第48話 疑問



「あの、どうして私が始まりの国の人間だと分かったんですか?」


 ふとした疑問がくるみの口をいた。


「あっ、えーと……」


 ケイジロウは答えを準備していなかった。答えにくいのには理由が2つあった。


 1つ目はミナトに口止めされていたからだ。しかし、2つ目の理由が1番の問題だった。


 くるみが1番会いたいはずの両親が実は、いまだに行方知れずになっているからだ。


 両親に会わせられないとなれば、始まりの国が故郷だと信じてもらえないだろう。しかし、本当の両親に会えたとしてもくるみには記憶が無い。


 ケイジロウは考えたあげく、本当のことを話すことにした。


「僕はくるみちゃんのことを知っていたんだよ。年は離れているけど君が小さかった頃、王宮の庭で僕の友達(ミナト)と遊んでいるのを見たことがあるんだ」


「それは、本当に私だったんですか?」


「本当だよ。それに君が王宮学校の高等科の時、一緒に任務にあたったことがあるんだ。だから……。昔からの知り合いなわけ」


 ケイジロウは申し訳なさそうに話した。くるみは困惑したような表情で笑った。


「私って、どんな人だったんですか」


「くるみちゃんは…クルミだったよ。同じ名前だったんだ。名前覚えていたの?」


「いいえ、くるみの木の下に倒れていたらしくて…」


「そうか…君は優しくて努力家だったな。それに、今よりも少し強くて国のために……。うーん、性格は変わっていないと思うよ。それにだいぶ大人になったよね」


「私の知らない過去の私を知られているなんて恥ずかしいです」


「大丈夫。君の記憶を戻すための手筈てはずは整っているから!」


 くるみは初めて聞く自分の過去に驚きながらも、記憶が取り戻せると聞き、心から安堵した。


(不思議な所。いったいどれくらい歩けば着くのだろう?)


 ケイジロウはくるみの心を読んだのか、くるみの心の声に答えた。


「あと5分くらいで春の草原に出るよ。下を見てごらん」


 くるみはベンチから立ち上がり階段の手すりから身を乗り出した。


 今までの歩いてきた階段が下に行くにつれて徐々に広がり、終わりが見えている。


 2人は歩き出した。くるみの足取りは軽やかになり、ケイジロウはくるみのキャリーバックを抱え、少しキツそうだった。


 数分後、声が共鳴し始め、広い空間が近づいているのを感じた。ぽかぽかと暖かく、まるで花の香りでいっぱいの温室にいるようだ。


 螺旋階段もあと2周ほどになり、階段の中央には泉が見えてきた。泉の周りには色とりどりの光の玉がホタルのように浮かんでいる。


「きれい」


 くるみは思わず駆け出し、泉に近づいた。

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