第4話 オレの演技は通じるか
「あ、店長、おはようございます! 今日もみんな元気ですよ」
「いいねー! 一頭くらいポンと売れないかねぇ。シローも大きくなってきたし」
──なんだよ。悪かったな、デカくなるまで売れ残っちまって。
もうすぐえっちゃんと店長が店番を交代する。
よし、『オレの耳掃除しろ』作戦、決行の時がきたぞ!
オレはえっちゃんがいなくなる前に耳が痒いフリをした。耳を前脚で擦ったり、後ろ足でカリカリ掻いたりした。
「ん? シローどしたの? 耳痒いの?」
さすがえっちゃん。オレの仕草をよく見てる。店長なんか全然気づかねぇじゃん。
「あ、いいよ、耳掃除なら俺やっとくから。えっちゃんはお昼休憩行っといで」
「わかりました。じゃ、よろしくお願いします」
「ごゆっくり〜」
オレはずっと耳が痒いフリを続けた。
──バイバイ、えっちゃん。
「シロー、どれ、耳見せてごらん」
店長はまず、オリの上からオレの耳を触って中を見る。
「んー? 汚くなさそうだけどなぁ」
そりゃそうだよ。耳掃除だってこの間えっちゃんに丁寧にやってもらったばっかりだもん。いいから早くオレを外に出せ!
「どれ、掃除するか」
店長は耳掃除に使う道具を用意し始めた。
オレは身体が大きいし、もう生まれて半年経ってるから、爪切りや耳掃除で暴れたりしない。それを知っていてみんな、膝の上で耳掃除をしてくれるんだ。
ショーケースに入れられているちびっ子達は、昼寝をしているヤツもいれば、おもちゃでひとり遊びしているヤツもいる時間。
お客さんの目はショーケースに向かい、耳掃除をされているオレの方を見ている人は誰もいない。
「どれ、よっこいしょっと……! シローも重くなってきたな。早くお迎え来るといいなぁ。……あよっこいせ」
店長はオレを抱き上げる時と、オレを抱えて椅子に座る時に、2回『よっこいしょ』と言った。
店を切り盛りしているだけあって結構なおじさんだ。オレが走れば追いつけるわけがない。
オレは大人しく耳掃除をしてもらった。
「やっぱり綺麗だけどなぁ?」
そりゃそうだ。
店長が耳掃除を終えて気を緩めた瞬間を、オレは神経を研ぎ澄まして待った。
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