第39話 寄り道
いちゃつきもほどほどにしてランチを食べながら二人はディナーを考える。
李仁は元々料理が得意でバーで働いていた頃は休みの日でも試作品をたくさん作り湊音は食べさせられていた。
湊音は元々スイーツ作りが好きであったため李仁と料理を作っていくうちに手際が良くなっていった。
休みの日にこうやって献立を考えるのが二人の趣味でもある。
ましてや今回はいつもよりも多い人数分であり、明里の息子たちはまだ小学生と幼稚園児の男の子。
上の子が偏食気味、下の子が牛乳アレルギーというのもあってあれこれ悩んだ。
そして決めたら二人はランチを食べ終えて片付けをしながら作業に取り掛かる。
「デザートのゼリーのカップこれでいいかなー」
「ちょうどいいのあったわね。あ、明里からメールきてて、晩御飯嬉しいって」
「よかったー、じゃあ足りない分は李仁買ってきて」
「りょうかーい!」
李仁はメモを持って近くのモールまで買い出しに行く。
「この三連休どうなるかと思ったけどまぁ楽しめそうね」
李仁は普段三連休は取れないのだが、順番に社員同士で回していた。
また最近李仁の体調が良くないと察した恵山が気を利かせて早めに変えてくれたという。
李仁は手際良く買い物をし、食品売り場から出るが休みの日でも気になってしまうのがモールにある本屋である。
「休みだけど気になっちゃう……」
エメラルド書房。李仁が20代の頃、ホストやゲイバーで働いていた頃に、店長からとにかく本を読めと言われて手っ取り早いのは図書館か本屋だと思った李仁はたまたま通りかかったここの本屋で働くことを決めたようだ。
本屋のレジには店長と、麻衣の姿。彼女が李仁の休みの間、近隣の店舗を回っていたようだ。
「おう、李仁。来るのは久しぶりだな」
「そうねぇー。ずっと電話だけだったしねぇ」
「たまには来いよ、なぁ」
店長はそう言いながらも手元は作業をしている器用な人である。
もう彼も60近く。長年ここで店長をしているがこの本屋が入っているモール自体取り壊しになる。
麻衣と店長は閉店の際のイベントを考えていたようだ。
「最後はわたしも店頭で働きたいって要望をだしてるからいやでも毎日顔合わしますよ、店長ぅ」
李仁は色々気持ちがよぎるが、店長は平然としてるし、李仁もその場が暗くなるのが嫌でにこにこっとするが、ハッとした。麻衣がボーゼンと李仁のことを見ている。
実の所本部では、女言葉や仕草を派手に使うことはしてなかったが、つい昔働いていた現場だったせいもあって本性が出てしまったようである。
李仁は少し咳払いし、少し黙った。麻衣はそんな様子を見て笑う。
「部長、なんか可愛い」
「そ、そう?」
店長も手つきは変わらずにこにこしてる。
「あ、いっけない……もうそろそろ帰らないと」
「おう、またな」
「麻衣ちゃんもよろしくね」
麻衣は頷いた。
李仁は慌てて家路に向かう。
「あー、部下に恥ずかしいところ見せちゃったわ……まぁこれからもこれで通そうかしら」
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