第6話 女はみんなシローが好き

「あ、えっちゃん!? 休憩中ごめん! シローが外に脱走した!」

『えっ!? 外って店の中ですか!?』

「いや、外! キリのいいところで戻ってきてもらえる!? オレ探してくるから!」

『わかりました! すぐ行きます!』


 その頃、ペットショップの店内ではイヌ達が騒がしく吠えていた。


「おい! みんな聞いたか!? シローが出て行ったってよ!」

 シローのオリに1番近いショーケースに入れられている俺は入り口から遠い仲間達にも、シローの脱走を伝えた。

「聞いた! ずりぃよシローだけ! アム見てた!?」

「いや、俺もえっちゃんと店長の話でしか知らんけど」

「シロー絶対確信犯だろ! アイツ頭いいからなー!」

「ちょっとそんなことどうでもいいでしょ!? シロー君が事故にでも遭ったら……!」


 まるでシローの恋人であるかのようにシローの身の安全を気にしているのは、コーギーのペンちゃん。メス。

 コーギーなのにどうしてペンちゃんかというと、コーギーの正式名称が『ウェルシュ・コーギー・ペンブローク』だからだ。

 ……なんだよ、女はみんなシローが好きなのかよ!


「お前達うるさいぞ! 静かにしろ!」


 店長が残されたみんなに向かって怒鳴った。


「店長っ!」


 その気まずい空気をかき混ぜるように、えっちゃんが休憩から戻ってきた。


「ごめんな、休憩中に」

「いえ! シローは……」

「外出てっちゃってさ。俺探してくるわ」

「わかりました。何かあったら連絡ください」


 店長はシロー捜索の旅に出たようだ。


 ──クゥーン。

「えっちゃん、元気ないね」


「ん? どしたの、アム? シローが出てっちゃって淋しい?」

「それはえっちゃんでしょ」

「事故に遭ってないといいけど……」

 えっちゃんはショーケースを開けて俺の頭を撫でながら言う。

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