わったからデザート食べましょ」
李仁はしまった……と湊音の表情を見てそう思う。
二人は会話をしないままデザートを食べている。李仁は湊音を気にしながら。
早めに食べ終わり、スマホで調べ物をする。子ども食堂のことである。
「……本気にならなくてもいいんだよ? 子ども食堂」
「えっ」
湊音は画面を見ずにそう言った。
「李仁がいないと出来ないなんてダメだよな……まだ剣道教室続けて無理ないように働くよ」
「……諦めるの?」
「やっぱ無理だよ。絶対また多くの人に迷惑かける」
湊音はデザートにあまり手をつけていない。
「……わたしは子ども食堂、いいと思った」
「李仁……」
「ミナくんのそばにいられるじゃない、ずっと……無理だったら無理でまた二人で頑張ればいいのよ」
「……頑張るか」
李仁はスマホを置き両手を後ろに伸ばす。
「なーんだ、せっかくミナくんなんか未来のことを語って……調子良くなったのかなーーって思ったけどねぇー」
「ごめんね、期待させちゃっ……」
湊音の頬を李仁が手で挟む。
「はーい、またごめんなさいって。今度またごめんなさいって言ったらこのままキスする」
「んぐぐー、言っても言わなくてもキスするでしょ?」
「ご名答ーっ」
李仁はそのままキスをした。チュッチュと何度も。
二人は笑ってふざけあう。李仁が湊音からスイーツを奪って食べようとする。
「もうまだ食べてないー」
「食べてないじゃん」
「……ん? また雨降ってきた?」
湊音は雨の音で気づいた。少しの雨音であったが。
と同時にインターフォンが鳴る。
「あ、私がモニター見てくる」
李仁がモニターを見に行った。湊音はリビングの窓から外を見る。少しずつ強くなる雨。
「ミナくん!」
「どうしたの、李仁?」
「……シバが帰ってきた」
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